第八十四話
すいません、放置して……。
「空母ランドルフを鹵獲出来たのは幸いだ」
「うむ、ランドルフは調査中ではあるが対空砲弾を多数捕獲した」
「という事は……」
大本営で堀長官の報告に将宏は身を乗り出した。
「うむ、VT信管を捕獲したと思う。解析はまだだが可能性は大だ」
「それでしたら今後の作戦は楽になるかもしれませんね。VT信管でしたら此方から信管の誤作動を起こせやすいです」
VT信管を日本も入手すればアメリカの対空砲火を誤作動を起こさせやすくなる。
その装置が完成するまではまだ時間は掛かるが仕方ない事である。
「ランドルフは修理と訓練が済み次第、第二機動艦隊に配属させる予定だ」
「第二機動艦隊にですか? 第三機動部隊には配属しないのですか?」
「第二機動艦隊にはエンプラの蒼鶴がいる。エセックス級はヨークタウン級の発展型だ。乗組員を蒼鶴から選抜してやる」
「あぁ、成る程ですね(何か山口長官に押し付けてるような気が……)」
「第三機動部隊は雲龍型の鞍馬、妙義、雲仙を充てる予定だ」
雲龍型の八番艦鞍馬、九番艦妙義、十番艦雲仙が十一月に竣工予定だった。
更に十一番艦六甲、十二番艦蔵王、十三番艦浅間が45年一月に竣工である。
「それまでは基地航空隊と共同で戦ってもらう」
堀長官がそう言った時、東條が立ち上がった。
「航空隊は此方からも派遣する予定です。ニューカレドニアには一個飛行集団を派遣する予定だ」
陸軍の飛行隊は海軍の支援を受けて洋上飛行や対艦攻撃訓練をしており、海軍航空隊とはひけをとらない飛行隊であった。
「南太平洋の問題は大丈夫だろうな。だが問題は……」
「ウラジオストクだな。偵察飛行では陸軍のP-47の存在も確認されている。爆撃機の戦力も補充されているようだ」
「……ハルゼーが動いたのはこのためだったんでしょうね。ハルゼーを囮にして爆撃隊の戦力を回復させたのでしょう」
将宏達はそう考えた。実際にそうであるが……。
「内地の防空態勢を整えないといかんな。それに満州も爆撃圏内に入っている」
「それについては陸軍から案がある」
「案ですか?」
「うむ、インドネシアに駐留している陸軍の二個飛行隊は内地に帰還させる予定だ。それに同じく駐留している三個師団も引き上げて除隊の予定だ。それにタイにいる二個飛行集団のうち一個飛行集団も内地に帰還予定だ」
インドネシアは占領直後からインドネシア国軍の創設が行われており、日本軍が全面的に支援をしていた。
武器は日本の三八式歩兵銃や三八式野砲を提供し、その対価として石油等の天然資源を貰っていた。
今のインドネシア国軍は陸軍で七個師団、戦車一個中隊、二個飛行中隊(戦闘機十八機)が整備されていた。
また、戦前から友好国であるタイでも日本軍の主導の元、軍拡が進まれていた。
タイは十二個師団、戦車一個連隊、三個飛行戦隊、二個艦隊(一個艦隊は軽巡一、駆逐艦八隻で編成)が軍拡されつつあった。
これにより陸軍は師団や飛行戦隊を内地に帰還させる事が出来たのだ。
また、他にもビルマやフィリピン、ベトナムでも日本軍の主導の元、軍拡が進まれている。
「恐らく爆撃隊は新潟や佐渡島を爆撃するかもしれません。東京への飛行ルートを考えればですが……」
「最悪の場合、日本全国かもしれんな。地方都市にも高射砲部隊を配備させないといけないな」
「そこのところは海軍も協力します」
堀長官は東條にそう言った。海軍は戦闘機の量産をしていた。
主に量産をしているのは逆ガル型の零戦六四型、空母艦載機の烈風一一型、陣風一一型、そして海軍が期待する震電一一型である。
震電は史実と同じようにハ―四三エンジン(排気タービン付き)を搭載して最大速度は七百二十キロを出しており、航続距離は二千キロだった。
武装は三十ミリ機銃三門(一門につき百二十発)、噴進弾八基を搭載出来た。
震電の生産には九州飛行機の他にも三菱、中島が協力しており、雷電の生産を縮小して鍾馗の生産は停止してまで生産が行われている。
今のところ、震電の配備は土浦防空隊の二四機にしか配備されていないが少しずつ増えていく予定だ。
「話は変わるが、内地に帰還している第二機動艦隊には新型の艦上攻撃機を配備させる予定だ」
「……という事は漸く流星が配備されるんですか?」
「その通りだ」
将宏の言葉に堀長官は頷いた。流星は制式採用は五月だったが彗星や天山を優先してため、細々とだった。性能はほぼ史実と同じであり違うのは稼働率が高い事だろう。
「百八機が第二機動艦隊に受領されて訓練飛行をしているだろう」
「そうなりますと天山は……」
「基地航空隊に回されるな。それも仕方なかろう」
なお、彗星は暫くは空母でも運用される。ちなみにこの流星だが、半年前に量産機二機の流星とコピーした設計図がドイツに送られていた。
ドイツ空軍は未だに固定脚のシュトゥーカを使用していた。それを見かねた日本側が流星を提供したのだ。
そしてたまたま試験飛行を視察していたゲーリングがシュトゥーカの後継機としての採用を決定した。
ミルヒ等は反論したが、今の時点では流星が高性能機であったため空軍内でも採用の声が出て結局は採用したのである。
流星はエンジンをユンカースユモ213を搭載し、二十ミリ機銃はドイツのMG151機関砲に換装している。
名前はメテオール(間違っていたら訂正します)と名付けられて量産した十八機が東部戦線へと送られたが、十八機はある男が所属するとある急降下爆撃部隊へと送られたのであった。
その男の名はハンス・ウルリッヒ・ルーデルであった。
ルーデルはメテオールを大層気に入り、終いには主翼にシュトゥーカが搭載していた三七ミリ砲を無理矢理付けて出撃する有り様である。
なお、三七ミリ砲搭載だとシュトゥーカよりかは操縦しやすいとのルーデル談であった。
メテオールはドイツ海軍もライセンス生産する事になっている。
急降下爆撃も出来る艦上攻撃機なのでわざわざ二つ揃えなくて済むのだからその分を他に回せるのであった。
「さぁ、ガーデルマン。イワンどもを駆逐しにいこう」
「あの……私、本職は医師なんですが……」
ガーデルマンはルーデルにそう言うが、ルーデルはそれを無視してガーデルマンを無理矢理メテオールに乗り込ませて出撃するのであった。
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