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第八十三話

本日は終戦記念日。多くは言いません。




――ホワイトハウス――


「……何だこの被害はッ!?」

 ホワイトハウスの大統領室でルーズベルトは書類を見て吠えていた。

 ルーズベルトが手にしている書類はウラジオストクに進出した派遣航空隊の被害報告書であった。

「爆撃機約百五十機余り撃墜とはどういう事だッ!!」

「書類に書いてある通りですプレジデント。派遣航空隊は損耗が酷すぎるので暫くは日本爆撃を押さえるとの事です」

 マーシャル参謀総長はルーズベルトにそう答えた。

「信じられん……奴等はジャップだぞ? ジャップが爆撃隊をそんなに落とすというのかッ!? ドイツへの爆撃被害も酷いがこれは想定外だぞッ!!」

「それは我々もですプレジデント。日本爆撃は暫く見合わせて爆撃機の補充を優先すべきでしょう」

「それは判る……だがな、ソ連の奴等はウラジオストクを爆撃されても文句を言わんのかッ!? これは最早宣戦布告に等しいぞッ!!」

 ルーズベルトの言葉にハル国務長官が一歩前へ出た。

「ソ連側へ問い合わせたところ、爆撃されたのはレンドリースで我がアメリカに貸し出した飛行場だけですので宣戦布告ではないと……」

「おのれスターリンめッ!! 満州が欲しくないのかッ!!」

 ルーズベルトはそう叫ぶがスターリンはスターリンで攻めてほしくない事情がある。

 独ソ戦の戦線はウラル山脈まで近づきつつあった。そのため、シベリア方面の兵力を移送して防衛戦をしていたのだ。

 なので今、日本と争えばドイツの猛攻に耐えきれるかと言われたら無理なのである。

「ファックッ!! いいか、兎に角派遣航空隊の戦力を回復させろ。最悪の場合はB-29の投入も辞さないッ!!」

「で、ですがプレジデント。B-29を投入しますとソ連に性能がバレるのでは……」

「ソ連が直ぐにコピーを作れるかッ!! それにソ連に捕獲されたとしても我々がB-29以上の爆撃機を保有すればいい事だッ!!」

 ルーズベルトはそう叫んだ。そして戦力回復を悟られないために陽動として太平洋艦隊に出撃命令が下ったのであった。

「……我々はプレジデントのために戦っているのではないのだぞ……」

 命令を受け取ったニミッツ長官はそう呟いたのだが、逆に第三艦隊司令官のハルゼー中将は上機嫌だった。

「ヒヒヒ、久しぶりの出撃だな」

「主にニューカレドニアの攻撃ですね」

 ハルゼーはニヤニヤし、参謀長のカーニー少将は命令書を見ながらそう言った。

「ニューカレドニアにはカクタの第三機動部隊がいます。それに基地航空部隊も強力ですから油断は禁物でしょう」

「ハン、カクタの機動部隊なんざ第三艦隊には太刀打ち出来んよカーニー」

 そしてハルゼーの第三艦隊はフィジー諸島から出撃した。この時、第三艦隊は空母ランドルフ、ボクサー、ベニントンのエセックス級三隻を基準に護衛空母四隻の空母七隻の陣容である。

 対する角田中将の第三機動部隊は空母龍驤、飛鷹、隼鷹、雷龍、紅龍、神鷹の七隻であったが中型や小型空母なのでハルゼーの第三艦隊に正面から当たれば壊滅するのは必然だった。

「……此処は策でハルゼーを撃退するしかない」

 旗艦隼鷹の作戦室で角田はそういい放った。フィジー諸島に展開していた呂号潜から第三艦隊がニューカレドニアに向かって航行している事が報告されていた。

「何か考えがあるので?」

 参謀長の大林少将は角田に問う。

「……ニューカレドニアを囮とするのだよ」

 角田はそういい放ったのだ。

「しかし、ニューカレドニアは我が軍にとって重要な根拠地であり……」

「勿論、援軍は寄越してもらう。ラバウルやガダルカナルから戦闘機を寄越してもらおう。ハルゼーがニューカレドニアを攻撃中に我々が側面からハルゼーを叩く」

「ですがハルゼーはそう上手く信じますか?」

「疑問を確信に変えればいい。トラックから退避命令を出してもらいソロモン方面に逃げた錯覚を出せばいい」

 角田はニヤリと笑った。そしてニューカレドニアから彩雲がトラックへ向かい、ラバウルやガダルカナルから増援の要請を発信した。



「ハルゼー司令官、トラック諸島からの電文を受信しました。解析によればカクタの機動部隊が撤退するようです」

「何? 撤退だと?」

「イエス。どうやら艦隊保全を取るようです」

「……気に食わねぇな」

 ハルゼーは前方の海面を見つめながらそう呟いた。出来すぎていると思ったのだ。

「……だがこれが真実なら……ニューカレドニアの基地能力は粗方喪失出来るな」

 ハルゼーはカーニーに振り返った。

「攻撃は予定通り行う。ニューカレドニアにいるジャップを叩き潰すぞッ!!」

『イエッサーッ!!』

 そして第三艦隊はニューカレドニアに近づくのであった。



「堀長官、第三機動部隊より電文です」

「うむ……ほぅ」

「何かあったので?」

 草鹿参謀長が堀に聞いた。

「丸田……じゃなくて角田はハルゼーを追い返したそうだ。それに敵空母ランドルフを鹵獲した」

「ほぅ、それは凄い戦果ですな。無傷とは言えませんが大型空母を手に入れたわけですな」

 作戦は見事に的中した。第三機動部隊はソロモン方面に逃げると見せかけてソロモン諸島とニューヘブリデス諸島の間にあるトレス海溝を通過して第三艦隊を回り込むような感じで側面或いは後方に付いた。

 ハルゼーはそれを知らずにニューカレドニアに攻撃隊を送ったが、ラバウルやガダルカナルから増援が来ており攻撃隊は手酷い損害を与えられてしまった。

 ハルゼーは更に攻撃隊を送ったが結果は同じで百十三機を喪失した。

 その間に第三機動部隊からの攻撃隊が第三艦隊に殺到した。

 第三艦隊は少数のヘルキャットと百機余りのワイルドキャットで迎え撃ったが零戦隊が上手く攻撃隊を護衛し、攻撃隊は第三艦隊を攻撃した。

 結果は空母ボクサー、ベニントンが中破、ランドルフ舵故障、護衛空母一隻撃沈した。

 ランドルフは艦尾から一個小隊三機が侵入して魚雷を投下。

 この雷撃でランドルフは舵を故障してしまい、回避行動をしていたせいでニューカレドニア方面しか向かう事が出来なかった。

 ハルゼーは見捨てるつもりはなかったが、攻撃隊が側面から来た事にカーニー達が警戒して撤退を具申したのだ。それに攻撃隊の喪失も響いており、ハルゼーはランドルフを撃沈処分する事にして撤退を開始した。

 彩雲からの報告でランドルフと駆逐艦二隻しかいないと分かった角田中将はランドルフの鹵獲を決意して駆逐艦二隻を航空攻撃で撃沈してから鹵獲したのであった。

 駆逐艦からの砲雷撃でランドルフは損傷していたが大傾斜までしている事はなく、曳航が出来たのだ。

 ランドルフが日本空母として活躍するのはまだ先ではあるが、アメリカの技術を接収出来るまたとない機会でもあったのであった。




御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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