第八十二話
今日は自分の誕生日ですので投稿します。
「ば、馬鹿野郎ッ!!」
将宏は咄嗟にコルト1903を抜いてタルノフ大尉に投げた。
コルト1903はタルノフ大尉の顔に当たり、衝撃で頭が後ろに下がってその時にトカレフの引き金を引いた。
パンと銃声が部屋に響いたが、タルノフ大尉には命中せず壁に弾丸がめり込むのであった。
「な、何を……」
「馬鹿野郎ッ!! 何でお前が死のうとするんだッ!! お前が死んでもウラジオストクの米軍は撤退しないぞッ!!」
「しかし……」
「ええか? こんな事でお前が死んではならんのやッ!!」
将宏はタルノフ大尉にそう言った。そこへ前田少佐達も部屋に駆けつけてきた。
「うわぁ〜これは酷いな……」
「タルノフ大尉……」
「す、済まない。弁償する」
壁に穴が空いたのを前田少佐と霞が見ていた。
「兎に角だタルノフ大尉。貴女が死ぬような事ではない。ソ連とアメリカにはキッチリと落とし前をつけさせてもらうからな」
「……分かった。迷惑をかけて済まなかった」
タルノフ大尉はそう言って頭を下げて事なきを得たのであった。
一方、白州はソ連大使館にいた。
「……それではアメリカにレンドリース法による対価で基地を提供した……と?」
「ダー。我々も貴方方に言いたかったがアメリカが言うなと邪魔をしてくるので言えなかったのだ」
ソ連大使は我々も被害者だという表情をしていたが白州は内面では罵倒していた。
「(嘘つけ。満州を手に入れるためなら何でもするくせに……)成る程、ではもう一度聞きますがウラジオストクの飛行場は完全に米軍に提供して米軍の航空基地になっているわけですな?」
「その通りです」
「では……その航空基地を攻撃しても文句は言いませんな? 何せ航空基地には米軍しかいないのでしょう?」
ソ連大使館はニヤリと笑った。
「ダー。言わばアメリカの海外領土の一部ですな」
「……分かりました」
言質は取ったと白州は判断した。一方でソ連大使もホッとしていた。
「(会談前はどうなるかと思ったが……米軍の海外領土なら同志スターリンも文句は無いだろう)」
白州は戦果を携えて大本営にて報告をした。
「……それならウラジオストクの飛行場を爆撃してもソ連は文句を言わんという事だな」
「そうです。前以てソ連側には爆撃ルートを言いませんと、奴等が勘違いしそうです」
「分かった。そこは陸海で協議しよう。御苦労だった白州さん」
山本はそう言って白州を労い、東條に視線を向けた。
「佐渡島の防空隊はどうなってますかな?」
「今は飛燕四個中隊三六機が進出している。予定では百二十機の予定だ」
佐渡島は大した人員はいなかったが、今回の空襲により佐渡島は一大防空隊へと膨れ上がっていたのだ。
「また、新潟には屠龍や鍾馗等の戦闘機を配備する予定だ。それに陸軍は高射砲の生産を増やす事が決定した。特に三式十二サンチ高射砲は全国に配備出来るようにする予定だ」
「うむ」
山本が頷くと、会議に出席していた中島航空会社と三菱の代表が立ち上がった。
「中島ですが、連山の生産は順調です。富嶽はまだ機体とエンジン開発中であります」
連山は今のところは十二機が完成して陸海軍に引き渡されていた。連山の運用は陸海でする事になっている。
「うむ。それで三菱さんは?」
「は、実は堀越さんを主任とするチームが新たな試作戦闘機を開発したのです」
三菱の代表はそう言って設計図と写真を皆に見せた。
「これは……」
「堀越さんが最後に手掛けるレシプロ戦闘機です」
実際、日本陸海軍はジェット戦闘機の研究をしておりドイツからMe262を輸入して小型にしたジェット戦闘機橘花を開発中であった。
それを堀越技師はわざわざレシプロ戦闘機最後の戦闘機としたのだ。
「……逆ガル型の戦闘機だな」
「はい。この戦闘機は最初から逆ガル型です。零戦六四型は少ない時間でしたので。それにこの戦闘機は排気タービンを搭載し、エンジンは新たに開発した二千四百馬力のハ―四三改(一二ル)です」
「……最大速度、航続距離、武装は?」
将宏はそう聞いた。三菱の代表も分かっていた表情をして将宏に紙を渡した。
「……最大速度七一八キロ、航続距離二千三百キロ、機首に十二.七ミリ機銃、主翼に三十ミリ機銃を二門ずつ。更に噴進弾十発搭載……か」
「そうです。堀越さんが威信にかけた戦闘機です。これは艦上機としても使えます」
「飛行はしましたか?」
「志賀少佐が協力してくれました。志賀少佐は「こいつは烈風や疾風より凄い」と言っていました。何なら河内少佐も乗りますか?」
「是非とも乗らして下さい」
将宏はそう言った。
「……B-29対策で震電と共に使えそうだな。名前の方はあるのか?」
「……堀越さんによれば「神風と書いてしんぷう」だそうです」
『………』
代表の言葉に将宏達は黙った。
「堀越さんは「特攻で戦死した者達が乗り扱えるように開発した。私なりの謝罪でもある」と言っていました」
「……分かった。即時制式採用とまで言わないが何回かのテスト飛行をしてから判断しよう」
宮様は三菱の代表にそう言った。なお、この神風はテスト飛行後の一週間後に海軍から制式採用が決定され戦後の六十年代まで運用されるのであった。
そして最初の空襲から十日後、米軍は再び本土空襲を敢行した。
「回せ回せェッ!!」
佐渡島に展開している飛燕部隊は直ちにプロペラを回して離陸していく。飛燕部隊はまだ予定の百二十機までいかない六十機であるが、それでも無いよりかはマシである。
更に海軍からは雷電四八機が離陸していた。新潟方面でも陸海の戦闘機群が離陸していた。
「いたッ!! 米軍の爆撃隊だッ!!」
佐渡島防空隊隊長の小林照彦少佐は内地へ飛行している爆撃隊を発見した。
「帝都に侵入させてはならんッ!! 全機掛かれェッ!!」
爆撃隊より高度が高かったため、上空からの銃撃を敢行した。
爆撃隊から銃撃が来るが小林少佐はそれを臆せずに一機のB-24に照準をして二十ミリ機銃弾を叩き込んだ。
二十ミリ機銃弾はB-24の操縦席に命中して操縦員達を殺傷した。
B-24はそのまま急降下をして海面に墜落していく。爆撃隊は高度を上げて戦闘機から逃れようとするが、高度九千までに二八機が食われていたが佐渡島防空隊を振り切る事に成功してそのまま東京へと向かう。
新潟上空でも零戦や疾風に襲われて三六機が撃墜されたがそれでも爆撃隊は東京へと向かう。
東京方面では多数の戦闘機群が待ち構えているというのに……。
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