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第七十九話






「第五艦隊が引き上げただとッ!? 上陸船団の護衛はどうする気だッ!!」

 夕方、サイパン沖に展開している上陸船団の輸送船の中で司令官のターナー中将はそう罵倒した。

「ターナー司令官、如何なさいますか?」

「如何もなにも、撤退するしかないだろッ!! 全部隊に通達ッ!! 直ちに将兵を船団に乗せろッ!! 陸軍の奴等にも知らせるんだッ!!」

 上陸船団が慌ただしくなりだした。そしてサイパンに上陸している海兵隊にも伝えられた。

「撤退だとッ!?」

「スプルーアンス親父の第五艦隊がジャップにやられたらしいぞ」

「ファックッ!! 糞猿ジャップめッ!!」

 海兵隊達は守備陣地から撤退して上陸地点の砂浜にまで戻っていく。

「准尉殿、奴等逃げていきますぜ」

「罠……か?」

「それにしては慌ただしい逃げ方ですよ」

 守備陣地から海兵隊の撤退を見ていた日本軍は不思議に思った。

「まさか海軍がスプルーアンスの艦隊を撃破したのか?」

「そうだとすると好機ですな。またとない千載一遇ですぞ」

「……よし、チハと共に前進しよう。罠であればチハが弾除けになってくれる。早速中隊長に報告してくる」

 そして日本軍はゆっくりと前進を始めた。日本軍の前進に海兵隊は直ぐに気付いた。

「ジャップが来るぞッ!!」

「早く逃げるぞッ!! 物資は置いていけッ!!」

「ジャップにあげるのか?」

「ジャップに捕まるのと一目散に逃げるのはどっちが良いんだッ!!」

 遂には物資を置き去りにして逃げる羽目になった。これに飛び付いたのは勿論日本軍である。

「ルーズベルト給与だッ!?」

「此方は医療品だ。軍医を呼んでこいッ!!」

 日本軍は捕獲した物資を蓄えつつ前進をした。そして夜半に海兵隊と陸軍を何とかギリギリで収容した上陸船団は直ちに出港したが、新たな敵と遭遇した。

「ジャ、ジャップの戦艦だッ!! ヤマトがいるぞッ!!」

 大和を旗艦とする宇垣中将の戦艦部隊が上陸船団に夜襲を敢行したのだ。

「此方はまともに食らったらやられる……全艦最大速度で離脱しろッ!!」

 ターナーはそう指示を出す。宇垣中将の戦艦部隊は逃げる上陸船団に照準をした。

「撃ちぃ方始めェッ!!」

「撃ェッ!!」

 大和と武蔵の五一サンチ砲が吼えた。砲弾は上陸船団の至近弾となる。

「修正急げッ!!」

 二隻は修正して再び砲撃をする。今度は駆逐艦に命中して駆逐艦は爆沈した。

「輸送船を先に逃がせッ!! 護衛艦艇は砲撃しつつ退避ッ!!」

 上陸船団の護衛艦艇が戦艦部隊に砲撃を始めるが、焼け石に水である。

 一隻、また一隻と護衛艦艇が沈められていき遂には輸送船にも命中弾が出て波間に消えていく。

 そして夜が明けた時、上陸船団は散々な目だった。宇垣中将は航空部隊の攻撃を恐れて夜明けと共に砲撃を中止して離脱した。

 上陸船団は戦艦部隊の砲撃により、駆逐艦十二隻、巡洋艦四隻、護衛空母一隻、輸送船二八隻を撃沈され兵員の損耗率は約三八%にまでなったのだ。

 勿論、報告を受けたルーズベルトが激怒したのは言うまでもない。

「……何だこの損害はッ!? サイパンに上陸していながらも第五艦隊がやられ、結局は撤退して上陸船団の半分近くがやられた……どういう事だッ!!」

「……報告の通りですプレジデント。ジャップを甘くみすぎた結果です」

「何だとッ!? それが作戦部長として言う言葉かねキングッ!!」

 キングの反論にルーズベルトの火山は更に噴火した。

「御言葉ですがプレジデント。作戦を強行させたのは貴方です。陸軍が主張するように、ソロモン、ニューギニアを占領してから反攻作戦を取るべきです」

「黙れキングッ!! サイパンを占領すればジャップの本土を焼け野原に出来るB-29を投入すれば我々は勝てるのだッ!!」

 B-29は確かに生産されてはいたが故障する事もあり、ハワイに配備されていた。

「中国はどうした? あいつらに飛行場を貸すように要請はしたはずだ」

「プレジデント、中国は日本から支援を受けて共産党を駆逐しています。いくら中国でも早々に裏切れません」

 国民党の蒋介石は度々アメリカから飛行場貸出の要請を受けていたが、断っていた。

 蒋介石からにしてみれば今の日本は武器を提供してくる支援国なのだ。裏切れば中国に日の丸が立ちかねないと懸念していたのだ。(実際、日本側はそんな事する気はないが)

「此処は機動部隊の再建を急がせるべきです」

「……分かった。下がっていい」

 ルーズベルトは悔しげにそう承諾してキングを下がらせた。

「……おのれヤマモトめッ!! 今に、今に見ていろッ!! ぐ……」

 ルーズベルトがそう叫んだ時、胸に痛みを感じた。直ぐに痛みは治まり、ルーズベルトは体調が悪いと思ったがそれは違っていた。



「何とか米軍を退けたようだな」

 大本営で山本はそう呟いた。山本はマリアナの決戦時はずっと大本営にいた。

「第二機動艦隊は帰還して修理の必要だな」

「他にも航空部隊の補充も必要です」

「うむ。まぁ向こうも暫くは仕掛けては来んだろう。それに敵の物資を手に入れたのが良い傾向だな」

 米軍はサイパンに全体の六割の物資を置き去りにしていた。その中にはM4やM10を捕獲していた。

「捕虜は要らないが物資は要るな」

「ハハハ、成る程」

 山本の呟きに東條は笑う。

「ところで東條さん。ロタ砲はどうでしたかな?」

「いや喜ばしい事ですよ山本さん。ロタ砲はM4の装甲を貫通する事を確認しました。今はロタ砲を大量生産中です」

 東條は意気揚々と山本にそう言ったが、山本本人は何か考えていた。

「何か懸念でも?」

「……ソ連だ。ソ連の動向が気にかかって仕方ないんだ」

 山本はシベリア方面の地図を見ていた。

「ソ連はドイツと攻防戦をしていますぞ? まさか奴等がいきなり攻めこむ等……」

「……杞憂であれば良いがな。東條さん、念のためにロタ砲の半分は満州に配備させてほしい」

「……分かりました、やりましょう。あぁそれと、仮称四式中戦車は完成しました」

「完成しましたか」

 仮称四式中戦車は陸軍が威信をかけた戦車である。戦車砲は三式中戦車のアハトアハトより大きい九二式十サンチカノン砲を戦車砲に改造して使用していた。

 生産数は試作車を含めて六両であり、陸軍はチハの生産を一時中断して仮称四式中戦車の生産を行う事が決定している。

「満州の工場にも生産を行わせる予定です」

「分かりました。資材の方も少し向かわせるようにしましょう」

 山本は東條にそう言った。









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