第七十八話
「ひ、左舷から魚雷接近ッ!!」
「面舵二十ッ!!」
「おもぉーかぁーじッ!!」
接近してくる魚雷に大鳳艦長の菊池大佐は回避運動に入った。
「左舷の対空火器は魚雷に掃射せよッ!!」
菊池艦長はそう命令した。大鳳は右に回避していく。
しかし、二本が衝突コースに入った。
「撃て撃て撃てェッ!!」
左舷の対空火器群が射撃を開始する。一本は何とか撃破出来たが残り一本があった。
「総員衝撃に備えろォッ!!」
菊池艦長はそう叫んだが、見張り員が突然叫んだ。
「じょ、上空から瑞雲がッ!?」
上空で警戒していた瑞雲が魚雷に向かって急降下していたのだ。
「食わしゃぁしねぇぜッ!!」
瑞雲のパイロットは両翼に搭載している二十ミリ機銃弾を放った。
しかし二十ミリ機銃弾は魚雷に命中しなかった。
「お母さんッ!!」
瑞雲はそのまま体当たりをして魚雷と共にを爆発四散するのであった。
「魚雷は……」
大鳳に魚雷が命中する事はなかった。全て瑞雲に魚雷が命中していたのだ。
「……攻撃隊の発艦を急がせろ」
「分かりました」
小沢長官は古村参謀長にそう指示を出すと、小沢長官は四散した瑞雲の破片を見ながら静かに敬礼をした。
それは他の古村参謀長達も同様であり同じく敬礼をしていた。
後に戦死した瑞雲のパイロットと偵察員には特別の三階級特進がされて、軍神として靖国神社に祀られるのであった。
第二次攻撃隊は発艦を完了させて編隊を組んで第五艦隊に向かった。
攻撃隊隊長は関衛中佐である。
「……順調なようだな」
統制が取れた編隊を組んでいる攻撃隊を見ながら関中佐はそう呟いた。
攻撃隊は第五艦隊へ進んでいく。
一方、第五艦隊では消火活動をしながら第二機動艦隊の攻撃へ向かった攻撃隊を収容していた。
「スプルーアンス司令官、攻撃隊の戦果ですが空母三隻、巡洋艦二隻を中破。沈没させた艦艇は駆逐艦一隻だけです」
「……あれだけの攻撃機を出してか?」
「は、迎撃機と敵のカウンターアタックが激しく有効に攻撃が出来なかったと……それに未帰還機も多数います」
「……おのれオザワめ」
スプルーアンスは拳を強く握り締める。
「……ニミッツ長官とターナーに連絡。第五艦隊損傷大。最悪の場合はマーシャル諸島に撤退すると伝えろ」
「司令官、それは……」
デービースは何か言いたげだったが命令に従い、ニミッツ長官とターナーに打電させた。
「……撤退か……」
電文を受け取ったニミッツ長官は悩んでいた。もしもの場合の撤退を許可するべきか否か。
「……スプルーアンスに打電しろ。撤退は我々が判断する」
ニミッツ長官はそう言ったが内心では即時撤退を打診したかった。
だが、撤退をすれば日本軍が勢いづき、折角占領したマーシャル諸島まで奪い返されると判断したのだ。
更に問題はホワイトハウスだ。もし、第五艦隊が撤退なぞすればルーズベルトの火山が噴火するのは間違いなかった。
「……スプルーアンスに人命救助の優先をさせるようにしておくか」
ニミッツ長官は最悪の場合を予想してそう追加文を送らせた。
ニミッツ長官の最悪の場合とは空母全滅である。勿論、スプルーアンスもこれは予想している。
そしてこの交信の最中に第二次攻撃隊が飛来したのである。
「レーダーに反応ッ!! ジャップの攻撃隊ですッ!!」
「……やはり猛者か……」
「戦闘機は出来るだけ上げます」
航空参謀はそうスプルーアンスに言ったが、百機以上を上げれるかは疑問であった。それでもやれる事はやるつもりだ。
「全艦対空戦闘用意ッ!!」
「アイアイサーッ!! 対空戦闘用意ッ!!」
第五艦隊は抜けた艦艇の穴を埋めて砲身や銃身をキリキリと上空へと向けた。
「全機ッ!! 何としてもジャップを艦隊に近づけさせるなッ!!」
ヘルキャットの群れは第二次攻撃隊に襲い掛かる。しかし、そうはさせまいと零戦隊が迎え撃つ。
「全機ッ!! 攻撃隊に敵戦闘機を近づけさせるなッ!! 叩き落としてやれッ!!」
零戦隊隊長の新郷少佐はヘルキャットとの空戦に突入した。
ヘルキャットの群れは攻撃隊に近づこうとするが零戦隊に阻まれて逆に落とされていく機体があった。
「零戦隊と空戦をしている今が好機だッ!! 彩雲隊は作戦を開始せよッ!!」
関中佐はそう叫び、十六機の彩雲のうちの半数の八機が高速で第五艦隊上空へ侵入した。
第五艦隊は対空砲火を撃ち上げるが、それよりも前に八機の彩雲は両翼に搭載した電探欺瞞紙入りの燃料タンクを投下した。
これによりレーダーは勿論、VT信管を持つ対空砲弾は誤作動をした。
「全機突入せよッ!! 手負いの空母から叩けェッ!!」
関中佐は操縦桿を倒して中隊は手負いの空母バンカーヒルに急降下爆撃を敢行した。
「ジャップの急降下爆撃機だッ!!」
「撃て撃てェッ!! 奴等を撃ち落とせェッ!!」
バンカーヒルの対空火器は懸命に関中隊を撃ち落とそうとするが当たる気配はない。
「高度六百ッ!!」
「撃ェッ!!」
関中佐は高度六百で五百キロ爆弾を投下して操縦桿を引いて上昇していく。
「命中ッ!! 命中ッ!!」
バンカーヒルを見ていた偵察員が叫んだ。バンカーヒルは爆弾四発が命中して空母の機能を完全に消失していた。
そこへ村田中佐率いる雷撃隊が護衛艦艇を飛び越えて突入していた。
別のところでは楠美中佐の雷撃隊もまだ健在している空母ワスプ2等に突入している。
「距離千二百ッ!!」
測定している偵察員の報告に村田中佐は投下索に手を添えた。
「距離千ッ!!」
村田はまだ投下しない。既に中隊は三機を対空砲火で失っている。
「距離八百ッ!!」
「撃ェッ!!」
村田中佐は距離八百で必殺の魚雷を投下して離脱した。
投下された六本の魚雷は一旦沈み、再び浮かんでバンカーヒルに向かう。
「左舷から魚雷接近ッ!!」
「面舵一杯ッ!!」
「アイサーッ!!」
バンカーヒルが慌てて回避運動に入る。
「……ノー、これは当たるぞ」
見張り員がそう呟いた。そしてバンカーヒルの左舷に四本の水柱が吹き上がった。
「バンカーヒル被雷ッ!! 傾斜が酷くなりますッ!!」
「更に空母ホーネット2も被雷ッ!! ホーネット2は総員退艦が出されたようですッ!!」
重巡インディアナポリスの艦橋では次々と悲痛な報告が来ていた。
「……スプルーアンス司令官……」
ただやられていく空母を見ていたスプルーアンスは何も言わなかった。
「……司令官、此処は勇気ある行動を」
「……全艦転進。マーシャル諸島へ退避する。この戦闘は我々の……負けだ」
スプルーアンスはグッタリと司令官席に座り込んだのであった。
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