第七十七話
「全艦対空砲ファイヤーだッ!!」
「イエッサーッ!! オープンファイヤーッ!!」
第五艦隊からVT信管付きの対空砲弾が発射され始めた。
そこへ九機の彩雲が第五艦隊上空へ侵入してきた。
「奴等にプレゼントしてやるぞ。電探欺瞞紙投下ッ!!」
彩雲の両翼に付けられていた燃料タンクが落とされた。燃料タンクは落下してから途中でパカリと二つに割れて中から大量のアルミ箔が散布された。
「おい、VT信管が変なところで爆発しているぞ。故障したのか?」
「そんなはずはない。VT信管は正常に機能しているはずだ」
対空砲員は口々にそう言い合うが、スプルーアンス達司令部は直ぐに気付いた。
「おのれジャップめッ!! VT信管の弱点を使ったかッ!!」
VT信管は言わば電波を発して敵機を撃墜する。アルミ箔の欺瞞紙を投下すればVT信管は誤作動を起こしてアルミ箔に爆発するのであった。
「ようし、今が好機だッ!! ト連送を打てッ!! 全機突入せよッ!!」
野中少佐はそう発して一式陸攻隊と飛龍隊は高度を下げた。
銀河隊は高度三千を維持して急降下爆撃に備える。海上の第五艦隊からは対空砲火が撃ち上げられている。
「行くぞォッ!!」
銀河隊は次々と急降下を開始した。
「ギャラクシーだッ!! 撃ち落とせェッ!!」
機銃員が二十ミリ機銃を上空に向けて発射する。
弾丸や砲弾が飛び交う中、銀河隊は急降下をして目標のエセックス級空母に五百キロ爆弾を投下して離脱した。
「衝撃に備えろォッ!!」
最初に五百キロ爆弾が命中したのはエセックス級空母のバンカーヒルであった。
バンカーヒルは爆弾三発が命中して飛行甲板がめくれ上がった。
バンカーヒルは瞬く間に発着艦が不能となった。更に空母フランクリン、レキシントン2、イントレピッドも五百キロ爆弾が飛行甲板に命中して発着艦が不能となっていた。
「スプルーアンス司令官ッ!! バンカーヒル以下エセックス級空母四隻が被弾ッ!!」
「そんな事は分かっているッ!!」
「左舷からべティ(一式陸攻)が接近してきますッ!!」
魚雷を搭載した一式陸攻と飛龍が高度五メートルという低空飛行で第五艦隊に接近してきた。
「対空砲火で凪ぎ払えッ!!」
スプルーアンスはそう命令を出すが、まだ残っていた九機の彩雲が残りの欺瞞紙を投下した。
これにより、第五艦隊の対空砲は機銃以外は使えなかった。
「おのれジャップめェッ!!」
スプルーアンスは重巡インディアナポリスの艦橋でそう叫んだ。
「一式は護衛艦艇に集中だッ!! 飛龍隊は空母を狙えッ!!」
野中はそう指示を出して野中の中隊は一隻のアトランタ級防空巡洋艦に狙いを定めた。
しかしアトランタ級防空巡洋艦も負けじと対空砲火を放って野中隊を落とそうと奮戦している。
「五番機炎上ッ!!」
野中隊の五番機の左エンジンに四十ミリ機銃弾が命中。五番機の左翼が炎に包まれた。
五番機はそのまま不時着水をして難を逃れたが今度は七番機が対空砲弾の直撃を受けた。
「七番機直撃ッ!!」
直撃した七番機はそのまま爆発四散をして四散した部品等が海面に叩きつけられた。
更に三番機にも命中弾が出て三番機はクルクルと回転をしながら海面に叩きつけられた。
「距離千ッ!!」
「投下用意ッ!!」
野中の言葉に照準手が発射索を握る。
「距離八五〇ッ!!」
「撃ェッ!!」
照準手が発射索を引いて一式陸攻から八百キロ航空魚雷が投下された。
投下された魚雷は一旦沈みこむが直ぐに海面近くにまで浮き上がって航行を始める。
アトランタ級防空巡洋艦は迫ってくる魚雷に慌てて退避行動に入った。
「駄目ですッ!! 当たりますッ!!」
魚雷の予想地点を割り出した見張り員が叫んだ。そして防空巡洋艦に魚雷三発が命中して三本の水柱が吹き上がった。
「ダメコン隊急げェッ!!」
防空巡洋艦のダメコン隊が必死に排水作業に掛かるが同時に三本が命中しているので浸水が激しかった。
遂には傾斜も酷くなっていき、最終的には総員退艦が発令されるのである。
他の陸攻隊も集中して護衛艦艇に攻撃を敢行して巡洋艦三隻、駆逐艦九隻を撃沈して戦艦インディアナが大破、巡洋艦二隻、駆逐艦十一隻が損傷した。
しかし、陸攻隊の損耗も激しく八七機が撃墜若しくは不時着水を余儀無くされて米軍の捕虜になったりした。
だが、攻撃はまだ続いていた。まだ陸軍の飛龍隊は攻撃していないのだ。
「海軍さんの努力を無駄にするなッ!! 突っ込むぞォッ!!」
飛龍隊の柏原少佐はそう叫んで五メートルの低空飛行で第五艦隊の死角から突入した。
死角は陸攻隊にやられた艦艇の場所からである。
「またジャップが来るぞォッ!! マイクッ!! 弾持ってこぉいッ!!」
第五艦隊の艦艇は激しく対空砲火を放つが、飛龍隊は若干の犠牲を出しつつも空母群へ辿り着いた。
「空母だッ!! 投下用意ッ!!」
柏原少佐の中隊が狙ったのは軽空母プリンストンであった。プリンストンは対空砲火を放ちつつも必死に回避運動をしている。
「用ぉ意……撃ェッ!!」
対空砲火で五機に減った柏原中隊が五本の航空魚雷を投下して離脱する。
プリンストンは二本の魚雷を避ける事が出来たが、残り三本が右舷に命中した。
「排水が追いつきませんッ!!」
軽空母の船体は元々は軽巡の船体であるため、三本の魚雷を受けては助かりそうにもなかった。
「総員退艦せよッ!!」
プリンストンの乗組員が海に飛び込む中、同じく軽空母べローウッドにも四本の魚雷が命中して左舷に大傾斜をしていた。
他にも損傷していた空母イントレピッド、ホーネット2等に魚雷を一〜二発を命中させていた。
「……どうやら此処までのようだな。全機帰投するぞ」
傷ついた攻撃隊を見ながら野中はそう呟き、攻撃隊は帰還の途についた。なお、新型兵器を搭載した二個中隊だが、対空砲火で撃ち落とされたり、発射機器が故障したりと攻撃をするのが出来なかった。
その頃、第一機動艦隊ではヤップ島から新たに飛来した零戦二一〇機と第一航空艦隊所属の彗星五四機、天山五四機の戦力を受け入れて第一機動艦隊のと合わせて第二次攻撃隊を発艦させていた。
「小沢長官、そろそろ制空隊の奴等が帰ってくる頃です」
「分かっている。第二次攻撃隊の発艦を急がせろ。まだ気を抜く暇ではない」
小沢長官はそう指示を出す。しかし、この時大鳳に悲劇が迫っていた。
「……ん?」
対潜警戒のため飛行していた瑞雲の偵察員が海面に何かを見つけた。
「ぎょ、魚雷だッ!! 大鳳に魚雷が迫っているぞッ!!」
それは第一機動艦隊を発見して魚雷を発射したガトー級潜水艦アルバコアの仕業であった。
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