第七十三話
サイパン島の沖合いからは旧式戦艦部隊がサイパン島を目標に艦砲射撃を敢行していた。
「撃てェッ!! 撃ちまくれッ!! ジャップのケツに砲弾をぶちこんでやるのだッ!!」
戦艦メリーランドの艦橋で旧式戦艦部隊司令官のオルデンドルフ中将がそう叫んでいた。
オルデンドルフの命令に答えるかのように旧式戦艦部隊は艦砲射撃を続けた。
この旧式戦艦部隊は開戦日に真珠湾で沈められた旧式戦艦部隊なのだ。
一度は沈められた旧式戦艦であるが浮揚されて改装され、新しく任務についていた。
旧式戦艦部隊から放たれる砲弾は次々とサイパン島のチャランカノアの海岸に突き刺さって爆発していく。
「ひえぇ〜流石は物量の差があるアメ公だな」
堅固な守備陣地の中で軍曹がそう呟いた。サイパン島及びマリアナ諸島の守備陣地は史実のように時間が無く、脆い陣地ではない。
開戦前から守備陣地の築城をしており、史実の硫黄島より堅固な陣地であった。
「陣地から顔を出すなよ。爆風で飛ばされるぞ」
「分かっておりますよ准尉殿」
軍曹は准尉にそう答えた。艦砲射撃は既に三十分は続いていた。
「今のうちにメシを済ませておけ。まだ後三十分は続くからな」
「分かりました。おい、お前らもメシを食べろ」
軍曹は配給されたメシを配っていく。中身は握り飯に沢庵である。
それから三十分後、旧式戦艦部隊の艦砲射撃は漸く終了した。
「よし、上陸部隊を出せ」
指揮官のリッチモンド・ターナー中将がそう下令した。
0815時に上陸船団から大型上陸用舟艇と小型上陸用舟艇が一斉にチャランカノアの海岸に向かって進撃を開始した。
上陸海岸の北側には第二海兵師団が、南側には第四海兵師団がLVTを先頭にしてLVTが砂浜に乗り上げた。
「……おいおい、静かじゃないか?」
「上陸した途端にジャップが突撃してくると聞いたが……どうやら間違いのようだな」
「喋っている暇があるなら手伝えッ!!」
海兵達は次々と上陸していく。上陸開始から二十分で約八千名の海兵隊が砂浜に上陸した。
「……隊長……」
「……よし」
偽装された守備陣地群では日本軍の兵士達が九九式短小銃、九九式軽機関銃、九二式重機関銃、百式重機関銃(十二.七ミリ機関銃)に弾薬を装填して狙いを定めていた。
「装填完了ッ!!」
「撃ェッ!!」
砲兵陣地から四一式山砲と九二式歩兵砲が一斉に砲撃を開始した。
発射された榴弾は砂浜にいた海兵隊を吹き飛ばした。
「攻撃開始ィッ!!」
偽装されていた守備陣地からも一斉に射撃を開始した。
「くそッ!! 伏せろォッ!!」
「隠れていたのかジャップめッ!!」
海兵隊は吹き飛ばないように砂浜に伏せ、銃弾の雨をかわそうとする。LVTの影に隠れたりする兵士もいた。
しかし、LVTは砲兵隊から優先的に攻撃され撃破されていく。
「シャーマンはまだ上陸しないのかッ!?」
「まだ来ねえよッ!! もう一度艦砲射撃は出来ないのかッ!!」
「したら俺達まで降っとんじまうよッ!!」
海兵達は喚きながらも反撃するが、被害は増えるばかりである。そこへ漸く戦車隊が上陸した。
「敵戦車が上陸ッ!!」
「射撃中止ッ!!」
戦車隊の上陸に日本軍は射撃を中止した。銃弾の雨が止んだ事に海兵達は驚いた。
「おい、ジャップが射撃を止めたぞ」
「シャーマンに驚いたのか?」
海兵達はそう話すが突然、前方でピカッと光ると上陸していた一両のシャーマンの前部装甲を貫いて破壊した。
「何ッ!?」
「シャーマンがやられたぞッ!?」
「前方からジャップの戦車だッ!! タイプ97だッ!!」
現れたのは戦車第九連隊の第四中隊であった。サイパン島に配備されていた戦車第九連隊は中隊長車は三式中戦車であるが他は全て九七式中戦車改である。
主砲は史実の四式中戦車が搭載していた五式七五ミリ戦車砲である。
密かにノモンハン事件後にスウェーデンから高射砲のを購入して永田局長の元で戦車砲の改造を行っていた。
開戦後、活躍するチハの五十口径戦車砲に「五六口径のは要らないな」となり、完成していた五門の戦車砲を倉庫に保管していた。
しかし、ニューカレドニアの戦いで九七式の優位性が崩れてきたため東條は永田局長と会談後には九七式中戦車改の生産を決定して内地で急ピッチでの生産となり何とか第九連隊分の九七式中戦車改が出来たのだ。
エンジンはソ連から輸入していた。元から開発していたのと、それを元に高馬力のエンジンを開発したのが四百五十馬力を出すディーゼルエンジンだった。
その生産された車両が風雲を告げていたサイパン島に送られていたのだ。
九七式改は砂浜にいるシャーマンを次々と砲撃して撃破していく。
「くそッ!! 航空隊は何をしているんだッ!!」
その頃、漸く護衛空母からワイルドキャットとドーントレスが発艦していた。
「敵機襲来ッ!!」
「カクカク、煙幕を張れッ!!」
見張りの兵士の報告に第四中隊長は煙幕の展開を下令して各車は煙幕を発射した。その煙に紛れて第四中隊は隠れていく。
「ファックッ!! 煙幕で見えないッ!!」
『適当に投下しろッ!! 数で落とせば当たるッ!!』
米軍の攻撃隊は当てずっぽうのところへ爆弾を投下したが、二両の九七式改に命中して破壊された。
しかし、日本軍はゆっくりと海岸から後退を始めた。
「……ジャップが後退しているだと?」
「はい、如何なさますか?」
「ジャップが後退しているならチャンスだ。急いで海岸の橋頭堡を築くのだ。それと新兵器の荷揚げを急ぐのだッ!!」
「イエッサーッ!!」
第二海兵師団長のワトソン少将はそう命令した。
米軍の損害は酷かった。シャーマン戦車は最初の上陸で十二両のうち十両が撃破された。
また、LVTも十七両が撃破されており海兵隊も第一陣の八千人のうち約二千八百名ほどの死傷者を出していた。
「……損害が多すぎるな。予定を早めて第二七歩兵師団を上陸させよ」
「サーッ!!」
軽巡ナッシュビルでターナー中将はそう指示を出していた。
「……最悪の場合は増援部隊を投入せねばならんな」
ターナー中将はそう呟いた。マーシャル諸島には予備部隊として陸軍の三個師団が待機していたのだ。
しかし、海中から魔物がゆっくりとやってきた。
「魚雷発射ァッ!!」
上陸船団の後方には日本海軍の第六艦隊所属の伊号潜水艦隊が展開していたのだ。
伊号潜水艦は全部で二十隻が展開しており、彼等は必殺の酸素魚雷を発射すると同時に急速潜行して退避していた。
航跡を残さない酸素魚雷に米軍は気付く事なく次々と米軍の艦艇は水柱を噴き上げた。
「な、何事かッ!?」
「ジャ、ジャップのサブマリンですッ!! サブマリンのロングランスの攻撃ですッ!!」
この攻撃で上陸船団は戦車二七両、火砲二五門、上陸予定であった第二七歩兵師団の第一六五歩兵連隊と第一〇五歩兵連隊の半数の兵士が沈没時の渦に巻き込まれるのであった。
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