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第七十一話






「ヘイ、ビリー」

『どうしたマック?』

 アベンジャー雷撃機の中で操縦桿を握るマック・ベイリス少尉が右隣を飛行していた同じアベンジャー雷撃機のビリー・カロル少尉に話しかけた。

「今度はジャップの奴等はいるかな?」

『いるだろう。トラック諸島は東洋のジブラルタルや東洋の真珠湾と言われているんだ。ジャップはそう簡単には手放さんな』

「だよな。なら今度こそジャップのケツに爆弾をぶちこんでやらないとな」

 二人はそう話し合っていた。

『ビリーにマック。そろそろトラックだ、話すのは後にしろ』

 アベンジャー隊の隊長がそうたしなめた。

「へいへいっと……ん?」

 その時、マックは太陽を見た。直視で見ないよう右手で光を遮りながら目を細めた。

 小さい粒がだんだんと大きくなりながら此方へ向かっていた。

「ジャップだッ!! ジャップの戦闘機が太陽から突っ込んでくるぞッ!!」

 マックはそう叫びながら操縦桿を倒して編隊から外れた。

 その直後、数十の黒い物体が編隊を襲った。それは零戦隊だった。

『ジークだッ!?』

『馬鹿なッ!? 何故ジャップの戦闘機が此処にいるッ!!』

『後ろに付かれたッ!! 誰か助けてくれッ!!』

『右翼が燃えているッ!! 操縦不能だッ!! 死にたくないッ!!』

 零戦隊が太陽を背にして急降下で銃撃してきたのだ。編隊はあっという間にバラバラになった。

「ビリーッ!! 何処だビリーッ!!」

『此方だマックッ!! 後ろにジークがいるッ!!』

 マックの視界に零戦から逃げているアベンジャーが映った。

「待ってろビリー。今助けに行くぞッ!!」

 しかしマックが乗っているのは雷撃機であるアベンジャーだ。ただやられに行くだけである。

 そしてビリーの後ろにいた零戦が二十ミリ弾を放ってビリー機を炎上させた。

「ビリーッ!!」

 ビリー機は炎上しつつスパイラル回転をしながら眼下の海面に叩きつけられた。

「ビリィィィィィーーーッ!!!」

「マック少尉ッ!! 後方からジークが接近しますッ!!」

 マックの絶叫に後部の機銃員はそう叫ぶ。すぐ近くまで零戦が接近していたのだ。

 マックは逃げようとするが、零戦はそれより早くに機銃弾を放ってマック機の左翼の燃料タンクを貫かせて炎上させた。

「くそォッ!! ジャップめェッ!!」

 マックは脱出しようとしたが、直後に爆発四散するのであった。

「アベンジャー撃墜」

 迎撃隊指揮官の納富少佐はそう呟いた。ラバウル飛行隊隊長だった納富少佐はトラックへ移動して迎撃隊指揮官となっていた。

『隊長そのままッ!!』

 後方から銃撃が聞こえ、エンジンから炎を噴いているヘルキャットが降下していく。

『一機頂きました』

「済まんな岩本」

 納富少佐は岩本少尉に礼を言った。この岩本少尉は史実で有名な撃墜王の一人、岩本徹三少尉であった。

 彼自身、既に五機を撃墜していたがこれで六機目である。

『それでは』

 岩本機は翼を翻して再び獲物を狩りに行くのであった。

「よし、全機叩き落としてやれェッ!!」

 納富少佐は再び空戦の輪の中に入るのであった。しかし、いくら迎撃隊を構えていてもくぐり抜けてしまう機もある。

『よし、抜けたぞッ!!』

『このままなぶり殺しだァッ!!』

 艦爆十二機、艦攻十機がトラック諸島へ侵入した。

 だが、これらには鉄の暴風が待ち受けていたのだ。

「敵機視認ッ!!」

「撃ちぃ方始めェッ!!」

 トラック諸島の各島に配備されていた高角砲や対空機銃が一斉に対空射撃を始めたのである。

 侵入した攻撃隊は瞬く間に撃墜されていき、爆撃に成功したのは三機のみであった。しかも滑走路に命中しただけで空襲後に工作隊が直ぐに復旧させたのである。

 米軍の攻撃隊は戦闘機二六機、艦爆十七機、艦攻十一機しか帰還出来なかった。

「……何だこの被害は……?」

 ボロボロに帰還した攻撃隊に驚愕したスプルーアンスだったが、被害の報告に二度驚いたのである。

「……如何しますかスプルーアンス司令官?」

 デービース参謀長も予想していなかったのか若干顔色が悪かった。

「……護衛空母を集めて再度攻撃隊を出させる。トラックを叩かないとマリアナ諸島攻略に乗り出せない」

 スプルーアンスはそう判断した。直ちにマーシャル諸島にいた護衛空母群を呼び寄せて二日後に再攻撃を敢行した。

「何故だ……何故こんなにもジークがいるんだッ!?」

 トラック諸島に接近した攻撃隊指揮官は驚愕した。前回以上に戦闘機隊が乱舞していた。

 前回は三百機が迎撃に出たが、今回は全力出撃である。対する米軍の攻撃隊は戦闘機百五十機、艦爆百二十機、艦攻百八機である。

「全機掛かれェッ!!」

 前回と同じ迎撃隊指揮官の納富少佐が突撃命令を出して迎撃隊は空戦に突入した。

 迎撃隊は奮戦したが、残念ながら春島等の滑走路が使用不能になるなどしたが被害は全体の十一%だった。

 それでも米攻撃隊の犠牲は大きかった。戦闘機二十一機、艦爆十九機、艦攻十二機しか帰還出来なかったのだ。

「……司令官、第二次攻撃隊の発艦準備は出来ていますが……」

 デービース参謀長はそう言った。既に各空母の飛行甲板には第二次攻撃隊が準備されていた。

「……一時、マーシャルに撤退しよう」

 スプルーアンスは第二次攻撃隊を出さずに引く事にした。

「これ以上続けても被害は増えるばかりだ」

「了解しました。全艦回頭百八十度ッ!!」

 こうして第五艦隊はマーシャル諸島に引き上げてトラック空襲は終わった。

 しかし、スプルーアンスの勇気ある撤退をホワイトハウスの主は許さなかった。

「海軍は何をしているんだッ!!」

「ですがプレジデント。多数のパイロットが戦死したのです。スプルーアンスの撤退は勇気ある行動です」

「だからどうしたと言うのだッ!! 勝たなくては戦争には勝てんのだぞッ!!」

 ルーズベルトの雷がキングの頭上に落ちた。

「いいか? 必ずマリアナ諸島を占領するのだ。トラックなど放っておけ」

「しかしトラックはジャップの一大根拠地です」

「艦艇もいないのに攻撃して何になるのだッ!! 必ずマリアナを占領するのだッ!!」

 ルーズベルトはそう叫ぶのであった。

「……おのれ、マリアナを取ればB-29の行動半径にジャップの本土の大半が入るのだ。何故それを分からんのだ」

 ルーズベルトは忌々しげにそう呟く。

「それに切り札を早めなければならんな……」

 ルーズベルトはそう思い、電話の受話器を取り出した。

「私だ。ルーズベルトだ、ロスアラモスの原爆研究所に繋げ」











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