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第六十七話






「栗田司令官、出港準備完了しました」

「うむ、全艦抜錨せよ。ヌーメア港を出港する」

「全艦抜錨ォッ!!」

 栗田司令官の命令が各艦に伝えられ、第一護衛艦隊とニッケル等の鉱物資源を満載した輸送船団は錨を上げていく。

「帽振れェッ!!」

 手透きの乗組員達が甲板に出て港で見送りをしていた仲間に帽を振る。

 そして海上護衛隊の第一護衛艦隊と輸送船十隻がヌーメア港を離れたのであった。

「輪形陣を組め。対潜警戒を厳とせよ」

 栗田司令官はそう指示を出した。

「さて……敵さんは出ますかな?」

 唐木参謀長がそう呟いた。

「……出るだろうな。ニューカレドニアは日本が占領したがオーストラリアにも近い。オーストラリアを拠点にしたガトー級潜水艦がいても不思議ではない」

 栗田司令官はそう言った。

 一日目はニューカレドニアの航空隊が上空警戒をしていたが、二日目から第一護衛艦隊自らがする事になった。

「零式水偵が発艦します」

 第一護衛艦隊旗艦出雲の後部から零式水偵が発艦していく。

 また、護衛空母の雲鷹から爆雷六発を搭載した九七式艦攻三機が発艦して上空警戒の任務についた。

「どうなるやら……」

 栗田司令官は上空を飛行する零式水偵を見ながらそう呟いたのであった。

 そして事態が急変したのは1438であった。

「ッ!? 磁気探知機に反応ありッ!! 敵潜水艦ですッ!!」

 日本海軍が開発した磁気探知機(KMX)を搭載した零式水偵が遂にガトー級潜水艦を探知したのである。

「直ぐに旗艦出雲に知らせろッ!!」

 零式水偵の電文は直ぐに旗艦出雲に届いた。

「栗田司令官ッ!! 水偵が敵潜水艦を発見しましたッ!! 二時の方向約四千ですッ!!」

「上空にいる九七式艦攻は直ぐに現場海域に向かえ。総員戦闘配置につけェッ!!」

 空母雲鷹からは追加の九七式艦攻三機が発艦していく。

 そして先に現場海域に向かった九七式艦攻三機は零式水偵と合流した。

『敵潜はこの真下だ』

「了解した。まずは一番機から攻撃をする」

 九七式艦攻が高度を落とした。高度一千から一気に五十メートルまで降下した。

「投下準備完了ッ!!」

「用ぉ意……撃ェッ!!」

 九七式艦攻の一番機から航空機用の六十キロ対潜爆雷六発が投下された。

 六発の爆雷はバシャッと着水すると沈んでいく。

「爆発深度は何メートルにしておいたんだ?」

 操縦士が偵察士に尋ねた。

「百メートルだ。それくらいならガトー級も耐えられない」

 そして六発の爆発が起こった。四機はその周辺を旋回する。

「……こりゃぁまだ生きているな」

 一番機の操縦士は悔しそうにそう言った。二番機が高度五十にまで降下した。

「……こうなれば一気に百二十メートルまでにするか」

 二番機の偵察士は無線で爆雷深度を変更して六発の爆雷を投下して六発の水柱が上がった。

「今度はどうだ?」

 四機が見ている中、海面に木材や油が浮き上がってきた。

「やったぞッ!!」

「万歳ッ!!」

 三機のパイロット達はそう言うが、まだ爆雷を残している三機目のパイロットはまだ海面を見ていた。

「原田飛曹長、引き上げましょう」

 偵察員はそう言う。しかし、原田は高度を下げた。

「原田飛曹長?」

「念のためだ。奴等、偽装しているかもしれん」

「あ……成る程」

 偵察員は納得したように頷いて、爆発深度を設定した。

「準備完了ッ!!」

「用ぉ意……撃ェッ!!」

 三機目から六発の爆雷が投下され、時間をおいて六発の水柱が上がった。

「………」

 四機が見ている中、今度は多くの木材や救命用の浮き輪、そして米兵の死体が多数浮き上がってきた。

「撃沈だッ!!」

「今度こそ万歳だッ!!」

 三機のパイロット達は喜びあいながら母艦の雲鷹に帰還するのであった。

「そうか。敵潜を撃沈したか」

「はい、ですが油断は禁物です」

 栗田司令官の言葉に唐木参謀長はそう釘を刺した。油断すれば史実と同じようになる。

 唐木参謀長はそう思うのであった。

「うむ、全艦に対潜警戒を緩めるなと伝えろ」

 唐木参謀長の言葉に栗田司令官はそう頷いて指示を出した。

「………」

 栗田司令官は無言で上空を見ていた。

 そして艦隊は無事にほぼ安全圏になっているソロモン諸島に到着した。

 その後、ソロモン諸島のブイン基地からの哨戒機の保護を受けながら北上してトラック諸島に到着。

 艦隊は一日停泊して翌日には再び出港。日本には十日で到着するのであった。

 栗田司令官は横須賀基地に到着後、東京の海護司を訪れた。

「お久しぶりです宮様」

「おぉ栗田、久しいな。今日はどうした?」

「は、実は御願いがありまして……」

「ほぅ、願いか……」

 宮様は少々驚きつつ栗田に注いだ御茶を渡した。

「聯合艦隊が保有している特設水上機母艦を海護に配備してほしいのです」

「ふむ、特設水上機母艦をか……」

「今のところはガトー級潜水艦の襲撃は僅かですが、アメリカが本気になれば大量のガトー級を太平洋に投入するのは間違いありません。今の艦隊で輸送船団を護衛するのには少々戦力が足らないのです」

「そのために特設水上機母艦を海護に配備……か。面白い、早速堀と相談してみよう」

「意見具申の採用、ありがとうございます」

 宮様の言葉に栗田司令官は頭を下げるのであった。

 宮様は直ぐ様、柱島泊地で停泊している聯合艦隊旗艦敷島へ向かった。

「これは宮様」

「済まないな堀。実は相談があって来たのだ」

 宮様は堀長官と面会すると直ぐに栗田司令官との内容を切り出した。

「……成る程、特設水上機母艦ですか。それは名案ですね」

 堀長官は乗り気だった。内海で母艦を泳がせるより、外海で泳がせる方が良かったのだ。

「だが、聯合艦隊から水上機母艦が無くなるがいいのか?」

「今の時点で水上機母艦の活躍は難しいです。それなら海護に配備させるのが得策でしょう。勿論、水上機母艦が必要な場合は予め連絡します」

「うむ。その方向でいこう」

 そして特設水上機母艦の移動が決定した。この時、聯合艦隊にいた特設水上機母艦は神川丸を筆頭に約十隻がいた。

 海護配備を受けた特設水上機母艦の艦長達は「自分達の活躍があるなら構わない」と拝命したのであった。

 それから各護衛艦隊に特設水上機母艦が一隻から二隻が付く事になったのである。










御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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