第六十四話
――オアフ島、太平洋艦隊司令部――
「何ッ!? ゴームレーが戦死しただとッ!!」
「は、はい……」
ニミッツ長官の気迫に報告に来た部下は思わずたじろいだ。
「ゴームレーが……戦死……」
ニミッツ長官は無念そうに呟いた。
「……それで戦死の原因は何だ? ニューカレドニアが空襲でも受けたのか?」
「いえ、ニューヘブリデス諸島がジャップの攻撃を受けたため念のためにと艦艇をオーストラリア方面に退避中にジャップのサブマリンの攻撃を受けたようです。そしてゴームレー司令官のアーゴーンに運悪く魚雷二本が命中して……」
「……そうか。分かった、報告御苦労だった」
「は」
ニミッツ長官はそう言って部下を下がらせた。
「……ゴームレーが戦死したのは残念だ……だが、奴等の意図が分かった。やはりオーストラリアを切り離す気だな」
ニミッツ長官は机に置かれた世界地図を見ながらそう呟いた。
「……私ならオーストラリアは捨てるな。フィジー諸島を防衛線にして構築するしかないが……大統領の事だ、オーストラリアを守れと言うだろうな……」
ミッドウェーで空母三隻を撃沈したとはいえ、此方も手痛い損害を与えられている。
「……ハルゼーの機動部隊はまだ動けん……基地航空隊を送るのが妥当だが、果たして大統領がどう動くか……」
ニミッツ長官の呟きは苦悩の言葉であった。
第二機動艦隊からの二派にも及んだ攻撃はニューヘブリデス諸島の基地機能を完全に破壊しており、上陸した海軍陸戦隊や川口支隊の抵抗する力がなかった。
更に上陸前に行われた艦砲射撃で海岸付近の防衛線は吹き飛ばされておりズタズタだった。
「ジャップが上陸してくるぞッ!!」
「生き残っている陣地は反撃しろッ!!」
防衛陣地が次々と射撃を始めるが第二機動艦隊から飛来した攻撃隊が爆撃を開始して防衛陣地を破壊していった。
「司令官、このままでは……」
「……分かっている」
米軍司令部では司令官が苦渋に満ちた表情をしていた。
「……ニミッツ長官に打診してくれ。これから降伏するとな」
司令官はそう決断してニューヘブリデス諸島の米軍司令部に白旗が掲げられたのであった。
降伏を確認した日本軍は直ぐにニューカレドニア攻略作戦を発動し、第三機動艦隊と行動を共にしていた上陸船団はニューカレドニアに進路を向けた。
「よし、第二機動艦隊もニューカレドニアに向かう」
「了解、進路をニューカレドニアに」
「ヨーソロー」
戦艦部隊を残しての進撃であったが、後に戦艦部隊を同行させていればチハの破壊も免れたのではと言われたが結果論に過ぎない。
そして二日後、ニューカレドニア攻略作戦が開始された。
「ジャップだッ!!」
「アタックアタックアタックッ!!」
対空レーダーが第二機動艦隊からの攻撃隊を探知して迎撃隊が出撃しており、攻撃隊を発見したP-38等の戦闘機群が一斉に襲い掛かった。
「アメ公の戦闘機だッ!! 全機攻撃隊を守れェッ!!」
米軍の戦闘機群と攻撃隊の零戦隊が激しい空戦をする中、攻撃隊は攻撃を開始した。
「撃ェッ!!」
急降下爆撃を敢行する彗星が五百キロ爆弾を投下して軍港の倉庫や対空砲を破壊する。
「ジャップめッ!!」
「後方からペロパチッ!!」
彗星の後方からP-38が接近して彗星に機銃弾を叩き込んだ。
「左翼から火災ッ!!」
「脱出するぞッ!!」
二名の搭乗員は脱出し、P-38はまたも後方から忍び寄った零戦に叩き落とされるのであった。
第二機動艦隊も第二次攻撃隊を発艦させ、ニューカレドニアの航空戦力をほぼ叩いたのである。
そして戦艦部隊と上陸船団がヌーメアに近づいて戦艦部隊が恒例の艦砲射撃を敢行した。
「上陸を始める。大発を発進させろ」
遂にニューカレドニアに第二師団、第三八師団等が上陸を開始した。
「来たぞ、ジャップのタイプ97だ」
米軍は新型のM10駆逐戦車を一個中隊をニューカレドニアに配備していた。
M10は日本軍から見えないように隠匿してあった。
「ファイヤーッ!!」
五十口径七六.二ミリ戦車砲が火を噴き、九七式中戦車の前面装甲を貫いた。
「何ッ!?」
「九七式がやられただとッ!!」
先頭車両がやられた日本軍は慌てた。何せ今まで九七式は装甲を貫かれる事はなかったのだ。
「全車落ち着けッ!! 敵の火点を探して反撃するのだッ!!」
中隊長はそう指示を出すが、中隊長車の九七式も装甲を貫かれて撃破された。
「グレイトッ!! ジャップのタイプ97を撃破したぞッ!!」
「休むな休むなッ!! ジャップを全滅させてやれェッ!!」
M10駆逐戦車は更に十二両の九七式中戦車を撃破したが、新たに駆けつけた八九式中戦車乙改がM10駆逐戦車の居場所を発見して漸く落ち着いてきた九七式中戦車と連携して各個撃破したのである。
しかし、この撃破の間に九七式中戦車二両、八九式中戦車乙改三両が撃破された。
「……米軍の兵器開発も進歩しているようだな」
報告を聞いた百武中将はそう呟いた。また、このニューカレドニア攻略作戦で日本軍は新たな兵器を出していた。
「シャーマンだ。一気にやるぞ」
歩兵が接近してくるM4シャーマン中戦車に米軍が開発したバズーカのような物を構えて照準した。
「撃ェッ!!」
歩兵達は一斉に発射してシャーマンに四発が命中してシャーマンは停止した。
史実の試製四式七糎噴進砲のような物である。砲自体は米軍のバズーカを真似ている。
口径は八十ミリで、九十ミリの装甲板を貫通する事が出来た。
バズーカは三式対戦車用噴進砲(別名ロタ砲)と命名されている。
「中々の性能じゃないか」
「流石は噴進砲だな。こいつがあればアメ公の戦車なんぞ怖くないな」
破壊したシャーマン戦車に歩兵達が群がる。
「おい、またやって来たぞッ!!」
「噴進砲の弾はあるのかッ!?」
「まだあるぞッ!!」
「よし、そいつもやってやる。全員散開ッ!!」
歩兵達は隠れて再びシャーマン戦車を三式対戦車用噴進砲で撃破するのであった。
そしてニューカレドニア攻略は当初の予定より二日遅れての占領した。
「参謀長、直ぐに大本営に連絡しろ。チハがやられた事を知らせるのだ」
「分かりました。それとあの捕獲戦車も内地に移送しますか?」
百武中将の言葉に二見参謀長はそう聞いた。実はあの後に撃破したM10駆逐戦車を捕獲していた。
「うむ、損傷が軽いのを送れ」
百武中将はそう指示を出したのであった。
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