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第六十二話






「まず、ニューヘブリデス諸島の上陸作戦には海軍陸戦隊とガダルカナルに駐留する川口支隊、一木支隊を投入してエスピリツサント島とエファテ島を占領して航空戦力を破壊します」

 ニューヘブリデス諸島の二島には米軍の航空部隊がいたのである。

 渡辺戦務参謀は先に二島を占領して航空戦力を日本の物にしようと主張したのだ。

「そしてニューカレドニアには第二師団と第三八師団、南海支隊を投入するんです」

 南海支隊はラエやブナ、ウェワクからの部隊を集結させて約八千人の部隊である。

「そして占領後のニューヘブリデス諸島の航空基地の早期回復のために工兵隊を三個大隊を派遣します」

「……実際は先にニューヘブリデス諸島を占領するのかね?」

「そうなります。基地航空戦力が無ければ上陸船団の迎撃が空母部隊のみとなりますので」

「………」

 軍令部総長に就任した吉田善吾大将は腕を組みながら黙っている。

「米機動部隊はレンジャーのみです。此処は同時作戦をやるべきです」

「ですが、米軍には護衛空母もいます。たかが護衛空母と侮ってはなりません。逆に此方がやられる可能性もあります」

「……やってみようではないか。護衛空母に怯えていては前も進めない」

 吉田総長はそう決断した。異議を唱えていた将宏も吉田総長がそう決断するなら構わないという表情をしていた。

「陸さんには申し訳ないがまた輸送船の手配と第十七軍の出撃準備を御願いします」

「分かりました」

 吉田総長の言葉に辻中佐はそう頷いて作戦は決定された。

「河内君、例のソ連尉官はどうするのかね?」

 会議終了後、吉田総長は将宏に聞いてきた。名目上、タルノフ大尉は将宏の監視に置かれているため聞いてきたのだ。

「連れて行きます。要は陸軍の兵力を見せなければいいんです。ソ連海軍には航空作戦を見せてソ連に空母保有を主張すればスターリンも海軍に予算を取らねばなりませんし、シベリアに配備するのも若干は少なくなるかもしれません」

「ふむ……それなら構わないんだが、向こうがハニートラップを仕掛けて来るかもしれんから一応は気を付けてくれ」

「分かりました。肝に命じておきます」

 将宏は吉田総長に敬礼をして大本営を後にするのであった。

 次期作戦が決定した日本軍は作戦の準備に入ったが、対するアメリカはどうだったであろうか?




 二月十日、ハワイのオアフ島パールハーバー基地に四隻の大型空母と四隻の軽空母が来港した。

「……漸くエセックス級空母が完成したか」

「はい、他にも続々と竣工する予定であります」

 オアフ島の太平洋艦隊司令部ではニミッツ長官とスプルーアンス中将が話をしていた。

「ところでハルゼーはどうした?」

「は、来港した空母エセックスに乗艦しています」

「……しょうがない奴だな。まぁハルゼーにしてみれば漸く玩具が到着したからな」

 ニミッツ長官は苦笑しながらそう呟いて窓の方を見た。

「キヒヒヒ、此れが新しい玩具か……」

 その頃、ハルゼー中将は空母エセックスの艦橋にいて発着艦訓練を見ていた。

 航空機はワイルドキャットやドーントレスではなく、新型戦闘機『ヘルキャット』、艦上爆撃機『ヘルダイバー』等であった。

「最高じゃないか……こいつらでジャップを皆殺しにしてやるぜッ!!」

 発艦していくヘルキャットを見ながらハルゼーはそう叫ぶのであった。

 一方、ホワイトハウスではルーズベルトとキング海軍作戦部長、スチムソン陸軍長官が話をしていた。

「……漸く我々の二回目の反撃か」

「ガダルカナルでの反撃は残念ながら準備不足で失敗しましたが今回は成功するでしょう」

「海軍はエセックス級空母群に陸軍はM10駆逐戦車にM36駆逐戦車か……上出来だ」

 ルーズベルトは報告書を見ながらニヤリと笑う。

 海軍はエセックス級空母を六月までに十二隻竣工する予定であり、アイオワ型戦艦も竣工していた。

 陸軍はM4の改修型(ジャンボ等)を出しつつティーガーやチハ対策としてM10駆逐戦車、M36駆逐戦車の大量生産に移行していた。

「ニューカレドニアには一個中隊だけですがM10駆逐戦車を配備しています。もし、ジャップがニューカレドニアに侵攻すればジャップのチハは大損害を出すでしょう」

 スチムソン長官は自信満々でそう語った。実際にニューカレドニアに上陸した九七式中戦車はM10駆逐戦車の待ち伏せで八両が撃破されるのであるがそれはまだ先の話である。

「ジャップの死体が見れるのもそう時間は掛からないな」

 ルーズベルトはニヤリと笑うのであった。




 そして場所は再び日本に戻り、将宏は前田少佐と共に陸軍の富士裾野演習場にいた。

 ちなみにタルノフ大尉は横須賀基地に来港した陸奥にヒルダと共に乗艦していた。

「……此れが新しいチハですか?」

「はい、新しいチハです」

 将宏の指摘に技術者は自信満々に答えた。二人の目の前に鎮座している新しいチハ――三式中戦車は前型のチハに比べてやや大きかった。

 それもその筈であり、戦車砲はドイツから輸入してライセンス生産されたアハトアハト(八八ミリ戦車砲)であったからだ。

 なお、名前に関してだが新型戦車にはチハの名称を受け継いでいく事が決定している。(ただし八九式中戦車乙改は別)

「装甲は傾斜装甲も取り入れて最大で八六ミリになっています。速度は四二キロで四五〇馬力の空冷ディーゼルを搭載しています」

 技術者はそう二人に説明をしていく。

「生産の方はどうなっていますか?」

「既に一個中隊分の生産は完了しておりまして、次期作戦のニューカレドニアに投入する予定だと服部大佐は言っています」

「……服部大佐め、やけに会議中は反論しなかったのはこのためか」

 将宏は苦笑した。

「太平洋方面は主に中隊長車に配備する予定だと」

「……やはりインフラだな」

 陸軍は本土決戦も想定して全国の橋は全て五十トンに耐えられるように強化したり再建築をしていた。

 これにより戦後日本の戦車開発は全て五十トン未満の戦車になるのだがそれは余談である。

「四式の方はどうですか?」

「大分育ってはいますが、まだ制式採用されるのは程遠いです……」

 四式の開発が中々進まないのは戦車砲であった。四式は対ソ連戦を想定して九二式十サンチ加農砲を戦車砲に改修しているがトン数のネックもあった。

 逆に四式砲戦車の開発は順調であったりする。

「まぁ気長に待とうとするか。案外ドイツがソ連を駆逐するかもしれんしな」

「それもそうか」

 そう言って三人は笑いあうのであった。









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