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第五十九話






「どうやら基地航空隊は上手くカルカッタを叩いたようだな」

 第一機動艦隊旗艦大鳳の艦橋で司令長官の大西中将は通信紙を見ながらそう呟いた。

 第一機動艦隊は大鳳以下雲龍、天城、飛龍、千歳、千代田の六隻の空母で編成されていた。

 第一機動艦隊はセイロン島を出撃してインド西海岸付近まで進出していた。

 既に各空母の飛行甲板には爆装した彗星や天山が翼を連ねていた。

「大西長官、攻撃隊は何時でも発艦出来ます」

「攻撃隊発艦せよッ!!」

「攻撃隊発艦ッ!!」

 発着艦指揮所から白旗が振られて、チョークを取り払われていた零戦から発艦を開始した。

 飛行甲板を蹴って大空へと舞い上がる零戦は最終形態の零戦五三型である。

 エンジンは金星で最大千八百三十馬力を発する史実にはない航空エンジンであった。元々は陸軍の百式司偵の高速化を目指すために三菱が開発したのである。

 戦前にドイツやアメリカ等からカネにカネを言わせて大量に工作精密機械を購入、輸入しており折しも日本の航空産業は史実より二倍は進んでいた。

 そのために史実には生まれなかったこの航空エンジンが誕生したのである。

 この金星エンジン七四型は零戦の他にも彗星二二型、百式司偵、対潜哨戒機東海に搭載される。

 また、零戦五三型は小型空母や基地航空隊で主として運用される事になる。その理由は空母部隊に零戦の後継機である十五試艦戦烈風が配備されるからだ。

 烈風の試験飛行は間もなく終わるため大型空母に搭載されている零戦は基地航空隊へ回される予定だ。

 なお、中型空母には烈風は搭載出来ないため川西が中型空母用の艦戦を開発したのが陣風である。

 陣風は主に中型空母と本土防空隊で使用される予定である。烈風の重量だと中型空母の雲龍型が発艦出来ない恐れがあるために急遽開発したが、テスト飛行をしたヒルダ曰く「どれも良好だ」との事だ。

 順調に行けば両機とも四月には制式採用されて量産態勢に移行する。そして生産されていた零戦三二型や二一型は生産中止される。二一型は既に生産が中止されて五三型の生産を重点にしている。

 それは兎も角、零戦五四機、彗星七二機、天山七二機は無事に発艦して一路ボンベイへと向かった。

「電探に注意しておけ。いくらイギリス軍でも哨戒機は出している」

 大西長官はそう指示を出した。そして定期便のようにカタリナ飛行艇が飛来してきたが直掩の零戦隊が袋叩きで撃墜させた。

 ボンベイのイギリス軍は大慌てであった。

「急いで迎撃隊を出せッ!!」

「いや、敵機動艦隊攻撃に向かわせるべきだッ!!」

 ボンベイの基地ではそのような怒号が響いていた。イギリス軍もまさかボンベイを空襲するとは予想していなかったのである。

「急げ急げェッ!!」

 エプロンから滑走路に出されたスピットファイヤーやハリケーンが次々とプロペラを回して離陸していく。

 それでも数は約三十機と迎撃するのには少なかった。

「全機、敵戦闘機のお出ましだ。歓迎してやれッ!!」

 大鳳戦闘機隊長の板谷少佐はそう叫んで列機を率いて格闘戦に移行した。

 その間に攻撃隊が抜けてボンベイ上空へと躍り出た。

「撃て撃てェッ!! ジャップを撃ち落とせェッ!!」

 ボンベイ市内から無数の高射砲が対空射撃をしてボンベイ上空は黒煙に包まれる。

「全機突撃せよッ!! 目標は敵軍港施設とインド門だッ!!」

 攻撃隊総隊長の関少佐はそう指示を出して操縦桿を前に押して急降下爆撃に移った。

 関少佐の眼下にはボンベイ市のシンボルであるインド門があった。

「用意……撃ェッ!!」

 関少佐は高度八百で五百キロ爆弾を投下して上昇した。

「命中ですッ!!」

 偵察員の言葉に関少佐が後方を振り向くと、インド門は半壊されており残りの二機の彗星も五百キロ爆弾をインド門に命中させて完全に破壊したのである。

 さて、水平爆撃隊を率いていた楠見少佐はボンベイ港の上空にいた。

「投下準備ッ!!」

「投下準備完了ッ!!」

 楠見少佐の中隊は港の倉庫とその付近に接接岸していた輸送船に照準した。

「撃ェッ!!」

 高度三千から天山に搭載された二百五十キロ爆弾二発の計十八発が投下された。

 投下された二百五十キロ爆弾は倉庫群と輸送船に命中して炎上させた。

 第一機動艦隊から発艦した攻撃隊は徹底的にボンベイの軍港施設を破壊するのであった。

「大西長官、関少佐機より入電です。ボンベイの軍港施設は粗方破壊したようです」

 通信参謀がそう言いながら大西長官に通信紙を渡した。

「うむ……南雲さんに打電しておけ。ボンベイは叩いたとな」

「分かりました」

 第一機動艦隊は電文を発信して南遣艦隊は受信するのであった。

「大西がボンベイの攻撃に成功したようだな」

「それでは……」

「矢野参謀長、カルカッタ上陸作戦を決行するぞ」

 翌朝、カルカッタの沖合いに南遣艦隊が姿を現した。

「ジャップの艦隊だッ!!」

「急いで攻撃隊を出せッ!!」

 カルカッタ航空基地は使用不能であった。連日に渡り、ビルマから発進した陸海の攻撃隊によって基地機能は破壊尽くされていたのだ。

「三式弾装填完了ッ!!」

「全艦砲撃開始ィッ!!」

「撃ちぃ方始めェッ!!」

 旗艦八雲以下の重巡が一斉に艦砲射撃を開始した。

 三式弾はイギリス軍の守備陣地を破壊したり防衛線をズタズタにしていた。対するイギリス軍は反撃しようとしていたが対艦砲は射程が短くて南遣艦隊が航行する海域まで届かなかった。

 上空には零観が飛行していて対艦砲を見つけては発信して南遣艦隊に知らせ、艦砲射撃で破壊していた。

「南雲長官、大発が発進するようです」

「うむ、艦砲射撃を中止せよ」

 一時間にも及んだ艦砲射撃は上陸部隊を載せた大発が来た事で中止となった。

 第一派上陸には戦車揚陸艦も含まれて、中では九七式中戦車と八九式中戦車乙改が準備していた。その上空では第三機動艦隊から発艦した零戦隊が飛行している。

 そして最初に戦車揚陸艦が浜辺に乗り上げて八九式中戦車乙改を吐き出した瞬間、生き残っていたイギリス軍守備陣地が反撃を開始したのである。

「十時に対戦車砲だッ!!」

 砲搭が旋回した時に対戦車砲弾が乙改の側面に命中して乙改は停止した。

「くそッ!! 敵討ちだッ!!」

 別の乙改が榴弾を撃って対戦車砲を黙らせた。上空から零戦隊が守備陣地に機銃掃射していく。

「敵守備陣地を潰せッ!!」

 歩兵部隊を支援するため戦車隊は守備陣地を榴弾で吹き飛ばす。

 そして大発部隊が浜辺に乗り上げて歩兵部隊を吐き出したのである。








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