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第五十七話






「それではカルカッタ攻略には第二機動艦隊を当てるのか?」

「いえ、第三機動艦隊だけでいいと思います。ビルマには陸軍の飛行隊もいますから陸軍さんにも活躍してもらいませんと」

「成る程」

 将宏の言葉に辻中佐は頷く。

「問題は補給です。ビルマとインドの間には大河や数千メートルの山々があります」

「……史実のインパールにはさせたくないな」

「一応、占領後には零式輸送機がカルカッタに輸送すると計画しているが……」

「『窮鼠猫を噛む』です。インド防衛には何が何でもイギリス軍も死力を尽くすでしょう」

 結局、海上からの補給が途絶えた場合は史実のインパール作戦でイギリス軍が行った空中補給でやるしかないと決定した。

 陸軍は直ぐに準備に入った。カルカッタ攻略には陸軍から五個師団、二個戦車連隊、一個飛行集団が集められた。

 海軍は第三機動艦隊と上陸船団を護衛する南遣艦隊、海上護衛隊から一個護衛隊(護衛駆逐艦六隻)が集められた。

 更に作戦にはチャンドラ・ボース率いるインド国民軍も参加していた。

 また、航空援護としてビルマには陸軍の二個飛行集団、海軍から二個航空隊が集結した。

 無論、イギリス軍も徐々にだが情報を掴んでいた。ビルマに潜入したスパイから日本軍の航空部隊が集結していたのだ。

 イギリス軍は爆撃隊を編成してビルマのマンダレーを爆撃しようとしたが、陸軍の防空隊の鍾馗に阻まれて効果は然程無かったのである。

「ところで辻中佐、戦車の開発はどうなっていますか?」

「フッフッフ、順調に育っているよ河内君」

 辻中佐が何かを企んでいるような表情をしながらそう言った。

 ドイツからライセンス生産されているアハトアハトを搭載した仮称三式中戦車の試作車両が完成して試験を行っていた。

 更に陸軍は強力な戦車を開発していた。それが九二式十サンチ加農砲を戦車砲にした仮称四式中戦車である。

 この戦車は仮想敵国をソ連にした結果である。また、この仮称四式中戦車の車体を流用した仮称四式砲戦車も開発中である。

 この仮称四式砲戦車の砲は海軍の四五口径十年式十二サンチ高角砲を搭載予定である。

 艦艇の改装等によって装備から外されていた十二サンチ高角砲であったがたまたま海軍側から十二サンチ高角砲提供の打診があったので陸軍も高角砲提供を承認したのである。

 この砲戦車はドイツ軍の自走対戦車砲ホルニッセのようにオープントップの戦闘室が配置されている予定である。

「急ぐように指示は出してあるがどうなるかはまだ未定だ」

「なるべく急ぎましょう。今のところはドイツが負けていませんが、もしドイツが負ければ次にソ連が狙うのは満州です」

「うむ」

「だがその物資や鉱石を運ぶための輸送船の大量建造中だと言う事を忘れていかんでごわす」

 神大佐が釘を刺すように言った。陸海軍は南方地帯の輸送のために戦時標準船を建造していた。

 戦時標準船は史実同様に二重底や隔壁を廃止したりしていたが、機関は低出力の物ではなく睦月型の機関を製造して搭載していた。

 これにより戦時標準船の最大速度は約十六ノットになり史実と比べれば輸送の日数は少なかった。

 更に開戦初期に南方で鹵獲した敵輸送船をも使用していた。何せ船の数が足りないのである。

 ガ島攻防戦で鹵獲した敵輸送船は海兵隊員を載せた船だけを返還して残りは輸送船として南方や内地を行ったり来たりしていた。

 一応は船体が切断しないように補強工事はしてある。

「旧式の輸送船は退役して解体しています。資材の半分は陸軍に渡す予定です」

 将宏はそう言った。脚が遅い輸送船がいては海中からガトー級潜水艦から雷撃をされてしまう心配もあるし、脚が早ければ海護も護衛しやすかった。

「海護さんには何としても護衛してもらいたいです」

「分かっております。航路上の付近にある航空基地と連携をして対潜哨戒を厳にしてます」

 海護司から派遣された大井中佐はそう言った。海護には特設水上機母艦も配備されており輸送中の上空には三機の零式水偵が常時警戒飛行していた。

「うむ、取りあえずは輸送をしていれば製造も出来るしガソリンも手に入る」

 辻中佐は満足そうに頷いた。

 そして作戦開始日は来年の一月二十日となった。陸軍は早速五個師団、二個戦車連隊、工兵隊の手配に入った。

 なお、ガダルカナル島に駐留している第十七軍は外れさていた。第十七軍はニューヘブリデス諸島やニューカレドニアの攻略のためにガダルカナル島へ駐留していたのだ。

 着々と準備をしていた日本軍であったが、それに異議を唱える者がいた。

 第一機動艦隊司令長官大西瀧治郎中将である。

「是非とも第一機動艦隊も参加させて下さいッ!!」

「……しかしな大西。第一機動艦隊は言わば米機動艦隊との対決に備える決戦艦隊なんだ。いくら大鳳以下三空母が戦列化したと言ってもな……」

「ですがそのせいで第一機動艦隊は他の乗組員から『居残り艦隊』と言われているのですぞッ!! 何のための第一機動艦隊なんですかッ!!」

「………」

 大西中将の言葉に堀長官は頭を抱えた。確かに堀長官もそのような事を聞いていたが実際に決戦艦隊なのは確かである。

 GF司令部として第一機動艦隊は大鳳型二番艦の天鳳が就役(1943年九月の予定)するまでは米機動艦隊の動きがあった場合を除いて出撃させるのは控えようと考えていた。

 しかし、第一機動艦隊の乗組員にしてみれば他の艦隊は活躍しているのに自分達は負け戦に近いミッドウェー海戦以後は参戦していないのだ。乗組員のストレスが溜まるのも無理はなかった。

「御願いします長官ッ!! 出撃許可をッ!!」

 大西中将は堀長官にそう迫った。

「……分かった。出撃を許可しよう」

 堀長官は苦渋の末にそう決断したのである。それからはてんやわんやであった。

 何せ第一機動艦隊が急遽参加するとの事であり、攻撃目標を何処にするかが難点であった。

「なら第一機動艦隊は陽動の意味でムンバイ付近を攻撃しては如何ですか?」

 急遽の作戦会議で将宏はそう発言した。ムンバイは今まで日本軍の攻撃目標になった事はなく、無傷な軍港施設があった。

 そして会議の結果、ムンバイ攻撃が追加決定したのである。

 これを聞いた大西中将は満足そうにホッとしたのであった。彼自身も第一機動艦隊の温存は理解していたが、彼の元に毎日若手の飛行士官達がやってきて出撃を求めていたのだ。

 流石の大西中将も若手の熱に押さえられず堀長官に直談判をしたのである。

「兎も角、これで出撃は出来る。飛行士官達も喜ぶが儂自身としては新型防空艦の性能を見たいがな」

 大西中将は古村参謀長にそう洩らした。

 そして年が明けた。









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