第五十六話
今日はB-25の東京空襲と山本五十六元帥戦死の日ですね。
そしてつい紺碧の○隊を見ている(笑)
――ウラル山脈要塞――
「……それではモスクワは今にも陥落しそうだと言うのかね?」
「ダー、同志スターリン」
独ソ戦は熾烈を極めていた。
「ちょび髭伍長めッ!! 新型戦車を出してきおる……」
ドイツ軍の兵器開発は史実よりかなりの速度で上がっていた。
原因はやはり冬戦争で活躍した九七式中戦車を日本から購入したせいであろう。
十二両を購入したドイツ陸軍は自軍より遥かに強力な九七式中戦車を見て「ヤーパンを侮るな」という言葉が上層部で飛び回った。
それらは勿論、ヒトラーにも届いており九七式中戦車並かそれ以上の戦車を開発する事を命令した。
折しも十二両のうち三両は独ソ戦に参加しており、歩兵部隊からは「三号戦車よりヤーパンの戦車が頼れる」とまで噂された。
そして九七式中戦車を模範とした四号戦車(短砲身ではなく、最初から長砲身のH型である)が登場して、それから直ぐにアハトアハトの高射砲を搭載した六号戦車『ティーガー』が登場するのである。
ティーガーは史実同様に速度が遅かったので主力戦車というよりやはり史実同様に火消し部隊として運用されている。
そして主力戦車として期待されたのが五号戦車『パンター』である。
やはりパンターも史実同様に生産性が少なく、主力戦車となる事が出来ずにあったがヒトラーは一時的に戦車の生産をパンターのみに絞る決断を下した。
これによりパンターの生産は上がり、戦線にパンターの数を増やす事が出来た。これで独ソ戦はドイツに軍配が上がると思われた。
しかし、独ソ戦は一進一退の攻防を続けていた。
――ベルリン、総統官邸――
「それで……スターリンがいるウラル山脈要塞には行けているのか?」
「総統……それは……」
報告を述べる部下は歯切れが悪い。それを見かねた陸軍総司令部参謀長のクルト・ツァイツラー歩兵大将が口を開いた。
「閣下、ブラウ作戦ですが兵力の損耗が激しすぎます。此処は漸く片付いたアフリカ戦線からの部隊到着まで進軍は見合わせるべきです」
史実ではエジプトを落とせず、降伏したアフリカ装甲軍であるが何とエジプトを占領して北アフリカ戦線は終了していたのである。
これはインド洋を押さえた南遣艦隊と第二潜水戦隊の通商破壊作戦が功を成していたからである。
イギリス軍は輸送作戦を敢行していたが、アッヅ環礁を基地とする九七式飛行艇や二式大艇に捕捉されて幾度となく輸送船は深い海底に沈められていたのだ。
これによりエジプトのイギリス軍は弾薬、兵器不足となり士気は最低にまで低下した。
それにジブチまで日本軍に占領されているので物資が来る事がなかった。
これを聞いたロンメルは直ちに総攻撃を開始、各所でイギリス軍を撃破していった。
そしてモントゴメリーは遂に降伏を決意し、イギリス本国に打診した。
チャーチルも苦悩の末にモントゴメリーを脱出させてからの降伏を了承し、十一月二十日にカイロで降伏調印式が行われるのであった。
そしてアフリカ装甲軍の大半の兵力は東部戦線に向けて移送中であったのだ。
「……やむを得まい。アフリカ装甲軍が来るまで進撃は中止しよう」
ヒトラーは十分に考えた末にそう決断するのであった。
東部戦線の戦闘は一時的に停止したのをスターリンは見逃さなかった。
「これはチャンスだ同志諸君。シベリアにいる部隊を移動させて対ドイツ戦に展開させるぞ」
スターリンは直ぐに指示を出した。
「ですが同志スターリン。シベリアはヤポンスキーに対する備えであります」
モロトフはそうスターリンに具申する。
史実では日ソ中立条約が結ばれている日本とソ連であるが、この世界では結ばれていない。
そのためシベリアにいる部隊を対ドイツ戦に向かわせる事が出来ていなかったのだ。
「むぅ……それならば監視の意味で日ソの友好を願って士官を派遣しようじゃないか」
スターリンはそう言った。
「……上手くいくでしょうか?」
「ヤポンスキーとて馬鹿ではない。断ればアメリカと我がソ連との戦闘に突入するかもしれんのだ。結局は受け入れる」
スターリンは日本の状況を分かっていた。日本側も、もしソ連が対米戦中に満州になだれ込めば押さえきれないと判断していた。
そのために満州とソ連の国境線にはいくつもの地雷陣地を構築したり防衛線を構築している。
「どう返すかは日本次第だ」
スターリンはニヤリと笑う。転んでもただでは起きないようである。
そして対する日本はというと……。
――大本営――
「だからカルカッタ攻略をすべきだッ!! 既にボース氏にはカルカッタ攻略を言ってしまっているんだッ!!」
「そうだッ!! 此処はインドを叩いてドイツの援助をすればいいッ!!」
「確かにカルカッタ攻略は重要だ。だが、ガダルカナルを忘れたのかッ!! 米軍の侵攻が未知数な上に攻略地を広げたら補給はどうなるんだッ!!」
「早めにFS作戦を決行してニューカレドニア、フィジー諸島を占領すればオーストラリアも降伏するはずだ。それまで待ってもらえばいいだろうッ!!」
「……これは何ぞ?」
休暇を終えた将宏と前田少佐が大本営に向かうと白熱した会議が行われていた。
「おぉ河内少佐、いいところに来た。海軍の馬鹿どもにカルカッタ攻略の良さを教えてやってくれッ!!」
「それは此方の台詞だッ!! 陸軍の馬鹿どもはガダルカナルを戦訓にしておらんッ!!」
「え? ちょ、ちょい待ちぃな……」
将官達の捲し立てに将宏は慌てる。
『さぁ、どれが良いんだッ!!』
「……やかましいわおんどりゃァッ!!!」
遂に爆発した将宏であった。
「……で、インド攻略の前哨戦になるカルカッタ攻略とFS作戦をどちらを優先するべきかです?」
「その通りだ」
陸軍代表として辻中佐が頷いた。対する海軍代表は神大佐である。
「自分なら……カルカッタ攻略ですね」
将宏の言葉に服部大佐がニヤリと笑い、神大佐が若干の落胆を見せる。
「それは何故でごわすか?」
「イギリスのアキレス腱を破壊するからです。勿論、FS作戦は重要です。しかし、肝心の第一機動艦隊はまだ編成途中です」
第一機動艦隊は旗艦に竣工したばかりの大鳳にして雲龍、天城も戦列化していた。更に防空駆逐艦秋月型も六隻が第一機動艦隊に配備されていた。
「飛龍も練習空母としてやっていますが恐らく航空隊の練度は新規パイロットも考えますと史実のい号作戦並と考えたらいいでしょう」
「成る程、訓練訓練また訓練とするでごわすか」
「そうです。カルカッタ攻略には第一機動艦隊もと考えてましたが、大鳳型二番艦の天鳳が就役するまで待つべきかもしれません」
将宏はそう言った。
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