第五十四話
今朝の地震には驚きました。いきなり母親に叩き起こされましたし、慌てて家の外に出ましたが電線が揺れてるだけでした。この地震で机の周りがぐちゃぐちゃで、プラモの被害が多かった……orz
「海軍ばかりに任せてはならんッ!! ガ島の最後は我々陸軍で終わらしてやるのだッ!!」
野戦指揮所で第十七軍司令官の百武中将はそう叫んでいた。
「部隊の展開はどうか?」
「既に展開は完了しております。後は閣下の御命令のみです」
大本営から派遣された辻中佐はそう言った。
「うむ……全軍に発信ッ!! 突撃せよッ!!」
百武中将はそう叫ぶのであった。
「牟田口司令官ッ!! 突撃せよの電文ですッ!!」
「よし、戦車部隊は前進ッ!! 歩兵部隊はその後方から付いて来るんだッ!!」
戦車部隊司令官である牟田口少将はそう命令を出す。牟田口少将の九七式中戦車は現地で追加装甲をしており、前部だけで八五ミリになっていた。
九七式中戦車は次々と陣地から発進していき、マタニカウ川を渡る。マタニカウ川周辺は日本側の勢力圏であり、史実のように海兵隊がパトロールする事などはなかった。
戦車部隊の後方に展開する歩兵部隊は歩兵第二八連隊と川口支隊である。第二師団と第三八師団、海軍陸戦隊は血染めの丘(ムカデ丘)に向かっていた。
そして0130。
陸軍の重砲部隊が砲撃を開始した。重砲部隊は九六式十五サンチ榴弾砲と機動九一式十サンチ榴弾砲各十二門ずつである。
野砲は機動九〇式野砲であり、三六門が揚陸されていた。また、歩兵部隊に随伴する四一式山砲二八門、九七式曲射歩兵砲と九二式歩兵砲多数があった。
「ジャップが総攻撃をするぞッ!! 重砲部隊も撃ち返せッ!!」
バンデグリフト少将は飛行場に落下して炸裂する砲弾を見ながらそう叫ぶ。
リー少将の戦艦部隊が壊滅したのは既に知っていたので海兵隊は必死だった。
「……来る。ジャップの戦車だッ!!」
ルンガ川(日本名大川)の陣地にいた海兵隊員は大きくなっていくエンジン音に頬から汗を流した。
「此方にはM4がいるんだ。ジャップの戦車なんざ直ぐに破壊してやる」
そしてルンガ川に一個中隊の九七式中戦車が現れた。
「ファイヤーッ!!」
M4中戦車の七五ミリ戦車砲が火を噴く。しかし、九七式中戦車の前部装甲を貫く事はなかった。
「今度は此方だぞアメ公ッ!!」
九七式が停車して一式徹甲弾を発射した。一式徹甲弾はM4中戦車の前部装甲を貫き、M4中戦車が動きを停止した。更に後続の九七式中戦車が到着して米軍の守備陣地に榴弾を放って海兵隊を吹き飛ばした。
「総員突撃準備ッ!!」
それを見ていた川口支隊の歩兵第一二四連隊長の岡大佐は突撃準備をさせた。
岡大佐の後ろでは部下達が九九式短小銃に三十年式銃剣を着剣している。
「連隊長、あの三ヶ所の陣地はチハが片付けました」
第一大隊長の国生少佐が敵陣地を見ながらそう具申した。岡大佐もそれを確認する。
「よし、あの三ヶ所の陣地に向かって突撃するッ!! 総員突撃せよッ!!」
岡大佐は軍刀を陣地に向けた。
『ウワアァァァァァァーーーッ!!!』
その瞬間、歩兵第二八連隊、川口支隊の兵士は一斉に雄叫びを上げて突撃を開始した。
「ジャップのバンザイ突撃だッ!!」
「撃て撃て撃てェッ!! 奴等を近付けさせるなッ!!」
海兵隊も負けじと撃ち返す。そこへM4中戦車を片付けた九七式中戦車隊が榴弾を発射して海兵隊員を吹き飛ばす。
同じ頃、血染めの丘に接近していた第二師団と第三八師団、海軍陸戦隊も雄叫びを上げて突撃を敢行していた。
「突撃ィッ!!」
『ウワアァァァァァァーーーッ!!!』
月の光りで見える三十年式銃剣や軍刀を見た米海兵隊は非常に恐れた。
「撃ちまくれェッ!!」
海兵隊は射撃をするが、九七式曲射歩兵砲や八九式重擲弾筒が砲弾を発射して陣地を潰したりして海兵隊の動揺を誘った。
そして日本軍は海兵隊の第一防衛線を突破し、第二防衛線も突破した。これで残りは第三防衛線だけである。
「何としても防衛線の突破を阻止するんだッ!!」
バンデグリフト少将は予備に置いていた二個大隊を血染めの丘に向かわした。しかし、そこへ新たな伝令がバンデグリフト少将を驚愕させた。
「ルンガ防衛線が突破寸前だとォッ!!」
ルンガ防衛線は五重にまで防衛線が構築されていたが戦車部隊の支援もあって既に第三防衛線が突破されており、第四防衛線が突破されるのも時間の問題であった。
「司令官ッ!! このままでは……」
「……分かっている……」
バンデグリフトには決断の時が迫っていた。それから十五分後、新たな伝令が司令部に駆け込んできた。
「丘の第三防衛線が突破されましたッ!! ジャップは目の前ですッ!!」
「………」
バンデグリフトはゆっくりと立ち上がった。
「参謀……残念だが……降伏しよう」
バンデグリフトはそう決断した。司令部には白旗が掲げられた。時間は0215。
バンデグリフトはニューカレドニアの南太平洋艦隊司令部に「これより降伏する」と打電した。
そして各前線では海兵隊の陣地から白旗が掲げられたのであった。
「堀長官、米海兵隊が降伏しました」
通信紙を持ってきた通信参謀がそう言って堀長官に渡した。
「……漸くの一段落だな」
「そのようですな。問題はまだまだありますが……」
「……捕虜の海兵隊か……さてさてどうする事やら……」
「まぁ今は勝利に喜びましょう」
「そうだな」
二人はそう言い合うのであった。
翌日、日米の被害が徐々に分かってきた。日本側は約千五百名の死傷者を出した。それに九七式中戦車一両が地雷にやられてそこへ集中砲火でやられた。
米海兵隊は一万三千人中約三千名の死傷者を出していた。
捕虜の数で日本軍は大いに悩ませる事になった。暫くはテントで生活する事になる。
そして日本軍を一番喜ばしたのは大量の物資であった。輸送船団も第八艦隊によって捕獲されていた。
特に航空隊用に輸送された多数の航空爆弾を入手したのだ。
え? 誰かのと似てる? ……まぁ気にするな。結果的に性能は良いんだよ。
更に航空機も多数入手しており、特にB-17は長期的に試験されたりする。
第一戦隊はトラックに戻り、第八艦隊は当分ガダルカナルで釘付けになる。
また、重巡磐手の引き揚げのために工作艦明石がガダルカナルに派遣された。
「取りあえず、ガダルカナル島攻防は無事に終了したわけだ」
堀長官は二式大艇で一足早くにトラックに戻っていた。
「一番の問題は海兵隊の捕虜ですね。バンデグリフト少将以下約一万人以上はいるんですから」
将宏はそう呟いた。
「……なら返そう」
『??』
そう呟いたのは山口中将であった。
「食糧も減るし邪魔な存在なんだ。捕獲した輸送船に乗せて返したらいいんだ。此方の捕虜と交換でな」
山口中将はそう言ったのである。
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