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第五十三話






 2300。サボ島沖から侵入した第一戦隊と第八艦隊は砲撃準備をしている途中であった。

「エスペラント岬の灯火確認しました」

「うむ、第八艦隊は?」

「既にガダルカナル島沖に到達しているでしょう」

 堀長官に宇垣参謀長はそう言った。しかし、第八艦隊はある艦艇を発見していた。


「敵艦ッ!! 大型ですッ!!」

「何ッ!?」

 ヘンダーソン飛行場を三式弾で艦砲射撃を敢行しようとしていた第八艦隊にリー少将の戦艦部隊が接近してきたのだ。

「第一戦隊に打電ッ!! 『我、敵戦艦部隊ト遭遇セリ』ッ!!」

 三川中将が叫ぶと同時にワシントンが射撃を開始した。

「全艦回避運動ッ!! 砲雷撃戦用意ッ!!」

 ワシントンから放たれた第一射目の砲弾は外れた。その頃、第一戦隊も第八艦隊の緊急電を受信して海域に急行していた。

「艦長、探照灯だッ!!」

「で、ですが長官。それでは敵弾が大和に集中します」

 艦長の大野大佐が堀長官に具申する。

「艦長、大和ほ何のために生まれてきたんだ? 敵戦艦と戦うためだろう?」

「……探照灯点灯ッ!!」

 堀長官の言葉に大野艦長はそう指示を出した。



「磐手被弾ッ!!」

 見張り員が叫ぶ。ワシントンの砲弾が重巡磐手の艦尾に命中したのだ。

 この命中で磐手は舵をもやられてしまい進路はクルツ岬付近の海岸に固定した。

 後に磐手はこの海岸で擱座して第十七軍が突撃をする時に支援砲撃をするのであった。

「三川長官ッ!! 大和が探照灯を……」

「堀長官……囮になるつもりですか……」

 探照灯を付けながら接近してくる第一戦隊に三川中将はそう呟いた。

 そしてワシントンに座乗しているリー少将は接近してくる第一戦隊に思わず喜んだ。

「噂のヤマト型かッ!! 照準をヤマトにしろッ!!」

 ワシントンとサウスダコタは照準を第一戦隊に合わせた。

「砲撃開始ィッ!!」

「撃ちぃ方始めェッ!!」

 しかし第一戦隊はそれより前にワシントンとサウスダコタに照準しており、堀長官が攻撃開始を命令して直接砲撃の指揮をとる宇垣参謀長が叫んだ。 単縦陣の先頭の大和の前部五一サンチ三連装砲二基から既に装填されていた三式弾を発射した。

 日米艦隊の距離は約七千メートル。六発の三式弾はほぼ外れる事なくワシントンに命中して甲板を火の海にさせた。

「な、何だッ!?」

「ジャップの砲撃で甲板が火の海ですッ!!」

 先手を取られた。そう確信したリー少将である。後続のサウスダコタが大和に砲撃を開始して砲弾が左舷高角砲群に命中した。

「左舷五番高角砲被弾ッ!!」

 直撃したのは左舷五番高角砲で五番高角砲員は勿論跡形も無く吹き飛んでいる。

「衛生兵ェッ!!」

 大和が第二射をした。照準はサウスダコタである。

「命中確認ッ!!」

 サウスダコタに三式弾が命中して甲板は火の海となる。

「ちぃ、撃ちまくれェッ!!」

 リー少将が吼え、ワシントンが射撃を始める。探照灯が点灯している大和に二発の命中弾が出る。

「やはり狙われるな」

「それはやむを得ません」

 三射目を発射して漸く徹甲弾が揚弾機に上げられて砲員が急いで装填する。

「二水戦が突撃しますッ!!」

「……田中め、突撃するのを堪えきれなかったか」

 堀長官が苦笑する。第八艦隊と共に行動していた第二水雷戦隊であったが今此処で突撃しなくてはいつ突撃するのかとなり、旗艦矢矧を先頭に一斉に突撃を開始したのである。

「魚雷戦用意ッ!!」

 各艦の六一サンチ魚雷発射管がワシントン以下米艦隊に照準する。

「ジャップの水雷戦隊だッ!!」

「薙ぎ払えッ!!」

 ワシントンが砲撃して砲弾が駆逐艦雪風に襲うが砲弾は全て外れていた。

「魚雷、撃ェッ!!」

 第二水雷戦隊が一斉に魚雷を発射すると反転して第一戦隊の方向へ向かう。とりわけ、大井の酸素魚雷は多かった。

 何せ大井だけで二十発の酸素魚雷が発射されたのである。

「ジャップの魚雷が来るぞッ!! 海面をよく見張れッ!!」

 リー少将はそう指示を出したが見張り員は海面を見つめたが見えなかった。

「……魚雷が見えないッ!!」

 そしてワシントンとサウスダコタに数本の水柱が立ち上ったのである。

「ワシントンに三発、サウスダコタに四発命中ッ!!」

「水雷屋に手柄を全部持っていかれるぞッ!! 砲術屋の底力を見せろッ!!」

 防空指揮所にいる宇垣参謀長はそう叫ぶ。大和以下の四隻が一斉砲撃をした。

 距離は一万メートルを切っているので初弾から命中弾がでた。

「リー司令官、最早ワシントンは戦闘不能です」

 黒煙が艦橋にまで入ってきた。艦長にそう言われたリー少将は無念という表情をしながら小さく呟いた。

「……総員退艦せよ。残念だがこの戦いでは我々の負けだ」

 ゆっくりと左舷へ傾斜している中、リー少将と司令部の参謀達はワシントンから退艦した。

 そして二番艦のサウスダコタも傾斜しており、乗組員の退艦が行われていた。それを日本艦隊は遠巻きに見ていた。

「米艦隊は戦艦の乗組員の救助をしつつ此方から遠ざかります」

「ふむ……素直に退いてくれるかな?」

「戦艦四隻を所有する艦隊とは戦いたくないでしょう」

 米艦隊は重巡二、軽巡二、駆逐艦十一隻にまで減少していた。

「磐手の状況ほどうかね?」

「現在はクルツ岬の海岸付近で擱座しています。どうやら臨時の陸戦隊を編成しているようです」

「無理な事はするなと伝えろ。無用な戦闘で優秀な乗組員を死なせたくはない」

「分かりました」

 そして三十分後、乗組員の救助を完了した米艦隊はゆっくりとガダルカナル島から離れて行ったのである。その間、日本艦隊は一切の追撃はしなかった。

「おのれジャップ……このままで済むと思うなよ……」

 リー少将は重巡の艦橋でそう呟くのであった。

 一方、泊地に停泊している輸送船団は大慌てであった。

「早くしろッ!! 早くしないとジャップが来るぞッ!!」

 輸送船は機関に火を入れて出港準備をするがそこへ第一戦隊から分離した第八艦隊が接近さしてきた。

「船長ッ!! ジャップから平文での電文ですッ!!」

「………」

 通信士から渡された通信紙には「降伏セヨ」の文字が記されていた。



「堀長官、第十七軍から入電です」

「うむ……ほぅ、成る程」

「如何されましたか?」

 宇垣参謀長が堀長官に問う。堀長官は苦笑しながら宇垣参謀長に通信紙を渡す。

「……成る程。陸さんも我々の戦いを見て急いだようですな」

 それは艦砲射撃後に予定していた突撃を早めて突撃する事であった。








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