第五十話
次回から文章構成が変わる予定です。前回のは間違いでした。
「ガダルカナル島に米軍が上陸したが三川の第八艦隊が護衛部隊と輸送船団を壊滅状態にさせた」
山本は緊急の会合を開いて東條や杉山達が出席した。ジブチ攻略後にシンガポールにいた第二機動艦隊からも将宏と前田少佐が内地に緊急帰国をして会合に出席していた。
三川中将の第八艦隊は米重巡の護衛部隊を壊滅させた後にサボ島を一周して再びガダルカナル泊地へと再突入を敢行した。
第八艦隊の砲雷撃により泊地にいたターナー少将旗艦のマコーレーも撃沈され、十六隻の輸送船団は大破した二隻を除いて壊滅したのである。
輸送船団にはまだ物資や弾薬等が搭載されており、大半を海に沈みこまれたのである。
そして帰還途中に第八艦隊は潜水艦一隻を撃沈する戦果も加えた。
「……FS作戦が重要な今、ガダルカナル島奪還は最優先だろう」
「陸軍としては逐次投入は避けて一気に大規模輸送船団でガダルカナル島へ上陸しようと思う」
杉山はそう主張した。史実を戦訓にして短期で奪還しようとしたのである。
「現在、制空戦確保のためにニュージョージア島のムンダに航空基地を建設中だ。完成次第、ブイン基地にいる零戦隊とラバウルの零戦隊をムンダに移動させる予定だ」
海軍はラバウルを補給基地及び休息する場所と決定し、ブイン基地には陸攻部隊が進出する予定でありブイン基地の滑走路は現在増やしている最中である。
その後の会合で戦略は決定した。陸軍は史実を撃ち破る意味で歩兵第二八連隊、川口支隊、第二師団、第三八師団の投入を決定し、更に戦車も二個連隊投入する。海軍も陸戦隊二千名と八九式中戦車乙改一個中隊の投入を決定した。
しかし、それらを輸送する肝心の輸送船団の手配が難しく(南方からの資源輸送で)結局は史実と同じく逐次投入となるが突撃は部隊が揃うまでとなった。
ガダルカナル島には軍属の設営隊三千名と陸戦隊約千二百名程いた。米軍上陸後はジャングルへと逃げ込んだ。
ガダルカナル島へ上陸した時、海軍は戦訓としてジャングルやタサファロング泊地等に防御陣地を構築しており、そこに念のためとして派遣した八九式中戦車乙改六両や三八式野砲八門を集結させておいたのだ。
ガダルカナル島指揮官の門前大佐はむやみやたらな突撃はせずに防御陣地の構築を務めて後続の上陸を待っていたのだ。
陸海軍の会議で最初の上陸部隊は歩兵第二八連隊と川口支隊、陸戦隊、海軍の八九式中戦車乙改一個中隊と決定されて集められた十六隻の輸送船団に乗り込んで内地からトラック島へ出撃した。
ラバウルには陸海軍から一個航空隊が増援として送られ、そのうちの戦闘機隊はブイン基地へ移動した。
艦隊はトラック島に山口中将の第二機動艦隊、高須中将の第一艦隊(旗艦大和)、近藤中将の第二艦隊、清水中将の第六艦隊(潜水艦隊)が集結した。また、インド洋の角田中将の第三機動艦隊もトラック島に向かっていた。インド洋は南雲中将の南遣艦隊で押さえられると判断したからである。
将官達は作戦会議のため、大和に集まった。無論、将宏も特別に呼ばれている。
「輸送船団の護衛であるが……」
高須中将が口を開いた。そこへ近藤中将が口を挟む。
「私の艦隊には堀長官から祥鳳と瑞鳳を借りている。ミッドウェーのように二空母は防空空母にして輸送船団の護衛にする方がよいと思う」
「その方が良いでしょう。護衛は第八艦隊が妥当と思われます」
「だが第八艦隊は駆逐艦が少ない。第二艦隊から二水戦を出させる」
近藤中将はそう言った。二水戦こと第二水雷戦隊は水雷屋の花形とまで言われており、司令官には田中少将が就いていた。旗艦は阿賀野型軽巡の二番艦矢矧である。
二水戦には軽巡が二隻いた。一隻は矢矧、もう一隻は重雷装艦の大井である。
「燃料の備蓄はどうなんだ? 史実のように大和や陸奥から重油を抜き取られるのは勘弁したいのだが……」
高須中将はそう言って海護からの出席している大井篤中佐に聞いた。
「御心配ありません。宮様が陣頭指揮をなされていますので。トラック島の備蓄は三年分あります。なお、ラバウルは約八ヶ月分です」
大井中佐は自信満々でそう答えた。
「それなら心配はないな。後は第六艦隊だが……」
「ニューカレドニア方面での通商破壊作戦をしてもらいましょう。大型艦を狙うのではなく専ら輸送船狩りをしてもらう方がかなり助かります」
「うむ、そちらの方は任しておいてくれ」
将宏の言葉に清水中将はそう言った。兎も角、一応の方針は決まって輸送作戦は決行されるのであった。
十月十五日、川口支隊、歩兵第二八連隊、海軍陸戦隊を載せた輸送船団が第八艦隊に護衛されながらガダルカナル島へ接近した。
ガダルカナルは連日に渡ってブイン基地やラバウルからの攻撃隊による空襲を受けており、輸送船団が接近しても発進した攻撃隊は僅かに三十機あまりである。
攻撃隊は迎撃の零戦隊に翻弄されヘンダーソン飛行場に戻った機は八機しかいなかった。
そして夜半に第八艦隊の重巡がヘンダーソン飛行場に艦砲射撃を敢行して三式弾で飛行場を破壊した。夜が明けても防空空母の二隻から零戦隊が飛来して第八艦隊の上空を守り一式七番六号爆弾三型を投下していたりする。
そうこうするうちに第二機動艦隊から発艦した攻撃隊が到着して爆撃を開始した。
艦攻隊はまだ九七式艦攻であるが、艦爆隊は全て彗星に更新されており五百キロ爆弾を投下して飛行場を破壊した。
そして肝心の輸送船団の上陸は成功であり、被害はゼロであった。これにより日本側のガダルカナル島指揮官は門前大佐から川口少将に交代した。
ラバウルにいる第十七軍司令官百武晴吉中将からは主力の第二師団と第三八師団、二個戦車連隊がガダルカナルに到着するまでは攻撃はしてはならないと厳命されていたので川口少将は防御陣地から出ようとはしなかった。
この行動には米軍も首を捻っていた。
「何故ジャップは来ないのか?」
兵士達はジャップは我々に怖じ気づいたのだと罵った。流石に将官達はそう思わず、何かあるのだと考えていた。
米軍は一度攻勢に出たがあっという間に蹴散らされた。戦車部隊も八両が撃破された。
これにより米軍は守勢に転じてタサファロング泊地に向かう第二師団と第三八師団、二個戦車連隊の輸送は捗ったのであった。
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