第四十九話
次回から文章構成が変わる予定です。
「大変だ山本ッ!!」
「どうした嶋田?」
総理の部屋に嶋田海軍次官が慌ただしく入室してきた。
「よく聞け山本……アメリカが侵攻を開始した」
「な、何ッ!?」
嶋田の報告に山本が席を立ち上がる。
「それで場所はッ!!」
「……因縁の島だよ」
嶋田の言葉に山本は直ぐにピンときた。
「……ガダルカナル島へ侵攻したのか……」
「あぁ、対岸のツラギ島にいる横浜航空隊がそう打電してきた。第八四警備隊の最後の電文は『敵兵力大、最後ノ一兵マデ守ル。武運長久ヲ祈ル』だ」
「………」
嶋田次官の言葉を聞いた山本はゆっくりと世界地図を見た。
「……直ぐに東條さんと杉山さんを呼んでくれ」
「それではインド攻略は……」
「残念だが……当分は延期せざるを得まい」
山本はそう決定してインド攻略は延期となったのである。
さて、ガダルカナル島ではアメリカ海兵隊の第一師団が上陸していた。
「……ジャップの抵抗があると思ったが……どうやらジャップは密林に逃げたみたいだな」
ガダルカナル島司令官のバンデグリフト少将はそう呟いた。アメリカはガダルカナル島に約一万二千程の部隊を上陸させた。
しかし、物資や弾薬はまだ揚陸中である。
「フレッチャーには十分な護衛をしてもらわないとな」
バンデグリフト少将はそう呟いた。一方、ラバウルにいた海軍航空隊はガダルカナル島にアメリカが上陸した電文を受信してラバウル航空隊司令官の山田少将は直ちに攻撃隊を発進させた。
陸軍も応援のため攻撃隊を発進させた。総数は零戦五四機、一式陸攻三六機、隼三六機、九七式重爆二七機である。
更にブイン基地にいた零戦二七機はガダルカナル上空の制空戦を命じられて出撃した。ラバウルからの戦闘機はブイン基地で補給してから帰投するようにしていた。
この制空隊には史実で有名な坂井一飛曹や西沢一飛曹、太田一飛曹等のベテランが勢揃いしていた。
また、制空隊に先立ちブイン基地から彩雲が発進して情報収集に務めた。
そして彼等はガダルカナル上空へとやってきた。
「ジャップのゼロなんぞ叩き落としてやるッ!!」
ガダルカナル上空には百機余りのワイルドキャット隊がいた。攻略船団には護衛空母四隻も参加しており、百機余りを出せたのも護衛空母のおかげなのである。
しかし、制空隊は臆する事なく空戦へと突入して有利な展開をしたのであった。
「馬鹿なッ!! たった三十機程度のゼロに百機以上のワイルドキャット隊が負けているだとッ!!」
ワイルドキャット隊の指揮官はそう驚きつつも零戦を銃撃するが、零戦はそれをヒラリとかわさして左急旋回をしてワイルドキャットの後方に回った。
「ファックッ!!」
指揮官は逃げようとするが逃げられず、零戦の二十ミリ弾をエンジンに受けて爆発四散した。
「よし、燃料も乏しくなってきたから帰投しよう。後は本隊に任せる」
制空隊指揮官の納富大尉はそう言って列機を集めて帰還した。零戦の喪失は僅かに一機のみである。
対するワイルドキャットの喪失は三二機にも及んだ。
それから一時間半後、再びアメリカの対空レーダーが接近する大編隊を捉えた。ラバウルから発進した攻撃隊である。
米戦闘機隊はまた発艦していったが、無事に帰ってきた戦闘機は三五機だけであった。攻撃隊は腹に魚雷を搭載しており雷撃を敢行した。
しかし、被害は続出して十九機が撃ち落とされたが輸送船五、駆逐艦二隻を撃沈した。
「もう少し多ければ……まぁ悔やんでも仕方ない。後は第八艦隊に任せるか」
攻撃隊指揮官はそう呟いた。
ガダルカナル島に米軍が侵攻した時、ラバウルには三川中将の第八艦隊がいた。
艦艇は旗艦鳥海に第六戦隊の三隻と第四艦隊旗艦から交代された八雲、軽巡夕張、駆逐艦六隻の計十三隻で構成されていた。
「これは普通の海戦ではない。殴り込みだッ!!」
鳥海の艦橋で三川中将はそう叫んでいた。第八艦隊はツラギ島からの電文を受信後に即座に艦隊を出撃させて一路ガダルカナル島へ目指していた。
「長官、ガダルカナルにはまだ敵空母部隊がいるはずです。此処は夜戦でやるべきです」
参謀長の大西新蔵少将がそう具申する。
「うむ……ブイン基地の彩雲からの報告を聞いてからでも遅くはない」
三川中将は彩雲に敵空母の位置を問う。彩雲はガダルカナル島の泊地を偵察するが護衛空母すらいなかった。
この時、フレッチャーの機動部隊は退避していたのだ。理由は戦闘機の消耗である。二度の空戦で戦闘機は全体の六十%も喪失しており、船団の護衛を放棄してニューカレドニア方面に退避したのだ。
この報告に船団司令官のターナー少将やバンデグリフト少将は激怒したが、いない者に激怒しても仕方なかった。
「敵空母部隊がいないのであれば好都合でありもすッ!! 敵に第八艦隊の恐ろしさを知らしめる機会でありもすぞッ!!」
首席参謀の神大佐は突入を主張する。大西参謀長は三川中将の顔を見た。
全ての判断を三川中将に委ねたのだ。
「……よし、突入しよう。全軍、前進前進また前進だッ!!」
三川中将はそう決断した。突入体形は単縦陣とした。
そして2100に照明隊の零式水偵三機が発艦した。
その頃の米軍は重巡部隊とオーストラリアのクラッチレー艦隊が泊地を警戒していた。
「おい、飛行機だぞ」
甲板に出ていた水兵が同僚に言った。
「味方の水偵だろ。流石にジャップも今日には攻撃してこないさ」
同僚はそう言って作業に戻った。サボ島付近では駆逐艦がレーダーで警戒していたが第八艦隊の接近に気付かなかった。
第八艦隊は難なく警戒網を突破した。そして照明隊が照明弾を投下した。
既に第八艦隊の砲身は右に向けられ、敵味方識別のために白色吹流がつけられていた。
照明弾で米重巡部隊が映し出された。
「照明弾ッ!! ジャップだッ!!」
映し出されたのは重巡キャンベラである。
「見事な背景照明だッ!! ハッキリと敵重巡が映し出されているぞッ!!」
双眼鏡で見ていた三川中将は興奮している。
「魚雷戦開始ィッ!!」
「撃ェッ!!」
重巡鳥海が四連装魚雷発射管二基から八発の酸素魚雷を発射した。そしてキャンベラの右舷に三本の水柱が立ち上がった。
「砲撃開始ィッ!!」
「撃ちぃ方始めェッ!!」
重巡鳥海の二十.三サンチ連装砲五基が一斉に火を噴いたのであった。
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