第四十八話
そして遂に米軍の反攻。
会合を後にした山本首相と堀長官は直ぐにドイツ大使館に乗り込んで特命全権公使であるハインベルト・ヒュットマンと会い、イギリスの老齢戦艦の提供を公表した。
ヒュットマン公使は戦艦の提供に驚きつつもドイツ本国に知らせた。
「やったぞッ!! ジョンブルの老齢戦艦ではあるが戦艦が手に入るッ!!」
ドイツ海軍省の長官室で報告を聞いたレーダー元帥が喜んでいた。
「(まぁレーダー元帥も何かと苦労しているからな……)」
「(陸軍の予算が多いのは分かるが空軍も取りすぎなんだよ。急降下爆撃だけで敵戦艦が沈むかよ)」
「(そもそも戦争するのが早すぎだよ)」
部下達はヒソヒソとそう話していた。陸軍と空軍が活躍する中、海軍はUボートとビスマルク級の睨みくらいしか出番が無かったのだ。喜ぶのも当然である。
「それに機関も日本のに入れ換えられているから高速化もそれなりに期待出来る。日本の機関も空母キール等が使用しているから扱いが熟知している乗組員を優先に配備させよう」
レーダーは戦艦が来る事に待ち遠しかった。
しかし、それにも懸念はある。エジプトにはまだイギリス軍がいるからである。
だが、エジプトにいるイギリス軍の補給は少なかった。
セイロン島にいる南雲中将の南遣艦隊とアッヅ環礁にいる清水中将の第六艦隊の第二潜水戦隊がインド洋で大暴れをしており、満足な補給は出来ていなかったのだ。
そしてその補給を完全に断ち切るために南遣艦隊を主導にしたジブチ攻略作戦が決定された。
兵力は陸軍から二個師団と九七式中戦車と八九式中戦車乙改が一個中隊ずつだった。
部隊は横須賀で待機していた高速輸送船団に乗り込んで出撃した。
この時、東京〜横須賀間には高速道路が完成しており物資や兵力の移動もこれまでより約二倍近く早める事が出来た。
作戦決行日は八月下旬としていた。ドイツ大使館にもそれまで粘っていてほしいと打診している。
更に新たにエジプトへ直接上陸するために五個師団と第一戦車師団の投入が決定された。
この戦車師団はほぼ史実の戦車師団であり、砲戦車中隊はまだ無かったが八九式中戦車乙改は一個中隊で十五両、九七式中戦車は一個中隊で十八両に編成していた。
なお、第一戦車師団にはノモンハンで戦車戦をしていた牟田口中将が就任していた。
また、航路の安全のために海軍陸戦隊二個大隊、陸軍から一個連隊と八九式中戦車乙改一個中隊がソコトラ島の占領を計画している。
空母部隊であるが、第一機動艦隊は暫くは編成となり生き残っていた四空母のパイロットは練習航空隊の教官となりヒヨコを海鷲に育てている。片腕切断の重傷を負った小沢中将は一時的に予備役に編入されて療養する事になった。
小沢中将の後任には塚原中将が就任した。
空母飛龍も一時的にだが練習航空隊の練習空母となり訓練に勤しんでいた。
戦没した三空母の乗組員は八月に竣工する予定の大鳳と雲龍、天城の乗組員として補充された。
戦艦部隊のうち、伊勢と日向はトラックに派遣されて第一機動艦隊から分離した祥鳳と瑞鳳と共に南方への睨みを効かしていた。
一方、史実で消耗戦の舞台となったソロモン諸島であるがブーゲンビル島のブインに航空基地が建設されてラバウル航空隊の一部が進駐していた。
ガダルカナル島にも設営隊を送り込んでおり、滑走路に構築中である。米機動部隊は壊滅してからの設営だったがそれは遅すぎた事だった。
一方、アメリカは日本のそれらの動きを読みつつも反撃には出なかった。
いや中々出られなかったのだ。
なにせ、ミッドウェーで三空母を失い、残っているのは伊号潜水艦からの雷撃で大破して漸く修理が終わったサラトガと大西洋から太平洋に回航されたワスプとレンジャーしか無かったのだ。(それでも護衛空母は新たに二隻就役して六隻である)
そして三空母はある作戦のためにニューカレドニアにいた。
「……宜しいのですか大統領? 最悪の場合、オーストラリアは見捨てる事になります」
「……………」
キング作戦部長の報告にルーズベルトは四六時中しかめっ面をしている。
「……やむを得んな。マッカーサーには脱出する準備だけはしておくように言っておけ」
「……分かりました」
キング作戦部長は頷いて大統領室を出た。
「……何故だッ!! 何故アメリカはジャップなんかに負けているんだッ!!」
ルーズベルトは机を強く叩いた。
「……まぁジャップの進撃は此処までだ。もうすぐ我々の反撃が始まる……奴等を消耗戦に巻き込めば勝てる……フフフ……ハーハッハッハッハッハッ!! ゲホゲホッ!!」
そう言って笑うが、笑いすぎてむせるルーズベルトである。
そして八月下旬。
遂にジブチ攻略作戦が開始された。
この時、山口長官の第二機動艦隊はセイロン島に到着したばかりであったが攻略を任された南遣艦隊は張り切っていた。
しかしジブチにいた自由フランス軍とイギリス軍は圧倒的な南遣艦隊の戦力の前に士気は低下。
角田機動部隊は飛行場を徹底的に攻撃して制空権を日本側に移させた。
南雲中将は艦砲射撃をするために重巡部隊をジブチの港に接近させて射撃を開始した。
戦艦より威力は小さいがそれでも陸上からの人間には巨砲である二十.三サンチ砲は三式弾を発射して施設を破壊していく。
一時間にも及んだ艦砲射撃はジブチ港の防御陣地を徹底的に破壊した。
そして沖合いに待機していた輸送船団から大発等の上陸舟艇が発進してジブチ港に殺到した。
陸軍はこれまでの戦訓から歩兵と一緒に九七式中戦車の上陸させた。
九七式中戦車の上陸にイギリス軍と自由フランス軍はM3中戦車を投入するが全て九七式中戦車に撃破された。
そしてイギリス、自由フランス軍の士気は最低にまで落ちて遂に司令部に白旗が掲げられたのであった。
日本軍がアフリカに上陸してその一部を占領した瞬間だった。
だが九月中旬、日本の戦略は大きく異なる事となった。
「今日も暑いなぁ」
「そうだなぁ」
ツラギ島の水上基地で整備兵達はそう言いながら離水した九七式飛行艇を見ていた。しかし突然、九七式飛行艇のエンジンから火が出て飛行艇が墜落していく。
「な、何ッ!?」
「あ、あれを見ろッ!!」
整備兵達の上空を数機の航空機が飛び去った。その航空機の国際標識は星であった。
「アメ公だッ!! アメ公が攻めてきやがったッ!!」
1942年九月中旬、アメリカは日本の予想を遥かに越えてガダルカナル島へと侵攻を開始したのであった。
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