表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/112

第四十六話






――第二機動艦隊旗艦瑞鶴――


「高橋少佐より入電ッ!!『敵空母二隻撃沈ス』以上ですッ!!」


 通信紙を持った通信兵が艦橋にかけ上って電文を読み上げた。


「……とすると残りの敵空母は一隻だな」


「流石に三空母とも捕獲は無理でしたね」


「ハハハ、それは仕方ない事だ。なら残った敵空母を捕獲しようではないか」


 将宏の言葉に山口長官が笑う。


 第二機動艦隊は既に第二次攻撃隊を発艦させて敵機動部隊との距離を詰めていた。


「第一機動艦隊の状況はどうなっているのかね?」


「は、蒼龍は1620に、加賀は1625に大爆発をしながら沈没したそうです」


 伊崎参謀長が山口長官に言う。


 既に加賀ま蒼龍は沈んでいたが、赤城はまだ耐えていた。


 しかし、誘爆が激しいために第二航空戦隊司令官の大西少将は赤城の曳航を諦めて第四駆逐隊による魚雷処分を命じていた。


 第四駆逐隊の酸素魚雷三本は赤城に命中してその直後の1645にガソリンタンクに誘爆して大爆発をしながら波間に消えていったのである。


 片腕切断という負傷した小沢長官は止血後に赤城から退艦して駆逐艦嵐に移乗していた。ワイルドキャットの機銃掃射で参謀達も負傷しており、通信参謀と源田航空参謀は戦死した。


 第一機動艦隊は三空母の残存乗組員とパイロットを救助しつつ第一艦隊に合流する事を決定した。


「第一機動艦隊はほぼ壊滅だな……」


 山口長官はポツリとそう呟いたのであった。






 一方、第二機動艦隊からの第一次攻撃隊の攻撃を受けたスプルーアンスの機動部隊はボロボロになりながらもオアフ島へ向けて航行していた。


「……長い一日だったな……」


 駆逐艦に収容され、頭に包帯を巻いたスプルーアンス少将はそう呟いた。


「結果的に敵空母を三隻撃沈させた……しかし此方も二隻を失い、ヨークタウンは速度を落としている。此処は味方の士気を上げるには全隻が無事でありたかったが……これは私の敗けだな」


 スプルーアンス少将はそう笑う。


「スプルーアンス司令官ッ!! レーダーに反応ッ!! 敵攻撃隊ですッ!!」


 レーダー員が叫ぶ。


「……まだ来るかオザワ……」


 スプルーアンス少将はそう言って速度を落としている空母ヨークタウンを見つめた。


 空母ヨークタウンは速度を十ノットにまで落としていた。


 理由は機関室に二本の航空魚雷が命中して大量の海水が機関室に入り込んでいたのだ。


 今はダメコン隊の応急修理によって何とか海水を吐き出しながら速度十ノットで航行している。


 今、ヨークタウンが攻撃を受ければ沈没するのは必須であった。


 しかし、その攻撃を受ける事はなかった。突如、ヨークタウンの右舷に三本の水柱が上がったのである。


「ヨークタウンに魚雷命中ッ!!」


「何だとッ!! 敵攻撃隊はまだ射程圏外だぞッ!!」


「ジャップのサブマリンですッ!!」


「何ぃ?」


 部下の報告にスプルーアンスは驚いた。


「三本の命中音ですッ!!」


「……やったな」


 伊一六八潜の田辺少佐はニヤリと笑う。ヨークタウンを雷撃したのは伊一六八潜である。


 伊一六八潜はたまたま逃げ帰るスプルーアンス艦隊を発見して雷撃を敢行したのである。


 酸素魚雷が三本も命中したヨークタウンは急速に傾斜が激しくなってきた。


「……司令官、最早ヨークタウンは……」


「持たない……な」


 スプルーアンスは深い溜め息を吐いた。駆逐艦が潜水艦を撃沈しようと爆雷を叩き込むが撃沈した様子はない。


「……ヨークタウンに総員退艦を伝えろ」


 スプルーアンスは苦渋の決断をした。その様子を攻撃隊が見て第二機動艦隊に打電した。


「伊号潜がヨークタウンを叩いたらしい」


「では鹵獲は無理そうですね」


 将宏は残念という表情をして呟いた。不謹慎ではあるが勝つためなら将宏は気にしなかった。


「攻撃隊は爆弾と魚雷を投棄して帰還させろ」


 指示は直ぐに飛び、電文を受信した攻撃隊は爆弾と魚雷を投棄して帰還した。


 スプルーアンス艦隊はボロボロの状態で真珠湾に帰還した。護衛空母部隊も敵偵察機に発見される事なく無事に帰還したが、これを伊号潜が発見していた。




 そして二日後、堀長官の第一艦隊はミッドウェー島へ艦砲射撃を開始した。


 日本軍の上陸のために備えられた鉄条網や地雷等は全て大和の五一サンチ砲に吹き飛ばされたのである。


 上陸部隊の海軍陸戦隊と一木支隊は艦砲射撃の援護の元、ミッドウェー島へ上陸した。


 海軍陸戦隊の八九式中戦車乙改を先頭にして陸戦隊と一木支隊はミッドウェー島の司令部を目指した。


 更に航空援護として第二機動艦隊から攻撃隊が飛来して防御陣地に爆弾を叩き込んだ。


 耐えきられないと判断したシマード大佐とシャノン大佐はニミッツ長官にこれから降伏すると伝えて司令部に白旗を掲げた。


 ミッドウェー島に上陸して六時間、遂にミッドウェー島は日本軍によって占領されたのであった。


「……何とか史実を乗り越えてミッドウェー島を占領出来たが……」


「被害が大きすぎました」


 占領後、将宏は山口長官と共に大和に乗り込んで会議室で堀長官達と話し合っていた。


「小沢長官の容態はどうですか?」


「取りあえず、峠は越えている。今は比叡の医務室で入院している」


 駆逐艦に移乗した小沢司令部は比叡に移乗して小沢長官は医務室に入院していたのだ。


「それにしても……空母三隻喪失は痛すぎるな……」


「飛龍がやられなかっただけでもマシですよ。それに米空母も三隻沈めているのでエセックス級空母が出てくるまでは多少大丈夫かもしれません」


「うむ……それと伊号潜が真珠湾方向に引き上げる小型空母を目撃したらしいんだが……」


「小型空母? ……まさかッ!!」


 小型空母と聞いて将宏は何かを思い出した。


「何か分かったのか?」


「……もしかしたらアメリカの建造も史実より少し早いかもしれません」


「何?」


「伊号潜が目撃した小型空母は恐らく護衛空母でしょう。これらの戦力は過小評価は出来ません。FS作戦の時に何らかの障害にならなければいいんですが……」


「ふむ……なら九月に就役する大鳳を急がせないとな」


 堀長官はそう呟いた。









御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ