第四十四話
ここは変える要素が無かったので若干の修正のみです。
利根四号機からの電文は第二機動艦隊も受信していた。
「直ちに攻撃隊を編成して発艦すべきですッ!!」
瑞鶴の艦橋で将宏が叫ぶ。攻撃隊は準備中であったが何機かは直ぐに出せる状況であった。
「だが、此処からだと航続距離はギリギリだぞ?」
将宏の言葉に伊崎参謀長が反論する。
「無論、第二機動艦隊が前進して攻撃後の攻撃隊を収容します」
「それだと敵攻撃隊の攻撃圏内に入らないか?」
「それは承知です。それに敵空母は三隻と史実と同じではありますが何が起こるかは自分も分かりません。最早史実は充てにならないと思います」
将宏はそう言う。
「……長官、如何しますか?」
伊崎参謀長は山口長官に意見を求めた。
「……奥宮、攻撃隊の準備は?」
「残念ですがまだ掛かります」
「……よし、攻撃隊の準備は急がせろ。取りあえずは敵機動部隊に出来るだけ近づける。それから発進する。幸いにも敵はまだ我々を発見してはいないからな」
山口長官はそう決断した。
そして第二機動艦隊は慌ただしく攻撃隊の発艦準備に追われた。
一方、第一機動艦隊から出撃した村田少佐率いる攻撃隊はスプルーアンス艦隊に到着した。しかし、スプルーアンス艦隊後方にいる護衛空母部隊を発見する事はなかった。
「ジャップの攻撃隊を視認ッ!!」
「……来たかオザワ」
空母ホーネットの艦橋でスプルーアンス司令官はそう呟いた。
「対空砲ファイヤーッ!!」
スプルーアンス艦隊の艦艇から対空砲や四十ミリ、二十ミリ機関銃が弾幕射撃を開始する。
更に上空警戒していたワイルドキャット二七機が村田攻撃隊に向かう。
「零戦隊、御客さんだ。相手してやれ」
『了解した』
村田少佐の言葉に零戦隊隊長の板谷少佐が無線機で答える。
「全零戦突入ッ!! 新型零戦をアメリカに知らしめろッ!!」
攻撃隊を護衛していた零戦三六機がワイルドキャットと空戦を開始した。その間を村田攻撃隊が突き進む。
「『トツレ』を打てッ!!」
村田機が『トツレ』を発信し、それを受信した攻撃隊は突撃態勢を作る。
「『ト連送』を打てッ!!」
突撃態勢を作った攻撃隊に『ト連送』を発信する。
そして攻撃隊は攻撃を開始した。まず最初に攻撃を開始したのは江草少佐率いる九九式艦爆隊である。
なお飛龍隊は全機が彗星であるが……。
「一個中隊ずつ空母を狙えッ!!」
江草少佐が無線機に怒鳴る。艦爆隊は蒼龍隊の九九式艦爆十八機、飛龍隊の彗星十八機である。
江草少佐は九機一個中隊に分けて空母三隻を狙ったのである。
江草少佐が狙ったのはスプルーアンス少将が旗艦にしている空母ホーネットだった。
「上空からヴァルッ!!」
見張り員の叫びにスプルーアンス少将は上空に視線を向けた。
上空から九機の九九式艦爆が急降下爆撃を敢行した。
「撃て撃て撃てッ!!」
仰角を上げた対空砲が必死に砲弾を放つが先頭の九九式艦爆に命中する気配はない。
そして爆弾アームが伸びた九九式艦爆――江草少佐機は高度五百で二百五十キロ爆弾を投下した。
「来るぞォッ!!」
誰かの叫びに砲員達は身を屈めた。そして江草少佐が放った二百五十キロ爆弾はホーネットの中部飛行甲板に命中した。
「消火急げェッ!!」
「また来るぞォッ!!」
ダメコン隊が消火ホースを持って炎上ヶ所に行こうとした時、江草隊の二番機、三番機が相次いで投下した。
二発は残念ながら至近弾となるが、後続の九九式艦爆が三発命中させた。
「消火急げェッ!!」
漸くダメコン隊が消火活動に取り掛かるがまだ危機は去っていない。
「両舷からケイト九機ずつ接近ッ!!」
見張り員が叫ぶ。
接近する九七式艦攻は赤城の村田隊である。九七式艦攻はホーネットからの対空砲火を避けつつホーネットに接近する。
「用意……撃ェッ!!」
村田少佐は距離七百で魚雷を投下して上昇しながら離脱していく。
「回避急げェッ!!」
「間に合いませんッ!!」
そしてホーネットの右舷に二本、左舷四本の水柱が立ち上った。
――第一機動艦隊旗艦赤城――
「村田少佐機より入電ッ!!『敵空母一、駆逐艦二撃沈。空母三中破』以上ですッ!!」
「……そうか」
小沢長官は上空を見たまま呟いた。
「やはりあの雲は気になりますか?」
古村参謀長が小沢長官に訊ねた。
「あぁ……まだドーントレスは少ししか見ていない。それに敵雷撃機はアベンジャーだ」
第一機動艦隊は米機動部隊からの攻撃隊に襲われていた。
しかし、零戦隊のおかげで被害は今のところは無かった。だが、飛来した雷撃機はデバステーターではなく新型のアベンジャーだったのだ。
スプルーアンスの機動部隊はアベンジャー雷撃機を約六十機程搭載していた。(護衛空母部隊は約四十機)これは護衛空母同様に史実から少し進んでいたからであった。
「確かにそうですが、ドーントレスは我々が見ていないだけで零戦隊が掃射しているかもしれません。アベンジャーは恐らくは少し歴史が変わったのでしょう」
古村参謀長の言葉は一理あった。
「……そうかもしれんな。第二次攻撃隊の準備は?」
「空襲が終わり次第発艦させます」
「分かった」
小沢長官はそう頷きながらも第一機動艦隊上空にある雲から目を離さなかった。
しかしドーントレスが雲から現れる事はなく、米攻撃隊は戦果無く引き上げた。
「……第二次攻撃隊を発艦させます」
「うむ」
小沢長官は頷き、赤城から三空母に発光信号が送られる。
四空母のエレベーターは慌ただしく動き、攻撃隊を飛行甲板に上げる。
そして第二次攻撃隊が飛行甲板に整列をした時、電探員が叫んだ。
『雲の中に多数の反応ッ!!』
「何ッ!?」
その時、厚い雲が少し途切れた。
その途切れた隙間からSBDドーントレス約二十機が現れた。
「馬鹿なッ!?」
古村参謀長が叫ぶ。
このドーントレスは途中で航法を間違ってしまい到着が遅れていたのだ。更に攻撃隊はそれだけではない。
護衛空母部隊から発艦した攻撃隊も赤城の対空レーダーが捉えたのだ。
「全機突入ッ!! 空母達の敵討ちだッ!!」
隊長のマクラスキー少佐が叫び、操縦桿を倒して急降下爆撃に入った。
「敵ィィィ急降下ァァァ直上ォォォーーーッ!!!」
赤城の見張り員が叫んだ。
慌てて四十ミリ機銃や二五ミリ機銃が仰角をとって射撃をするが間に合わなかった。
先頭のマクラスキー少佐は空母加賀を狙い、腹に搭載した四百五十キロ爆弾を投下した。
投下された四百五十キロ爆弾は加賀の艦橋付近にあった燃料車を破壊、燃料車は誘爆で艦橋をも破壊して岡田艦長以下艦橋にいた者が全員が戦死をした。
更に第一機動艦隊に悪夢は続いた。
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