第四十一話
ミッドウェー前なので前作のを少し修正しました。新キャラ、いつ出そうか……。
――五月二十日東京――
MO攻略作戦後、将宏と前田少佐は二式大艇を利用して日本に帰国していた。
「……無事にポートモレスビーを占領したか」
料亭に集まった面々の中で山本がそう呟いた。
「ですが、翔鶴は損傷しました。MI作戦に支障が出るかもしれません」
将宏はそう言う。
「やはり被害は大きいのか?」
「現在はトラックで修理を受けていますが爆弾の威力が大きいため修理に時間が掛かります。六十キロ爆弾ならまだ話は別ですが……日進は直ぐに戦線復帰します」
「となると……翔鶴は作戦から外すしかないな。第一機動艦隊には予定通りに祥鳳と瑞鳳を回そう」
堀長官はそう判断した。
祥鳳と瑞鳳はMO作戦後に防空空母として第一機動艦隊に配備させる予定だったので今のところは問題無い。
「堀長官……やはり七月は駄目なんですか?」
「……あぁ、マスコミの馬鹿どもが国民を囃し立てている。もはやMI作戦は史実同様の六月五日から七日に実施予定だ」
堀長官がそう吐き捨てた。東京空襲後、朝日を筆頭にマスコミは挙って陸海軍を非難した。
それに応えるようにマスコミの報道を信じた国民も陸海軍を非難したのだ。
マスコミの思わぬ反撃に山本五十六は頭を悩ませる事になるが陛下が国民に自重するように発言をしてこの問題は直ぐに終息する事になる。
しかしマスコミは東京空襲をした米機動部隊の殲滅を陸海軍に無理矢理約束させた。更に何処から入手したのかは分からないがMI作戦を発表して早期攻略を陸海軍にうんと言わしたのである。
これには山本達も呆れ、MI作戦後にマスコミの膿を容赦する事なく一掃する事が決定されたのである。しかもこれは陛下も承認済みである。
「……マスコミはやっぱマスゴミやったわけやな……」
将宏は深い溜め息を吐いた。
「角田機動部隊の援護を貰おうと思ったがマスコミのせいで全て水に流れた」
堀長官も将宏同様に溜め息を吐いた。ちなみに陸海軍が構想していたMI作戦の日程は七月下旬としていた。
これは角田機動部隊も加わった上での作戦であった。
「兎も角、ここは頭を絞って史実のMI作戦みたいにならないようにしよう」
締めくくりで言った山本の言葉に皆が頷いたのであった。
会合が終わった時、既に時刻は朝の六時半を指していた。
「こりゃぁいかん。また女将達に怒られるな」
『ハハハッ!!』
山本の言葉に皆が笑う。
「河内君はこれからどうするのかね?」
「はい、今日は下宿先に帰って休んでいます。そのまま明日、トラックに帰ります」
「うむ、気を付けてな」
「はい」
将宏と前田少佐は山本達と別れて徒歩で前田家に向かった。
「取りあえずは復興してきたな」
将宏は辺りを見ながらそう呟いた。
東京空襲で東京には爆弾が五発落とされて家屋が八十程燃やされた。
家屋を失った人には政府が支援金を出して復興の手助けをしていた。
「ん? 霞とヒルダ?」
将樹達は前方から買い物袋を持った霞とヒルダを見つけた。
「ん? 海軍省の用事は終わったのか?」
ヒルダが将宏達を見つけて寄ってくる。
ちなみに霞とヒルダには会合へ行く時は陸海軍省に用事があると言って出てきているのである。
「まぁな。朝早くから買い物か?」
「あぁ、配給の酒が朝からやっていたのでな」
左目に白い眼帯をした霞が将宏達に酒が入った買い物袋を見せる。
「そうか。もう買い物は終わりか? 俺と将宏は今から帰る予定だが」
「私らも買い物は終わったから帰るよ」
そして四人が歩いている時、周りからヒソヒソと小声が聞こえていた。
「……あの人なの? 爆弾で左目を失って傷だらけの?」
「そうらしいわよ。彼女も運が無いわね〜左目を失ったせいでお見合いも出来ないみたいよね。まぁ軍人の妹らしいし仕方ないんじゃないの?」
「じゃあもう婚姻も無理のようね。美人で少し人気があったらしいけど」
「不便ねぇ」
「軍が爆撃機を逃すから悪いよねぇ」
「……………」
周りからの小声に霞はギュッと左手を握り締めた。
「……ッ!!」
それを見た桐野少佐がヒソヒソと話をしている主婦達に文句を言おうとした時、将宏が前田少佐を止めた。
「止めとけ前田少佐。あいつらに何を言っても無駄や。馬鹿に付ける薬は無いんや。あぁん?」
将宏の言葉に反論しようと主婦達に将宏が睨み付ける。
『………』
主婦達はそのままそそくさと何処かへと行った。
「……済まない」
「ええって。気にするな」
謝る前田少佐に将宏はそう言った。
「………(ありがとう将宏)」
霞は心の中で将宏に礼を言った。
「ま、嫌な時は酒でも飲んで紛らわそうや」
将宏はそう言った。
そして四人は家に戻った。
「ハッハッハ♪」
「ゲ、ヒルダが笑い上戸になってるぞ」
「誰やねん飲ました奴は……」
「無論私だ」
「ドヤ顔すんなッ!!」
数時間経った夕食時にヒルダが酒を飲んで既にスイッチが入っていた。
「ヌフフ♪将宏ぉ〜♪」
「わ、ヒ、ヒルダッ!?」
酔ったヒルダが将宏に抱きついて、将宏の胸元で顔をスリスリとしている。
「……ち……」
その状況を見た霞がコッソリと舌打ちをする。
「よし、霞。俺の胸で泣けッ!!」
「死ねッ!! 馬鹿兄上ッ!!」
「ふっとばじゃーッ!!」
「無茶しやがって……」
「飲むぞ将宏ッ!!」
「お、おぅ」
霞が将宏の小瓶に日本酒を注ぎ込む。
「今日はまぁええか」
「ヌフフ〜♪」
「て、ヒルダッ!! おま、何処触ってんねんッ!!」
いつの間にかヒルダがゴソゴソと将宏の膝辺りで何かをしていた。
「む? そりゃあ、マサヒロのたま「女の子がそんな事言っちゃいけませんッ!!」む〜」
ヒルダの言葉を将宏が遮るとヒルダが頬を膨らまして如何にも「怒ってる」という表情をする。
「……私も酔えば……」
「いやいや、それは無い」
酒が入ったコップを見て呟いた霞に前田少佐が首を振る。
「兄上はす巻きだと言っただろッ!!」
「なしてッ!?」
色々とカオスな前田家であった。
翌日、将宏が起きると霞とヒルダの二人が抱きついて寝ていた。
ちなみに前田少佐はす巻きにされて厠に放り込まれていたりする。
前田少佐は何があったかは何も語る事は無かった。
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