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第三十七話






 日本はアメリカとの戦争に備えて新兵器の開発や生産をしていた。


 ところがどっこい。新兵器の開発や生産をしていたのは日本だけではなかったのだ。


 チートなアメリカはその豊かな生産力がある。


 戦前、日本海軍が扶桑型戦艦を空母に改装した時、アメリカはかなりの警戒心を持った。


「日本は航空戦力にシフトしたのか?」


 アメリカはそう警戒したが、直ぐに日本が大和型戦艦を公表したのでその懸念は払拭された。


 しかし、アメリカ海軍は万が一のためとして史実より早くに中型、小型空母の建造を乗り出したのであった。


 その結果、竣工したのが護衛空母であった。護衛空母はボーグ級航空母艦であり、開戦時には八隻が竣工して大西洋艦隊に編成されていた。


 護衛空母の任務は輸送船団の護衛とパイロットの育成であった。開戦後の42年一月に、護衛空母八隻のうち半数の四隻はパナマ運河から太平洋に回航されて航空機の輸送やパイロットの育成に務めた。


 そして今では四隻で空母戦隊を編成していた。西海岸では七隻の護衛空母が竣工して乗組員とパイロットの育成に務めていたのだ。


 護衛空母部隊はフレッチャー機動部隊とエスピリツサント島の中間を護衛の駆逐艦六隻を伴って航行していた。


「航空機の移動だ。フレッチャー機動部隊に向かうぞ」


 飛行隊の指揮官はそう言ってパイロットに命令を出した。


「よぉし、ジャップを倒しに行くぞッ!!」


 パイロット達は意気揚々と愛機に乗り込んでいく。そして搭載された油圧カタパルトから発艦していく。


 発艦していくのは戦闘機、艦爆、艦攻であるが喪失した分だけ発艦している。


 編隊を組んだ移送隊はフレッチャー機動部隊へと目指したのである。



――第二機動艦隊旗艦翔鶴――


「山口長官ッ!! ツラギ島攻略部隊から入電ですッ!! 敵艦載機の空襲を受けたとの事ですッ!!」


 通信兵が艦橋に通信紙を持って山口長官へ報告に来た。


「………来たか」


 山口長官は通信紙を受け取り、電文を見て呟いた。


「これで、第一段目は終了しました。恐らく次は……」


「MO攻略部隊か……」


「はい」


 山口の言葉に将宏は頷く。


「上陸船団を護衛している空母祥鳳、瑞鳳は全て零戦が搭載されている。それに奮戦してもらうしかないな」


 山口長官はそう言った。


「ですね。後は彼等に奮戦してもらうしかないですから」


 将宏は言う。





 そして、五日と六日は特に大きな動きは無かった。


 動いたのは七日の0545。空母翔鶴から発艦した九七式艦攻が空母を含む機動部隊を発見したと電文が来た。




――第二機動艦隊旗艦翔鶴――


「確か………給油艦と駆逐艦の小艦隊だったな?」


 山口長官は将宏に聞いた。


「はい。一応、もう少し詳しく教えろと打った方がよくないですか?」


「むぅ、そうなると電波で敵艦隊に見つかってしまう恐れがあるな」


「ですが長官。索敵は重要です」


 将宏と山口、奥宮が話していると、再び通信兵が艦橋に来た。


「索敵機から追加報告です。先程発見した機動部隊は給油艦一隻、駆逐艦一隻の艦隊と報告してきましたッ!!」


「………攻撃隊の発艦は見送りですね」


「だろうな」


 山口長官は将宏にそう言った。





―――第四艦隊旗艦鹿島―――


「全艦、一時ラバウル方面へ退避する」


 軽巡鹿島の艦橋で井上中将はそう決断する。勿論、敵機動部隊の空襲を警戒してだ。


 それに先程、偵察機であろうSBDドーントレスが飛行していた。ドーントレスは直ぐに迎撃隊の零戦に落とされたが、電波を発していた。


「直ぐにやってくるぞ」


 第四艦隊司令部はそう判断をして祥鳳、瑞鳳に零戦の発艦準備をさせて迎撃機を増やしていた。


 しかし、彼等が第四艦隊にやって来る事はなかった。




「宜しいのですか司令官? 攻撃隊を出さなくて……」


「構わん」


 参謀の言葉にフレッチャーはそう切り捨てた。


「ドーントレスが発見したのは恐らく上陸船団を護衛する艦隊だろう。ルイジアード諸島にいるという事はラバウルから来たのだろう」


「それならば敵機動部隊は……」


「……恐らくはソロモン諸島からだろう。艦隊の根拠地はトラック諸島しかない」


 フレッチャー少将の読みは当たっていた。偵察のドーントレスが発見したのは第四艦隊だった。


「何れはこの艦隊は叩かないといけないが、今は敵機動部隊を優先して叩く。今のうちに発艦準備をしておくのだ。それと偵察機を増やせ」


「イエッサーッ!!」


 珊瑚海海戦は史実と異なる戦いをしようとしていた。


 そして1056、第二機動艦隊から発艦した彩雲がフレッチャー機動部隊を発見した。



――フレッチャー機動部隊旗艦レキシントン――


「……どうやら発見されたようです。撃ち落としますか?」


 通信兵からの報告を聞いた参謀長はフレッチャー少将に訊ねた。


「……いや今更戦闘機を上げても無駄だろう。恐らく落とされずに逃げられる」


 フレッチャー少将は前方の海面を見ながらそう呟いた。


「索敵に出したドーントレスからの発見連絡はまだ無いのかね?」


「は、残念ながら他の敵機動部隊を発見したという報告は……」


「……後手になるが仕方ないな」


 フレッチャーは天井を見ながら呟いた。


「参謀長、ヨークタウンにも伝えて攻撃隊を飛行甲板に上げさせろ。発艦させる」


「え? で、ですがまだ敵機動部隊は見つかっていません」


 フレッチャー少将の言葉に参謀長が慌てる。


「馬鹿者ッ!! 敵の偵察機が現れた方角に向けて攻撃隊を発艦させるのだッ!!」


「あ……成る程」


 参謀長は思わず頷いた。


「悔しいが索敵機からの報告が無い以上、この手段しかない。索敵攻撃は攻撃隊の航続距離から考えると、とてもノーと言わざる得ないが仕方ない。……奴等がいないわけない。必ずいるのだよ……」


 フレッチャー少将はそう言った。フレッチャー機動部隊は彩雲が来た方角に向けて攻撃隊を発艦させた。


 そして彩雲が放った電文は翔鶴にも届いていた。


「山口長官ッ!! 索敵機から入電ッ!! 敵機動部隊を発見したようですッ!!」


 通信参謀が山口長官に駆け寄って通信紙を渡した。


「……河内君、予想通り敵機動部隊がいた。敵空母は二隻だ」


「では長官……」


「うむ、至急攻撃隊を発艦させろッ!!」


「ハッ!!」


 奥宮航空参謀は山口長官に敬礼をして指示を出す。空母翔鶴、瑞鶴、蒼鶴の三隻から準備していた攻撃隊が次々と発艦していく。


「何としても敵空母を沈めるのだッ!!」


 山口長官はそう訓示するのであった。








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