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第三十五話

八八式七五ミリ野戦高射砲は退役が決定して幻想入りしました(笑)

今日は二本更新。






「……今日の空襲は精神的にやられた」


 空襲後に開かれた緊急の会合で山本はそう言った。


「それでも敵爆撃機を撃墜し、史実より遥かに少ない被害だけだったのは幸いと言っていいだろう」


 山本の言葉に東條達が頷く。


「……前田少佐の妹さんが負傷したが大丈夫かね?」


 伏見宮が心配そうに将宏に聞いた。


「はい。左目が失明して身体も負傷しましたが、本人は到ってピンピンでした」


 将宏はそう答えた。余計な心配をかけたくなかったのだ。


「……申し訳ない気持ちだな」


 今回の空襲で死者は三人、負傷者は十五人だった。


「それはミッドウェーでぶつけましょう」


 将宏の言葉に皆が頷く。


「今回の空襲を機に一式十二サンチ高射砲の生産を増やそうと思う」


 参謀次長に就任している永田中将はそう報告をした。一式十二サンチ高射砲は史実の三式十二サンチ高射砲の事である。


 陸軍の高射砲部隊はそれまで高射砲部隊の主力であった八八式七五ミリ野戦高射砲からドイツからライセンス生産中のアハトアハトと一式十二サンチ高射砲に更新中だった。


 史実を知る人間にとって一式十二サンチ高射砲はB-29対策としては効果は抜群である。生産数は既に史実の百二十門を越えていたがそれでも百五十門である。早急に生産が急がれた。


 アハトアハトは対戦車戦闘でも使用出来るので陸軍の主力野戦高射砲になりつつあった。また、B-29対策として十五サンチ高射砲の開発も急がれていた。


 海軍は旧式になった十二サンチ高角砲を横須賀、呉、舞鶴、佐世保を主力に配置させつつ、海軍高角砲で有名な四〇口径八九式十二.七サンチ高角砲も陸揚げされていた。


 海軍は高角砲を史実で有名な長十サンチ高角砲に更新予定であった。しかし、この高角砲は砲身命数が短いのが難点であったが六五口径からあえて五五口径にして砲身命数を増やしたのだ。それでも八九式に比べれれば約半数程になった。


 この高角砲は最初に秋月型防空駆逐艦に搭載され、他の艦艇も順次更新する予定である。


「それで……ドイツ作戦だが……」


「南遣艦隊を使いましょう」


 堀長官の言葉に将宏は世界地図を開けた。


「セイロンとアッヅ環礁は既に我が軍の手中にあります。今は南雲中将の南遣艦隊がいますから南遣艦隊でアフリカ方面を叩きましょう」


「だが角田機動部隊はAL作戦で必要ではないか?」


 堀長官が言う。


 AL作戦とはアリューシャン方面作戦の事である。


「アリューシャン方面には三航戦の扶桑と山城を送りましょう。翔鶴型二隻になる第二機動艦隊には蒼鶴、改装が終了した瑞穂と日進を配備させます」


「……成る程。そしてその陣容でMO作戦はすると?」


「はい」


 堀長官の問い掛けに将宏は頷く。


「本当ならインド方面には捕獲した英空母二隻を使いたかったですが仕方ないです」


 捕獲した英空母二隻は未だにシンガポールで修理中であった。


「問題は油だ。宮様、油の備蓄はどうなっていますか?」


 山本は伏見宮に聞いた。


「既に第一次タンカー船団十隻は内地に帰港して各基地に配分している。第二次タンカー船団十四隻は五月中旬に帰港する予定だ。今のところ船団に被害はない」


 船団の上空には常に零式水偵三機が飛行してガトー級潜水艦に目を光らしている。これによりガトー級潜水艦は既に五隻を葬っている。


「ん? 第二次タンカー船団は二十隻ではありませんでしたか?」


「あぁ六隻はトラックに向かわしている。南方戦線の艦艇の前線はトラックになるからな」


「成る程」


 伏見宮の言葉に山本は納得して頷いた。


 油はタンカーの他にもタンカーを護衛する護衛艦にも積まれていた。油はドラム缶に詰められている。


 一発でも命中すれば火だるまになるのは間違いなかった。


「宮様、出来るだけ作戦までに油を内地に持ってきて下さい」


「あぁ分かっている」


 山本の言葉に伏見宮は力強く頷いた。


 そして会合は終わった。


 この空襲以後、日本陸海軍は各地に早期発見として電探基地の増設と局地戦闘機、高射砲の早期配備を急がせる事になった。




――セイロン島――


「南遣艦隊はアフリカのドイツ軍の支援のためにエジプトに向かう敵輸送船団を捕捉しこれを攻撃してドイツ軍を助けよ……か」


 南遣艦隊司令長官の南雲中将はそう呟いた。


「角田、君の機動部隊は千歳、千代田が抜かれる。代わりに来るのは龍鳳だ」


「やむを得ませんな。だが大暴れしてやるのは決定事項ですがな」


 二人は笑いあう。


「重巡も最上型四隻と捕獲した九頭竜と新高の六隻だ。暴れてやらねば配備してくれた堀長官に恥を掻いてしまう」


 南雲中将はそう言った。


 そして新たな艦艇がセイロン島に到着後、南遣艦隊は補給を完了させると獲物を求めて出撃していったのである。




――四月三十日柱島泊地、旗艦敷島――


「堀長官、南遣艦隊から戦果報告文です」


「うむ」


 堀長官は宇垣参謀長から通信紙を受け取り一読した。


「……成る程。南雲と角田は大暴れしたようだな」


「どのような戦果で?」


 日誌を書いている宇垣はそれを書こうと堀長官に聞いた。


「小型空母一、巡洋艦三、駆逐艦九、輸送船三二隻を撃沈したそうだ」


「おぉ、それは大戦果ですな」


 何時もは黄金仮面である宇垣参謀長の顔も大戦果に綻んだ。


 南遣艦隊はアデン湾を航行していたイギリス輸送船団を捕捉した。


 輸送船団は重砲や弾薬、マチルダ歩兵戦車、陸兵等を多数乗せていた。


 南雲中将は機動部隊と襲撃部隊を分離させて自身は襲撃部隊にいた。


 角田少将は三波にも及ぶ攻撃を繰り返して、護衛に随伴していた英空母アーガスを撃沈して護衛艦艇を叩いた後、襲撃部隊が輸送船団に突入したのである。


 重巡の正確な射撃(重巡部隊の射撃は徹底的に見直されたのである)で炎上していた護衛艦艇は次々と沈められ、護衛艦が空いた穴に駆逐艦が突入して輸送船に必殺の酸素魚雷をぶっぱなした。


 酸素魚雷が命中した輸送船は次々と波間に消えていった。襲撃部隊は撃墜されて漂流していた攻撃隊のパイロット達を拾いながら十分な戦果を確信して撤退を開始した。


 イギリス海軍の増援部隊が到着した時、輸送船団は壊滅しており、浮いていた輸送船は僅かに六隻でその六隻も被弾していた。結局六隻も損傷が激しく沈没処分となり輸送船団は全滅するのであった。


 これ以後、輸送船団は大陸寄りになるが南遣艦隊は関係なく輸送船団を壊滅していき、南雲と角田の名前はイギリス海軍に広く伝わるのであった。


 この攻撃により北アフリカのドイツ軍は更に有利な展開をしていく事になった。










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