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第三十四話

友人に片目負傷で黒のアイパッチはハーロックじゃね?と言われました(笑)






「何とか空襲は阻止出来たな」


 陣風試作機が着陸して将宏が降りる。この時、将宏自身はまだ帝都に一機のB-25が侵入して爆弾をばら蒔いた事はまだ知らなかった。


「た、大変です河内少佐ッ!!」


「どうした?」


 将宏の元に先に着陸した零戦のパイロットが駆け寄ってきた。


「て、帝都が空襲を受けたようですッ!!」


『何ィッ!?』


 パイロットの言葉にその場にいた将宏やヒルダ、他のパイロットや整備兵達まで驚いた。


「ど、どういう事やッ!!」


「超低空飛行で侵入した一機のB-25がいたらしいんです。陸軍の高射砲部隊も急な奇襲に間に合わず……」


「……それで被害は?」


「死傷者は具体的には分かりませんが十数名のようです。家屋も十数件破壊されたようです」


 パイロットの言葉に将宏はホッと溜め息を吐いたが直ぐに横須賀航空隊司令官市丸少将の従兵が来て将宏とヒルダが市丸少将に呼ばれていると報告した。


「……何かあったのか?」


「さぁ? それは私も分からないな」


 二人は首を傾げながら司令官室に入室した。


「おぉ二人とも、迎撃は御苦労であった」


「ありがとうございます。市丸司令官、何かあったのですか?」


「………」


 将宏の言葉に市丸司令官は口をつぐんだ。


「まさか……皇居に爆弾が落ちたのですかッ!?」


「いや皇居には落ちとらん。侵入した敵機は駆けつけた鍾馗が撃墜した」


「それなら……」


「……実は陸軍からの連絡でな。前田少佐の妹が爆撃を受けて重傷との事だ」


『ッ!?』


 市丸司令官の言葉に二人は驚いた。


「正門にくろがねを用意してある。直ぐに収容された病院に向かうのだ」


「は、はいッ!!」


 二人は市丸司令官への敬礼もそこそこに、急いでくろがねに乗り込んで東京の病院へと向かうのであった。





――東京のとある病院――


「霞ィッ!!」


 漸く病院に到着した将宏とヒルダが慌ただしく病室に入ってきた。


 病室にはベッドで眠る霞と兄である前田少佐がいた。


「ま、前田少佐……よ……容態は?」


「……命に別状はない……だがなァッ!!」


「グッ!?」


「前田少佐ッ!!」


 前田少佐が将宏に近づき胸ぐらを掴む。


「何で敵爆撃機を逃したッ!!」


「そ、それは……」


 前田少佐の言葉に将宏は何も言えなかった。


「お前、未来で分かっていたんじゃないのか? 本土が空襲されるのを分かっていたのに何で敵爆撃機を逃したッ!!」


「……全機落としたはずやった。俺もまさか敵爆撃機が超低空飛行で侵入するとは思わなかったんや……」


「言い訳するなッ!!」


 前田少佐が将宏を殴る。将宏が顔を上げると前田少佐は涙を流していた。


「お前が敵爆撃機を見逃したせいで……見ろッ!! 霞は左目を失明してしまった……」


「「ッ!?」」


 将宏とヒルダは霞の顔を見て驚いた。霞の左目には白い眼帯が施してあった。それに少し血が滲んでいた。


「左目失明の他に爆弾の破片が霞の身体に食い込んだりして傷つけた……幸いにも破片は全て取り除いてくれた……けどな、霞はまだ人生があるんだ。それをどうしてくれるんだ河内ィッ!!」


「……………」


 将宏は前田少佐の言葉に何も言えなかった。ただ下を向き、流れる涙を出すばかりである。


「……五月蝿いぞ馬鹿兄上」


「はぎしゅッ!?」


 いつの間にか霞は起きており、近く置いていた花瓶(花はまだなかった)を前田少佐に投げて気絶させた。


「……前田少佐の頭から赤い液体が流れてるけど?」


「気にするな。昨日の夜は何か赤い物でも食べたのだろう。こっそりワインでも飲んでいたんだろうな」


 将宏の指摘に霞はしれっとそう言った。


 流石にそれは危険だったので前田少佐は駆けつけた看護婦に抱えられながら何処かへ行った。


「か、霞……その……」


 将宏は霞に謝ろうとしたけど言葉が出ない。


「ほら、ちゃんと言うのだ」


 横からヒルダが将宏の腹をつつく。


「……怪我させて済まなかったッ!! 俺が……俺がもっとしっかりとしていれば……」


 将宏は霞に土下座をした。


「……完璧なドゲザだな」


 ヒルダがふむと頷く。


「……将宏、さっき馬鹿兄上の言葉を聞いていたが私は後悔などしていない」


「霞……」


「川村のじいさんが身を挺して守ってくれたおかげで左目の失明だけで済んだんだ。それにまだ目は右目が残っているからな」


 霞はそう言って笑う。


「それに……私をこんな目にしたんだ。責任は取ってくれるんだろ?」


「え?」


 霞は顔を赤くしながらそう呟いた。将宏もその言葉はよく知っている。


 それはまさか……。


「ん、んぅ」


 その時、放っておかれていたヒルダが我は此処にいるぞとばかりに咳をする。


 将宏と霞はハッとして視線を剃らす。そして二人の間には気まずい雰囲気である。(そらそうだ)


「……私を置いておかないでくれるかな?」


「いやそんな気は……」


 ヒルダはニコニコしながら言うが、その笑みは非常に怖いものであった。


「フフフ、カスミは怪我をしているからこんな事は出来ないからな」


 ヒルダはニヤリと笑い、将宏の左耳を軽く噛んだ。


「ちょ、ヒルダッ!?」


 いきなりの事に将宏が驚く。


「おま、何かキャラおかしくないかッ!?」


「お前らがイチャラブするから私もおかしくなってきたんだよ」


「メタ発言すんなッ!!」


「……………」


 霞は将宏とヒルダのイチャラブを見てシーツを強く握り締める。


 少しビリっと破れたのはたまたま古くなっていたのだろう、いやそうであってほしい。


 将宏はそう思った。


「それにマサヒロを狙っているのはカスミだけじゃないからな」


「え?」


 ヒルダの言葉に将宏は驚く。


「フフフ♪」


 ヒルダは笑って将宏の右頬を舐めた。


「な、な、なッ!?」


 将宏は右頬を押さえて顔を真っ赤にする。


「……………」


 霞はそれを見ながら怒りに満ちていた。


「俺は許さないからな〜〜〜ッ!!」


 ふと前田少佐のそんな声が聞こえたのは気のせいであろう。


 今や病室は暗い雰囲気ではなく闘志が溢れた二人の女性の熱気があった。


 龍と虎………いや犬と猫の戦いだろう。


「……オチは?」


 そんなの無い。





 ちなみに、ヒルダが将宏に対しての好意らしきものを持ったのはある事が原因である。


 前田家へ在宅中の夜中、たまたまヒルダが尿意で目覚めて厠へと行ったが、夜中であり寝ぼけである。


 そして部屋に戻って寝たはずなんだが……これが将宏の部屋であった。(ベタ? んなもん気にするな)


「……〜〜〜ッ!?」


 目が覚めれば将宏が横で寝ているのである。しかもヒルダの尻を触っている。(無意識)


 ヒルダは叫ぼうと思ったが部屋が将宏の部屋である事に気付いて自身が寝ぼけて入ったと即座に分かった。


「……これは仕方ない事か」


 ヒルダは溜め息を吐いて将宏をジロジロと見た。


「クク、カスミも面白いものだな。ぽっちゃりで眼鏡をかけているこいつに興味があるなど……」


「ん……」


「ーーーッ!?」


 その時、将宏は寒さを感じたのか布団を被ろうと手を伸ばしたが伸ばした先がヒルダの肩であった。


「へ?」


 そして将宏はそのままぐいっとヒルダを抱き締めた。しかも前田の顔は胸に当たっている。


「〜〜〜ッ!?」


 ヒルダは慌てて戦線から離脱した。そして将宏の部屋を出て自身の部屋に向かう。


「……何だ胸がドキドキする……」


 将宏の顔がヒルダの胸に当たった時、ヒルダの心拍数は急激に上がっていた。


「……何なんだ……」


 その日、ヒルダが朝食に降りて来るのは少し遅れた。










御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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