第三十三話
取りあえずは復活。
一方、アメリカはアメリカで真珠湾の報復のために日本本土空襲を目論んでいた。
「ジャップの頭上に爆弾を落としてやるのだッ!!」
ルーズベルトはそう叫び、作戦が開始された。空母ホーネットにB-25十六機が搭載されている。
その護衛には大西洋から回航された空母ワスプが担当している。そして日本海軍が発見したのは四月十五日のことだった。
呂三五潜が哨戒中に敵機動部隊を発見したのである。報告を受けた日本陸海軍は直ちに迎撃体勢を整えた。
「即刻、第一艦隊と吉良機動部隊を出撃させるべきですッ!!」
聯合艦隊参謀長の宇垣少将が旗艦敷島で吠える。
「……落ち着け宇垣。第一艦隊は出撃準備中だ。吉良の機動部隊は航空機が少ないから出撃させるかは微妙だ」
柱島泊地にいた第一艦隊は出撃準備中であった。しかし、吉良少将が司令官をする臨時機動部隊は微妙だった。
吉良機動部隊には改装が終了した空母蒼鶴、祥鳳、瑞鳳の三隻だったが、搭載する航空機は零戦三六機、九九式艦爆二七機、九七式艦攻三六機と百機を切っていたのだ。
「ですが帝都にアメリカの奴等を近づかさせてはなりませんッ!!」
「それは分かっている……が、山本は守勢でやる気だ。横須賀基地で新型機の試験をやっているが全て中止をして実弾を装填させているようだ」
「……山本さんは肝が大きいのか、元から無いのか分からないですね」
「それもそうだな」
宇垣参謀長の呆れたような言葉に、堀長官は苦笑しながら頷いた。
そして運命の四月十八日を迎えた。
――横須賀基地――
「大島の電探基地より入電ッ!! 敵機来襲ゥッ!!」
通信紙を持った通信兵がパイロットの待機所に駆け込んできた。
「全員出撃やッ!!」
報告を聞いた将宏が叫びながら滑走路に走る。ちなみに飛行服を着ていて自分も出撃する気である。
滑走路には試運転を済ました零戦三二型、雷電試作機、陣風試作機があった。
将宏とヒルダは陣風試作機の一号機と二号機に乗り込む。迎撃隊はエンジンを始動してプロペラを回して次々と離陸していく。
その頃、東京、神奈川、千葉等の関東地方一帯には空襲警報が発令された。
『ウウゥゥゥゥゥーーーッ!!』
「空襲警報発令ェッ!!」
「将宏……」
空襲警報が鳴る中、霞は空を見ながらそう呟き防空頭巾を被り防空豪へと向かった。
「いたでB-25やッ!!」
将宏は前方から飛来してくるB-25を発見した。
日本軍の戦闘機隊を発見したドーリットル隊は直ぐ様四方に四散した。
「奴等を逃がすなッ!! 全機叩き落とせェッ!!」
将宏は逃げていく一機のB-25に狙いを定める。B-25からは旋回機銃が反撃してくるが当たる気配はしない。
「墜ちろォッ!!」
将樹が三十ミリ機銃の発射レバーを引いた。
主翼から発射された三十ミリ機銃弾はB-25の右翼をへし折った。へし折られたB-25は海面に墜落していく。
そこへ厚木空、館山空等が到着して一方的な迎撃になる……筈であった。
「敵機だァッ!!」
「海軍は何をしていたんだッ!!」
陸軍の高射砲部隊が喚きながら接近してくるB-25に撃つ。
一機のB-25が低空飛行で東京に侵入したのだ。
東京は陸軍の管轄だが東京の空は陸海軍飛行隊の管轄であった。
陸軍の八八式七五ミリ野戦高射砲が撃たれる中、B-25は爆弾倉を開いた。
「ヤバイぞッ!!」
高射砲員が叫んだ。
「くたばれジャップッ!!」
そして爆弾倉から爆弾が投下された。
そしてそのうちの一発は霞が逃げ込んだ防空豪付近に向かっていったのである。
「あ、アメ公の野郎が爆弾を落としやがったッ!? 此方に落ちてくるぞッ!! 逃げろォッ!!」
霞が入った防空豪の入り口で戦況を見ていた中年の男性が叫びながら走った。
『ワアアァァァァァーーーッ!!』
それに釣られて防空豪にいた二十人くらいの人間が逃げ出していく。
「うぉッ!?」
霞も防空豪から逃げようとした時、霞の家に近所に住む川村のじいさんが入り口付近で転んだ。
「大丈夫ですか川村のじいさんッ!?」
それを見ていた霞がじいさんを起こす。
「霞ちゃん、儂の事はいいから早く逃げるんだ」
「でも……」
霞は急いでじいさんの肩を持って防空豪から逃げる。
「ッ!? 間に合わないッ!!」
霞は落下してくる小型の爆弾を見ながらじいさんを守ろうとする。
「止すんじゃ霞ちゃんッ!?」
じいさんが咄嗟に身体を捻って逆に霞を守ろうとする。そして爆弾が防空豪に命中した。
ズガアァァァーーンッ!!
「グッ!?」
霞は爆風で顔を剃らそうとした時、左目に急激な痛みを感じた。更に身体も痛みを訴えている。
他の爆弾は近くの民家に命中して炎上する。
「だ……大丈夫かい霞ちゃん?」
霞を爆弾の爆風から守ったじいさんが霞に聞いてきた。二人は吹き飛んできた資材や材木の下敷きになっていた。
「……あぁ、私は無事だ。負傷したが生きている。じいさんは……」
霞がじいさんを見た時、じいさんの背中に材木が突き刺さっていた。
「……じいさん」
「儂の事は気にするな。どうせ先は短いんじゃ……霞ちゃん、幸せに生きるんじゃよ……」
じいさんの呼吸がだんだんと荒くなっていく。
「誰かいないのかァッ!!」
「無事か霞ちゃんッ!!」
その時、霞の叫びに近所のオッサンが走ってきた。
「か、霞ちゃんッ!? 怪我しているぞッ!!」
救助に来たオッサンが驚く。そして数人の中年男性も救助に来て二人を救助する。
「そうか、痛みは負傷していたのか……」
霞は痛みが激しい左目の付近を触る。霞の左手は赤い液体が付着していた。
「と、兎に角病院だッ!! 誰か来いッ!! 川村のじいさんの容態はッ!!」
「……駄目だ。もう息を引き取っている」
「……………」
霞は男性達の声を聞きながらゆっくりと地面に倒れた。
「おい霞ちゃんッ!!」
「くそ、アメ公の奴等め。霞ちゃんも出血が激しいぞッ!!」
「急いで病院に運ぶぞッ!!」
『オォッ!!』
男性達は急遽担架を作って走って気絶した霞を病院まで運ぶのであった。
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