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第三十一話






 その頃、ヨーロッパ戦線はどうなっていただろうか。


 ドイツはアシカ作戦を中止してイギリス攻略を一先ず諦めた。アシカ作戦が中止した事に一番の歓声を上げたのはやはりイギリスだろう。


 そして次に危機感を持ったのがソ連である。スターリンも警戒はしていたが、ドイツが侵攻するのはまだ先であろうと判断していたのだ。


 アフリカ方面では当初はイタリア軍が展開していたがエジプトにいるイギリス軍の善戦にムッソリーニはヒトラーに援軍を要請した。


 この時のヒトラーはバルバロッサ作戦のために兵力を送る余裕はなかったが、イタリア軍が早期に戦線離脱するのは望まなかったので一人の将軍と僅かばかりの兵力を送った。


 これが後に「砂漠の狐」の異名をとるエルヴィン・ロンメル中将であった。


 ロンメル中将が指揮すればドイツ、イタリア軍は連戦連勝していた。イギリス軍は歩兵戦車マチルダ2を押し立ててドイツ、イタリア軍の津波を阻止しようとしたがドイツ、イタリア軍はマチルダ2を上回る戦車を出していた。


 四号戦車F型とP25/42重戦車である。二種類は史実とはかけ離れた性能であった。


 四号戦車F型は史実のH型である。これは冬戦争後に日本から購入した九七式中戦車がドイツ側の予想を越えた装甲を持った戦車(前面装甲七五ミリ)であり、報告を聞いたヒトラーも「ヤーパンの戦車を越える戦車を作るのだッ!!」と急ぎ四号戦車の改良を言い渡したのである。


 その結果、H型がF型(口径は史実の四八口径ではなく九七式中戦車と同等の五十口径である)になる事態になったがヒトラーの機嫌は良かったので良かったのだろう。


 イタリア軍のP25/42重戦車は同じく冬戦争後に日本から購入した九七式中戦車をライセンス生産した戦車である。


 当初は日本の九七式中戦車をライセンス生産するか迷ったが、陸軍の戦車砲が九七式の装甲を貫けない以上つまらない意地を張るのは止めた方がいいと方向転換をしてライセンス生産を求めたのである。


 勿論日本側もライセンス生産を許可した。


 この二種類の戦車の登場に北アフリカのイギリス軍は思わぬ苦戦を強いいられてしまうのであった。


 そして肝心のバルバロッサ作戦であるが史実通りにソ連の領内に入り込んでいた。戦闘は四号戦車F型を前面に押し立てたドイツ軍が有利であった。


 ソ連軍も戦車部隊を出したが一蹴されていた。しかし、ドイツ軍も後にソ連の冬に阻まれてしまい第六軍が壊滅寸前までになるのだがそれはまだ先の事である。


 そして四月上旬、第一機動艦隊はセイロン島付近にまで接近していた。


「小沢長官、コロンボ攻撃隊の発艦準備完了しました」


 内藤航空参謀が小沢長官に報告をする。


「うむ、直ちに発艦させよ」


「攻撃隊発艦ッ!!」


 四隻の空母から爆装した攻撃隊が発艦していく。


「……山口の第二機動艦隊は見つかっていないだろうな?」


「発見されたという報告は無いのでまだでしょう。向こうも昨日発見された我々に注目しているはずです」


 古村参謀長が言う。


「ならば敵は我々しかいないと思っているだろうな。第二機動艦隊はアッヅ環礁を奇襲攻撃してもらわないとな」


 小沢長官はニヤリと笑う。



 一方、山口中将率いる第二機動艦隊はアッヅ環礁へと目指していた。


 第二機動艦隊の後方には海軍陸戦隊二個連隊と、八九式中戦車乙改一個中隊を乗せた高速輸送船九隻と海護の護衛駆逐艦六隻、工作艦明石、三月に竣工したばかりの三原が航行している。


 なお、三原は明石同様にドイツ製の工作機械を積んでいる。


「山口長官、攻撃隊発艦準備完了しました」


 第二機動艦隊航空参謀の奥宮少佐が中将に昇進したばかりの山口多聞に言う。


「……敵がいてくれていいんだがな」


 第二機動艦隊参謀長の伊崎俊二少将はそう呟いた。


「いるぞ参謀長」


 前方の海面を見ていた山口長官はそう言った。


「セイロン島を手放す事はイギリス軍は到底出来ない。イギリスの原動力はインドだ。セイロン島を押さえられたらインドを手放したも同然だ。イギリスはそれを避けねばならんから必ずいる」


 山口長官はそう言って奥宮航空参謀を見た。


「奥宮、攻撃隊発艦をさせよッ!! 徹底的に叩くのだッ!!」


「了解ッ!!」


 奥宮航空参謀は叫んだ。


 その頃、セイロン島上空は高射砲による対空砲火で黒く染まっていた。


 その対空砲火の少し上を、爆装した九七式艦攻隊が飛行している。


「……獲物は少ないみたいやな」


 双眼鏡で眼下を観察していた第一機動艦隊から出撃した攻撃隊総隊長の淵田中佐はそう呟いた。


 港は村田少佐率いる雷撃隊十八機による雷撃で停泊していた仮装巡洋艦や輸送船に被害を出させていた。


「しゃーない、各機目ぼしい物に攻撃させるか」


「後方から敵機接近ッ!!」


 淵田中佐が呟いた時、水野一曹が叫んだ。水平爆撃隊の後方からイギリス軍のハリケーン戦闘機四機が接近してきたのだ。


「全機密集隊形やッ!! ジョンブルに九七式艦攻の機銃弾を食らわしてやるんやッ!!」


 水野一曹は十二.七ミリ機銃のコッキング・ハンドルを後方に引いて前方に戻す動作をしてから接近してくるハリケーン戦闘機に狙いを定める。


 真珠湾作戦から空母に搭載されている九九式艦爆と九七式艦攻は共に零戦と同じ金星を搭載して旋回機銃はアメリカからライセンス生産されたブローニング十二.七ミリ機銃に統一している。


 しかしハリケーン戦闘機は突然、エンジンから火を噴いて墜落した。


「なッ!?」


 機銃手が驚いた時、下方から零戦二機が上昇してきた。


 ハリケーン戦闘機を撃墜したのはこの零戦二機だったのだ。


 しかしハリケーンはまだ二機残っており、ハリケーンの七.七ミリ機銃弾が淵田中隊の二機に叩き込んだ。


 いくら豆鉄砲である七.七ミリ機銃弾でも集中して食らえば火を噴くのも当然だった。二機はスパイラルダイブをしながら落ちていく。


 二機から脱出する搭乗員は無かった。そこへ先程の零戦が戻ってあっという間に二機を叩き落とした。


 二機の零戦は水平爆撃隊に軽くバンクをしてから獲物という名のハリケーン戦闘機を探しに何処かへと行った。


「……危機は去ったみたいやな。ほんなら爆撃に入るでッ!!」


 淵田中佐は照準器を覗く。淵田中佐は港にある倉庫を狙った。


「用ぉ意……撃ェッ!!」


 淵田中佐が投下策を引くと九七式艦攻の腹に付けていた五百キロ陸用爆弾が投下された。


 投下された五百キロ陸用爆弾は見事に命中して倉庫を破壊、列機の五百キロ陸用爆弾も同様に倉庫等を破壊したのである。






御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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