第二十四話
てなわけで開戦です。
――真珠湾上空、淵田中佐機――
「水木ッ!! 赤城に打電やッ!! 真珠湾上空には敵機はおらんッ!!」
淵田中佐は後部座席にいる水木一飛曹に言って風防を開けて信号銃を一発撃った。
一発は奇襲成功であり、二発目は強襲である。
村田少佐率いる雷撃隊が一気に降下して二列に並んだ米戦艦群の外側の戦艦群を狙いにいく。
「用ぉ意……」
雷撃隊は高度五メートルを飛行して村田少佐は投下索を握る。勿論戦艦からの反撃は無い。
「距離七百ッ!!」
「撃ェッ!!」
村田少佐が投下索を引いて魚雷を投下した。九七式艦攻は投下した反動を利用して上昇していく。
「おい、何だあれは?」
「高度規定違反じゃないか?」
村田少佐に狙われた戦艦カリフォルニアの艦上でカリフォルニアの乗組員達が言いまくるが上昇していく九七式艦攻を見て「あ」と呟いた。
「赤い丸印の国際標識……ジャップだッ!!」
「じゃあ、あれは……魚雷だとッ!?」
直ぐそこまで迫り来る魚雷に乗組員達は慌て出す。そしてカリフォルニアに魚雷が命中した証拠である水柱が立ち上ったのである。
一方、板谷少佐率いる零戦隊はオアフ島の各航空基地へ侵入して滑走路の脇に駐機していたP-40等の戦闘機群を機銃掃射していた。
「喰らえッ!!」
板谷少佐は二十ミリ機銃弾のレバーを引き、操縦桿上部にある十二.七ミリ機銃弾の発射ボタンを押した。
機首から十二.七ミリ機銃弾とその薬莢が飛び出し、薬莢は後方へと向かう。
主翼の二十ミリ機銃弾も同様で、大きい二十ミリ機銃弾の薬莢が主翼下から飛び出している。そして発射された弾丸は翼を休めていたP-40戦闘機群に次々と命中していく。
しかも燃料は満タンだったようで次々と誘爆していく。
「仕上げは任したぞッ!!」
機銃掃射して上昇していく零戦の操縦席で板谷少佐は上空を飛行している九九式艦爆を見つめた。
――高橋少佐機――
「行くぞォッ!!」
高橋少佐は操縦桿を倒して急降下爆撃に入る。
急降下で目標の格納庫がみるみるうちに迫ってくる。
「高度六百ッ!!」
「撃ェッ!!」
高橋少佐は高度六百で二百五十キロ爆弾を投下した。投下された二百五十キロ爆弾は見事に格納庫に命中。
命中した格納庫は炎上した。
――第一航空艦隊旗艦赤城――
「小沢長官ッ!! 淵田中佐機より入電ですッ!!」
通信兵が通信紙を持って艦橋に駆け込んできた。
通信兵は小沢長官に通信紙を渡すと敬礼をして艦橋を出た。
「……そうか」
「小沢長官、電文は……」
内藤航空参謀が聞いてきた。
「電文は『トラ・トラ・トラ』だ」
『オォォッ!!』
小沢長官の言葉に参謀達は喜ぶ。
「……遂に始まったな……」
将宏はそう呟いた。更に、続々と第一次攻撃隊から電文が来た。
「村田少佐、高橋少佐までも来ているな」
いずれも日本海軍のベテランである。
「……真珠湾を潰せば後は……」
将宏はそう言って前方の海面を見た。
「狙うんはあの戦艦やッ!!」
淵田中佐は戦艦アリゾナを狙うよう指示を出す。水平爆撃隊は高度三千ではなく二千で爆撃しようとしていた。
未だに戦艦群からの対空砲火は無いのである。
「用ぉ意……」
水平爆撃隊の先頭機が照準をする。
「撃ェッ!!」
先頭機が八百キロ徹甲爆弾を投下した。
それに続いて列機も投下していく。
水平爆撃隊は爆弾を投下すると、まだ撃っていないが対空砲火の圏外へと離脱していく。
ここで漸く対空砲火が撃ち出され始める。
しかしその抵抗も遅かった。
八百キロ徹甲爆弾は次々と戦艦群に命中したのである。
ズガアァァァーーンッ!!
「オォォッ!! あれを見ろやッ!!」
それを目撃した淵田が驚いた。淵田中佐の中隊が投下した八百キロ徹甲爆弾は狙ったアリゾナに三発が命中した。
そのうちの一発はアリゾナの前部火薬庫に命中。アリゾナは艦主部分が破壊されて、アリゾナに大量の海水が侵入してくる。
アリゾナが大破着底するのも時間の問題だった。
また他の戦艦にも八百キロ徹甲爆弾の被害が拡がっていた。
「総隊長、真珠湾の戦艦はあらかた爆撃しました。乾ドックにいる戦艦は無理ですけど」
この時、乾ドックにはペンシルベニアがいたが第二次攻撃隊の九九式艦爆が急降下爆撃で爆弾三発が命中して中破になる。
「よし、ほんなら後は第二次攻撃隊や第三次攻撃隊の奴等に任せよか」
淵田中佐はそう言って攻撃が終了して間もない航空機を率いて第一航空艦隊へと帰還していったのである。
それと入れ替わりに嶋崎少佐を総隊長にした第二次攻撃隊が到着したのである。
「攻撃目標は敵飛行場及び真珠湾の施設だッ!! 艦艇の攻撃も許可するが無茶はするなッ!! ト連送を打てッ!!」
嶋崎少佐機から『突撃せよ』の意味であるト連送が発信された。
ト連送を受信した攻撃隊は、各攻撃目標に分かれて一斉に突撃を開始するのだった。
「ジャップの第二波だッ!!」
「撃て撃てッ!! ジャップを撃ち落とせェッ!!」
第一次攻撃から生き残った艦艇の乗組員達は対空砲や機銃にしがみつき、対空射撃を開始する。しかし、それを嘲笑うかのように九九式艦爆が急降下爆撃を敢行していく。
「駄目だ命中するぞッ!!」
生き残っていた駆逐艦に九九式艦爆から投下された二百五十キロ爆弾が命中する。
艦艇群も必死に対空射撃をするが九九式艦爆や九七式艦攻の速度が速すぎて追いつかないのである。そして漸く艦艇群は動き出して、生き残った艦艇群が真珠湾から出港しようと出入口へ向かう。
一番の大型艦は魚雷を史実より多めの三本を受けていた戦艦ネバダであった。
「如何ッ!! ネバダを外に出すなッ!!」
「な、何故ですか?」
アメリカ太平洋艦隊司令長官のキンメル大将は叫んだのを参謀が聞いた。
「分からんのかッ!! ネバダが脱出中にあの水路で攻撃されたらどうするんだッ!! あの水路で大破着底なんぞされたら真珠湾は封鎖されたも同然だぞッ!!」
「ぁ……」
キンメル長官の言葉に若い参謀はあっと呟いた。
「急いでネバダに知らせろッ!!」
命令を受けたネバダは慌てて停止して後進で水路から戻ろうとするが、そこへ二七機の九九式艦爆がネバダへ襲い掛かったのである。
「敵機だァッ!!」
「撃て撃てェッ!!」
ネバダの対空砲が慌てて仰角をとって射撃を開始する。この射撃で九九式艦爆は二機が撃墜され、被弾損傷で七機が伊号潜水艦の場所で不時着水をする事になる。
そして二五発の二百五十キロ爆弾は七発が至近弾となったが、残りは全て命中したのである。
本来なら回避運動をするのだが、狭い水路では回避運動も出来ないのだ。更にネバダには運が無かった。
二百五十キロ爆弾の一発が艦橋に命中したのだ。これにより艦長以下艦橋にいた者は全員戦死した。
また老朽艦であるために十八発の二百五十キロ爆弾を耐えきる事は出来なかった。
魚雷により浸水を食い止めていたのに命中による衝撃で再び浸水が始まった。ネバダの行き足は水路で完全に停止して、浸水により着底してしまったのである。
「……何て事だ……」
太平洋艦隊司令部からそれを見ていたキンメル長官は頭を抱えた。
その時、窓から銃弾が入り、銃弾はキンメル長官に命中するがキンメル長官に異変はない。
「……この弾で死ねたらよかったッ!!」
参謀達は何も言えなかった。しかし、その時司令部上空には二機の九九式艦爆が司令部を目標にして二百五十キロ爆弾を投下した。
瞬く間に命中して司令部は崩壊してキンメル長官は戦死したのであった。
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