第二話
「よく眠れたかな河内君?」
「は、何とか眠れました」
翌朝、目を覚ました将宏の元へ陛下がやってきた。
「朝食後に会ってほしい者達がいる」
「会ってほしい者達ですか?」
「うむ、誰かは会ってからだな」
「分かりました(……米内光政とかは嫌やな)」
そして陛下と将宏は帝国ホテルへと向かった。
――帝国ホテル、とある一室――
「……貴様が未来から来たとか抜かした日本人か。私は陸軍大臣の林銑十郎だ」
「私は鉄道大臣の内田信也だ」
「(……大物過ぎるよ陛下……)」
将宏は溜め息を吐いた。そして将宏は一つ一つ丁寧に林大臣と内田大臣に自分が此処に来た理由を丁寧に説明をした。
〜〜説明中〜〜
「……というわけで、自分は今此処にいます」
「……ふざけるのもいい加減にしろッ!! 日本がアメリカに負けるだとッ!!」
林大臣は激怒していた。
「貴様はそうやって陛下に近づいて裏から操るつもりだろうがそうはやらせんぞッ!!」
「いや違うんすけど……」
「黙れェッ!!」
「落ち着かんか林ィッ!!」
その時、陛下が叫んだ。
「へ、陛下……」
「……林、気持ちは分かる。だが、河内が持ってきた本、携帯、パソコン、ゲームソフトはどう説明するのかね?」
「しかし……」
「……林さん。私は信じてみるよ」
黙っていた内田大臣が口を開いた。
「う、内田大臣ッ!? それは本気かッ!!」
「あぁ。この未来の物を見ていたが到底、今の日本の科学力はもとい、アメリカやドイツでは実現不可能だ」
内田大臣はそう言ってパソコンを見ていた。
「……それは確かに分かるが……」
「林、頼む。この通りだ」
『へ、陛下ッ!?』
何と陛下が林大臣に頭を下げたのである。
「林、河内君を信じてやってほしい。日本を……日本を破滅から救いたいのだ」
「……」
流石の林大臣も陛下にそう言われては何も言えなかった。
「……分かりました。未来人であるかはさておき、話しと河内の存在は認めましょう」
「……ありがとうございます林大臣」
将宏は頭を下げた。
「ただしだ。貴様の実績を見てから決める。陛下もそれで構いませんか?」
「良かろう。河内、思う存分暴れてほしい」
「は、分かりました」
将宏は陛下にそう言った。
「次に海軍と会うのだが、林達も同席してほしい」
「分かりました」
「あの陛下……海軍は誰と会うのですか?」
将宏は恐る恐る陛下に訊ねた。
「一応は伏見宮と会おうと思うが何か問題があるのかね?」
「いえ、伏見宮様なら大丈夫です(良かったぁ……)」
将宏は陛下に見えないところで安堵の息を吐いた。
それから二時間後、将宏達は伏見宮と面会をした。
「へ、陛下。御冗談はお止め下さい。林大臣達も儂をからかっているのだろう?」
伏見宮は顔を引きつる。
林大臣達同様に将宏は伏見宮に説明をしていたのだ。
「「……………」」
しかし、林と内田大臣は伏見宮の言葉に何も言わなかった。
「……陛下。本当なのですか?」
「だからそうだと言っておろう。携帯とパソコンも見せたのに……」
冷や汗をかく伏見宮に陛下は溜め息を吐いた。
「ですが、十年後に日本が降伏するなど誰が信じますか?」
「まぁそれはそうであるがな……」
陛下は苦笑する。それも当然の事である。
「それで伏見宮。貴様の力を貸してくれまいか?」
陛下は真剣な表情で伏見宮を見た。
「……分かりました。陛下の命とならば」
伏見宮は陛下に頭を下げた。
「ところで河内と言ったな?」
「はい、そうですが」
伏見宮は将宏に声をかける。
「これは軍機なのだが……横須賀航空基地で正体不明の戦闘機群とその発動機が見つかって大騒ぎとなっているが、もしかして君のと関係してないかね?」
「……大いに有りそうです。是非とも横須賀航空基地に行きたいですが……」
「ふむ……なら朕も同行しよう。朕もその戦闘機を見てみたいな」
「へ、陛下もですか?」
伏見宮が驚いた表情をする。
「なに、構わんではないか」
陛下はそう言った。
そして将宏達一行は急遽横須賀航空基地へと向かったのである。
――横須賀航空基地、格納庫――
「取りあえずは格納庫に収容して箝口令を引いてあります」
少佐の階級章を付けた技官が将宏達に説明をする。
「河内、これはやはり……」
「……はい。自分が逆行する前に展示されていた烈風達です」
将宏の目の前には、将樹が逆行する前に写真を撮っていた零戦、烈風、疾風等が置かれていた。
「むぅ、これが陸軍の疾風という戦闘機か……」
林大臣と特別に呼ばれた中島航空の中島知久平は四式戦『疾風』を見ていた。
「疾風は大東亜決戦機と呼ばれてましたが、エンジンの誉が繊細過ぎたので稼働率は低かったそうです」
「成る程……」
林大臣が頷いた。
「直ぐに空技廠と陸軍のところに移送すべきだな」
「中島さん、疾風を作れないか?」
疾風を見ていた林大臣が言った。
「作れる事は作れるが、我が国の工業力は低いからな。揃えるくらいなら出来るが、エンジンが稼働するかは別ですな」
中島社長はそう言った。
「その辺のところは明日にでも自分が言いましょう。流石に今日はもう遅いですから」
将宏は腕時計を見ながらそう言った。
既に時刻は夜の九時に差し掛かろうとしていた。
「それもそうであろう。河内、今日も皇居のところで泊まりなさい」
「お心遣い感謝致します陛下」
将宏は陛下に頭を下げた。
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