第十四話
流用です。次話は冬戦争になります。流用は今のところ真珠湾まででウェーク島からは変えていく予定です。
「……ドイツ空軍所属テストパイロット、ヒルデガルト・石原・ヘルミンク少尉……か」
将宏はあの後、胴体着陸をした女性――ヒルデガルト・石原・ルミンク少尉の履歴を見ていた。
「父親がドイツ人、前の母親はドイツ人、その後母親は病で亡くなり父親はドイツへ留学に来た日本人と年の差結婚。日本人の母親の影響もあり日本通で日本語ペラペラ。しかし両親は既に事故死して孤児院へその後空軍のテストパイロットとして入隊。空軍では航空機を損傷したり破壊したりしている……クラッシャーやな」
将宏が苦笑する。
「ん? ……日本が良ければヘルミンク少尉を我々は手放すやて?」
履歴の文章に将宏は首を傾げた。
「……取りあえず本人を呼んで聞いてみるしかないな」
将宏はそう言ってヘルミンク少尉を呼び出した。
「あぁ、それは私が要らない子だからだな」
飛行服のままのヘルミンク少尉は将宏にそう言った。
「……何かやらかしたというわけか?」
「上司が私のお尻とか触ってきたんだ。ムカついたから私は上司をシバき倒して、上司の家庭に色々とやって家庭を崩壊させたんだ。いやぁあの時の上司の顔は快感だったな。ハッハッハ」
そう言ってヘルミンク少尉が笑う。
「それで空軍で危険人物になった私は、日本に戦闘機を送るというからそれに便乗してきたわけだ。ついでに空軍も厄介払いとして私を売ろうとするわけなんだ。まぁ私もドイツには未練は無いけどな」
ヘルミンク少尉はそう言う。
「……そうか(おいおい、これはひょっとすると俺ヤバくないか?)」
将宏はそう思った。嫌な予感なのは間違いないだろう。
「取りあえずこの事は上に報告しておくからな」
「それで構わない」
ヘルミンク少尉は頷いた。
「……それは本当かね?」
伏見宮が驚いた。
「はい。他のドイツ人パイロットから聞いたんですが、ヘルミンク少尉は戦闘機五機、練習機三機を壊しているようで軍上層部からかなりの危険視されていたようです」
「……しかしな、如何にドイツ空軍でもそう簡単に女性パイロットを手放すものかね?」
「自分には分かりませんが、少なくともドイツ国内にもテストパイロットとして女性パイロットが多数いるみたいです。なのでヘルミンク少尉を手放しても問題は無いみたいです。というよりも貴重な機体を壊すのが厄介みたいで……」
「むぅ……」
伏見宮が腕を組む。
「一応彼女はポーランド侵攻時に実践経験をしているようでポーランド空軍のP.11c戦闘機を二機撃墜しているようです。それに壊した戦闘機五機はいずれもBf109です。Bf109は主脚の強度は不十分なので壊すのも仕方ないかと思います」
将宏はそう言う。
「……まぁパイロットが一人増えるから構わないか。今の日本は一人でもパイロットは欲しいからな」
伏見宮は溜め息を吐いた。
「ただ、ドイツ空軍側にはヘルミンク少尉が自ら日本軍に志願したとするしかない。この内容を見てたら人身売買ものだからな」
伏見宮はそう言った。
「分かりました。ヘルミンク少尉にもそう伝えておきます」
将宏は頷いて部屋を出ようとする。
「あぁ待て。ヘルミンク少尉だが、君の副官にするから」
「……ハヒ?」
伏見宮の言葉に将宏は裏声を出した。
「ヘルミンク少尉の事を報告してきたのは河内君だろう。それにヘルミンク少尉を擁護していたからな」
「(いや別に擁護はしてないです)」
将宏はそう言いたかったが、心の中で言っておいた。
「それに何かと面白そうだからな。特に前田少尉の妹との争いが……」
伏見宮がボソッと本音を言った。
「それが本音じゃないですかッ!!」
「いやいや儂としては三角関係というやつか? その方が面白そうだからな」
「この人最悪やッ!!」
将宏は思わず叫んだが、叫ばずにはいられなかった。
「言っておくが拒否権は無いからな」
伏見宮はフフフと笑いながら言う。
「……分かりました(胃薬が必要になりそうやな)」
将宏は諦めてそう言った。
「というわけで、ヘルミンク少尉は俺の副官になったからな」
「ヤー。これから御世話になる」
ヘルミンク少尉は敬礼をするがニヤニヤしている。
「(……大丈夫やろうか)」
「(頑張れ青年……)」
将宏は溜め息を吐き、報告をたまたま聞いたドイツ空軍整備員は心の中で将宏を励ますのであった。
「よし、ヘルミンク少尉の日本軍加入を祝して飲みに行くか」
場を読んでいるのか読んでいないのか分からない前田中尉(昇格)はそう言った。
「……んで一番に酔っぱらうのはあんたかよ……」
将宏はおんぶをしながら前田中尉を背負っていた。
「だがこの男は意外と面白かったな」
ヘルミンク少尉はホロ酔いなのか、頬を赤くして少しフラフラと歩いている。
「ほらヘルミンク少尉もフラフラするな」
将宏はそう言ってヘルミンク少尉の手を取る。
「にゃ?」
「いやにゃ? やないから。もうすぐ前田中尉の家に着くから今日はそこで泊まらせてもらう」
どう見ても水交社に帰れる様子ではなかった。
そして程なくして前田中尉の家に到着した。
「すんません霞さん?」
将宏が呼ぶと、奥からパタパタと音がしてきた。
「む? 河内ではないか? ……また馬鹿兄上が酔っ払ったか……そちらは?」
酔っ払った前田中尉に溜め息を吐いた霞がヘルミンク少尉を見た。
「ども、今日から日本軍に加入した元ドイツ空軍テストパイロットのヒルデガルト・石原・ヘルミンク少尉だ。ヒルダと呼んでくれ。河内中尉の副官だけどよろしく頼む」
ヘルミンク少尉は上機嫌で霞に挨拶をする。
「……そうか、私は前田霞だ」
霞は少し顔を引きつらせながら挨拶をした。
「霞、悪いけど一泊させてくれへんか? こいつも酔っ払ってるから連れて帰るのも難しいしな」
「此処は宿では無いが仕方ないな。ヘルミンク少尉は私の部屋に布団を敷いておく」
「むぅ、私はベッドで寝たいんだがな……」
ヘルミンク少尉がブー垂れる。
「アホな事を言うなや」
将宏は溜め息を吐いて霞にヘルミンク少尉を引き渡す。
「馬鹿兄上、玄関で寝るな」
「ぷげらッ!? ……おぅ」
霞に蹴られた前田中尉はフラフラと自身の部屋に入った。
「済まないな」
「いや気にする事ではない」
そして将宏達は前田家にて一泊をした。
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