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第百九話






「……これはどういう事かね?」


 いきなり叩き起こされたトルーマンはかなりの不機嫌であった。


「……プレジデント。これはクーデターです」

「……何だと?」


 トルーマンの前にいる男性――スチムソン陸軍長官はそう言い、スチムソンの言葉にトルーマンはギロリと睨んだ。


「プレジデント、貴方には大統領を病気を理由に辞任させてもらいます」

「正気かスチムソン!! 誰を大統領にすると言うのか!!」

「前大統領です」

「な……ウォレスを使うのか!!」

「えぇ。ですが貴方が知る事はもうありません。拘束させてもらいます」

「これは党の命令でもあるのか!!」

「そうです。共和党、民主党も貴方を大統領の椅子から降ろす事に賛成しています」

「く……」


 トルーマンは観念したかのように床に膝をつき、兵士に抱えられるようにホワイトハウスを去った。


「……あの停戦の時に日本と講和をしていればこんな事には……いや、今は日本との講和に専念するしかない」


 スチムソンは一人になった大統領室でそう呟いた。そして翌日、ラジオ放送でトルーマンは病気を理由に大統領を辞任する事を発表した。

 臨時の暫定大統領として前任のウォレスが暫定大統領に返り咲いた。国民は驚いたが負け続けていたから仕方ないといった感じであった。

 後にトルーマンは心臓病で47年に亡くなるが、その死には不審点が数多く口封じとして暗殺されたのではないかという噂がある。しかも信憑性としてこのクーデター事件は五十年も秘匿され、情報が公開されたのが90年代というのが一つの証拠であるがアメリカ政府は頑としてトルーマンの死亡は心臓病であるとの一点張りであった。

 それはさておき、再び暫定大統領になったウォレスは最初の仕事として日本との講和を呼び掛ける事だった。アメリカの呼び掛けに将宏達はいつもの料亭に集結した。


「今、此処で講和した方が良いと思う」

「同感です。向こうから呼び掛けて来たのは好都合だ。向こうが大量生産に移行すれば我が国は負けます」


 宮様や将宏の言葉に東條や山本達は頷いた。実は水面下でアメリカの他にもイギリスやソ連との講和も動いていたのだ。


「イギリスは兎も角、ソ連は脅された感じですね」

「本当かどうかは判らんが戦争が終わるなら良しとしよう」


 会合は講和で決定した。講和に反対する輩がいる可能性もあるので直ぐに御前会議を開き、陛下も講和に賛成した。

 反対派の先手を打つため、陛下はラジオ放送で講和する事にした事を陛下自ら発表した。この行動により講和反対を呼び掛けようとした新聞社や反対派は鳴りを潜め、日本はアメリカ、イギリス、ソ連と講和する事にした。(実質的に停戦に近い)

 会談場所はハワイのオアフ島だった。四か国の代表(日本は山本の他に吉田茂も参加していた)はそれぞれ自国の艦艇で入港した。日本は大和と空母信濃で護衛艦十隻である。

 会談はそれぞれ当時国同士でなる事になり、日本は三連続の会談だが仕方ないと山本と吉田は決めていた。


「お久しぶりですなウォレス大統領」

「お久しぶりです」


 山本とウォレスが握手して椅子に座る。


「まず申すが我が日本は貴国に対して賠償金は一切要求しません」

「……サンキューヤマモト」

「それに東南アジアは撤退します」

「それはフィリピンも含まれるか?」

「イエスですな」

「……ならば構わない」

「それと満州国を認めてもらいたい。認めてもらえるなら朝鮮は半島ごとその利権を差し上げる。むしろ朝鮮半島から手を引く」

「……ほぅ」


 ウォレスは山本の言葉に反応した。満州ではなくわざわざ朝鮮半島の利権放棄まで言い出したのだ。ウォレスとしては満州より半島の方が良いと思う。なにより半島に基地を作れば日本を牽制出来ると判断した。

 日本側としてはアメリカが食いつけば良いと思っていた。史実でも半島の経営は成り立っていたのかと聞けばその反対と答えるだろう。ぶっちゃけ赤字である。


「一応此方が境界線を書き込んだ地図になりますな」

「ふむ……」


 山本から地図を渡されたウォレスは地図を見る。地図の境界線は北部は史実の境界線とは少し違っておりシンアンジュからホムフンより北は満州国領となっていた。


「(確かに半島だな)判りました。我々は満州国を認めましょう」

「ありがとうございます」


 この時、ウォレスは半島北部に地下資源が大量に埋蔵されている事は知らなかった。日本も情報流出を恐れ陛下から指定された第一級の国家機密となった。この情報は約百年は流出されなかった。そして鹵獲したモンタナはアメリカに返還した。技術はタップリと貰ったが……。

 アメリカとの会談が終わり、次にイギリスと会談をした。しかし、イギリスとはこれと言った接点がなく(マレー半島の上陸部隊は降伏)、捕虜の返還や技術同盟が打診された。

 特にイギリスは艦攻天山のライセンス生産を要望した。未だに複葉機を使用している事もありチャーチルとしては天山が欲しかったのだ。

 山本も断る必要もなかったので了承してイギリスとは現状維持の態勢になった。

 最後にソ連との会談だが、山本と吉田はただ一点の主張をした。


「賠償金は一切要求しない。代わりに北樺太の割譲、日本の要求はこれだけだ」


 日本の要求に代表のフルシチョフは内心は喜びと警戒の二つだった。ソ連側の予想としてウラジオストクやシベリア等の割譲と思っていた程だ。

「(やはり油田狙いか?)判りました」

「それと我々は朝鮮半島から手を引く予定です。これはアメリカにも周知済みです」

「ほぅ……」


 吉田の言葉にフルシチョフがピクリと動いた。ソ連もアメリカ同様に半島から手を引く事に注目していた。そしてソ連もアメリカと同じように日本を牽制出来ると思い、半島に進出しようと共産主義者を送り始めるのであった。

 兎も角、ソ連は日本に対して北樺太の割譲を了承して会議は終了。この講和会議は後にハワイ講和会議と歴史に記される事になった。

 そしてこ戦いは日本では第二次大東亜戦争と呼ばれる事になる。

 時に1945年八月十五日、日本の戦いは終わりを告げたのである。

 山本達は横須賀で日の丸を振る市民達の歓迎を受ける中、吉田が山本に耳打ちをした。


「今夜、いつもの料亭であの方が来るとの事です」

「判りました」


 二人はそう言うのであった。







御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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