第百四話
航空自衛隊に入隊するので更新は遅くなると思います。詳しくは活動報告にて報告します。
「空母無しで戦艦を主力にした艦隊……か」
「敵の陽動でしょうか?」
伊号潜からの報告にGF司令部がある敷島では会議が行われていた。
「それで伊号潜からの報告は?」
「……連絡が無いため撃沈されたと推測しています」
参謀はそう答えたが、実際は爆雷攻撃から逃げている最中だった。
「敵艦隊の進路は?」
「伊号潜からの最後の通信ではトラック方面を航行していると……」
「……トラックに彩雲を飛ばすように伝えろ。内地にいる彩雲をトラックに派遣しても構わない。敵艦隊の動向を探れ」
豊田はそう指示を出して会議を終わらせた。会議を終わらせた豊田は一人の参謀を長官室に呼ばした。
「御呼びでありもすか長官?」
「済まないな神」
長官室に入室してきたのは神重徳主席参謀だった。
「神、今回の敵の動向……どう思うかね?」
「個人的意見で宜しいですかな?」
「構わん」
「恐らく……敵は艦隊決戦を挑もうとしているのではないですか?」
「艦隊決戦だと?」
神の言葉に豊田は唖然とした。
「我々ならいざ知らず、何故アメリカが艦隊決戦を挑むのかね?」
「世論を気にしているのでしょう?」
「世論?」
「かの国はメディアの力が強い。機動部隊の連敗に国民感情も不安になっているのではないとありもす」
「ふむ……そこで一発逆転をかけた艦隊決戦……か」
豊田は目を閉じて腕を組む。彼が考えているのはアメリカの挑戦を受け入れるかだった。
「……神、宇垣に待機命令を出せ。今は兎も角情報が欲しい」
「判りもした。直ぐに宇垣中将に連絡しましょう」
「うむ、ところで河内はどうした?」
「彼は今、大和におりもす」
豊田の問いに神はそう答えた。
「五一サンチ砲……五一サンチ砲……ウヒヒヒ……」
宿毛湾沖で大和の艦橋で将宏は人が近づかれない目で大和の四六サンチ砲を見ていた。
「……彼は大丈夫かね?」
「……多分放っといたら治ります」
その傍らで宇垣中将と前田少佐はそう話していた。というよりも砲撃訓練中、将宏は色んな意味で怖かった。
「遊〇爆弾をこれで破壊したいな」
「コスモ〇ァルコン搭載出来んかなぁ……」
「それよりも三式〇合弾をだな……」
大和の砲撃訓練中、将宏はブツブツと何かを言っていた。
「……まぁ放っておこう」
宇垣中将はそう言った時、通信兵が艦橋に来た。
「GF司令部より緊急電です」
「うむ……」
通信兵から通信紙を受け取る宇垣は一目すると将宏に通信紙を見せた。
「……戦艦を主力にした艦隊ですと?」
「どう思うかね?」
「……囮か本気か……ですね」
将宏はそう言って地図を見た。
「フィリピンに増援を送るなら戦艦を囮にして多数の護衛空母をつけた輸送船団がフィリピンに目指すはずです。ですが見つかってないとなると……」
「……奴等は艦隊決戦でこの戦局を打破する……と?」
「可能性はあります。敵機動部隊はフィリピン沖と小笠原沖で行動は当分は不可能なはずです。米軍に唯一残されたのが……」
「艦隊決戦しかない……か」
宇垣中将は呟くように言った。
「豊田長官からは待機命令が出た。暫くは索敵になるだろう」
それから敵艦隊の動向を探るために彩雲や伊号潜が放たれた。一日目は索敵に引っ掛からなかった。しかし二日目の1036、トラック島から定期長距離哨戒飛行に飛び上がった九六式陸攻が米艦隊を発見した。
「希に見る大艦隊だ。しかも空母は一隻もいない、戦艦を主力にした艦隊だ」
電文は直ぐにGF司令部に届いた。報告を聞いた豊田長官はただ一言言った。
「宇垣艦隊は直ちに出撃せよ」
宿毛湾に停泊していた宇垣艦隊は直ちに抜錨してマリアナ方面に急行した。更に豊田は手空きの艦艇を宇垣艦隊に編入させてマリアナ方面に急行させた。
「……ジャップとの艦隊決戦か……」
「気が進みませんか?」
戦艦モンタナの艦橋でそう呟いた艦隊司令官リー中将の言葉に参謀長の三一ノットバークことバーク大佐はそう聞いた。
「いや、それどころか腕がなる。ガダルカナルの屈辱を果たせる時が来たとな」
「では……?」
「上層部だ。奴等の計画を聞いた時、私は唖然としたよ、自分の艦隊を囮にするつもりかとね」
「囮ですか? では機動部隊が復活したので?」
「いやその囮ではない。政治的な囮だよ」
リー中将はそれ以上は語らなかった。彼等がそれらを知るのは全てが終わった時だったからだ。
「リー中将の艦隊は?」
「既にジャップの警戒線に突入しました」
「そうか……これで全ての戦いが終わるのが好ましいが……」
「本土の連中は上手くやるでしょうか?」
「やらないといけないのだよスプルーアンス」
オアフ島の太平洋艦隊司令部ではニミッツ長官とスプルーアンス中将がそう話していた。
「ロンメルの停戦の時に完全な停戦にしておけば良かった……それが今のツケだな」
「長官……」
ニミッツは吐き捨てるように言った。
「我々はどっしりと構えておこう。今やれるのはそれしかない」
宇垣艦隊は三日かけてマリアナ諸島のサイパン島に到着した。偵察機は逐一米艦隊の状況を報告していた。
「……敵はマリアナに向かっているのか……」
「他の艦隊は発見しましたか?」
「いや、マーシャル方面にも偵察機を出したが大艦隊発見の報告は無い」
「……となるとやはり艦隊決戦ですね。奴等も勝負をかけてきたのでしょう」
大和の会議室で宇垣や将宏達が会議をしていた。
「水雷戦隊の出番があるなら儂は問題無い」
「同じく」
南雲中将がそう呟き、田中少将も頷いた。日本側も索敵で米艦隊の数を粗方割り出していた。
戦艦十二隻(モンタナ級三、アイオワ級六、サウスダコタ級三)、重巡十二、軽巡十、駆逐艦三六隻である。
対する宇垣艦隊は戦艦十二、重巡十四(高雄型四、妙高型四、最上型四、畝傍型二)、軽巡九、駆逐艦三二隻が集結していた。
山口や小沢の機動艦隊からも艦艇が集められていたが問題は無しにした。なお、機動艦隊は大西と吉良の機動艦隊を吸収して臨時に二個機動艦隊を編成している。
「敵は必ず正面から来る。我々は待ち構えておればいい」
宇垣中将は将宏達にそう告げた。
「我々には大和と武蔵、水雷戦隊がいる。数が上回ろうが奴等の土手っ腹に砲弾と魚雷を叩き込めばいい」
その言葉に将宏達は苦笑した。
「それでは往こう」
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