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襲撃、衝撃、決意(後編)


俺たちは魔物が大量発生したせいで食糧を奪われたまぬけな村に、食糧の配給に来ていた

食糧が輸送中に襲われることも考えて、俺が命じられたわけだ

村は反省して防御を強くしているから、運んだ後はなにも心配しなくていいらしい

村に食糧を届け、村人たちに感謝されながら村をでた

村を出るときの感謝は当たり前とはいえ、なかなか心地いいものだった

戦争に勝って、国中に感謝されるのもわるくないかもな


帰り道の途中だった

襲撃を受けた

木々の間からコボルトたちがどんどんと湧き出て、走りこんでくる

「うお!?なんだこいつら!?」

「おおかた村長が言っていた大量発生した魔物どもだろう、落ち着いてやればこんなのたいした事ないさ」

ドロルがお得意の火球連弾を放つ

魔術の連続行使

威力は低いが、この連続行使は一種の才能だ

俺もコボルトどもを一掃するために、詠唱を開始する

――――ドゴッ

馬車になにかが突っ込んできた

「「うわっ!?」」

まさかこれは・・・

「まさか敵襲!?」

ドロルが叫ぶ

「ギギッ!」

そして飛んでくる(●●●●●)インプ

「チッ!?」

とっさにキャンセルして、その魔力を使って薙ぎ払う

「これは・・・人為的な災害か、俺のいるところで舐めたまねを」

いったい誰がこんなことを・・・

GRRRRRR!!!

突然響きわたる咆哮

その方向を見ると、角馬種のように枝分かれした角を持ち

竜種のように巨大な翼と尻尾を持ち

口から大きな牙を出し

手から刃物のような爪を生やしてる

5メートルくらいの魔物がいた

「なっ!?」

慌てて詠唱を開始する

なんだ、アレは・・・

あんな魔物、この地域には生息してないはずだ!

そもそもアレは魔物なのか!?

ドロルが火球をぶつけるが、まるで効いてる様子がない

・・・くそっ

魔物から離れるように飛ぶ

魔物はドロルに気を取られていて、気づいてない

俺の魔術が発動し、魔物の右腕と翼を消し飛ばした

GGGGGYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAA―――――

魔物が咆哮する

だが、俺は驚愕していた

全身を消し飛ばすつもりで放ったのに!

屈辱だ!

魔物の下に転移用の魔法陣が光る

やはり人為的なものか

舐めやがって

「させるかよ!」

ドロルの杖に火の球ができ、どんどん大きくなっていく

「くそっ!」

無能の声が聞こえた

声が聞こえたほうから石が飛んでくる

「死ね」

火球が魔物へと飛ぼうとして、杖に石が当たって、逸らされた

―――フォン

魔物が転移する

転移したのは無能の声が聞こえた方だ

詠唱を開始する

「いいからっ!!」

また無能の声が聞こえる

・・・不愉快だ

俺の魔術が発動する

殺すつもりで放ったそれは跡形もなくその空間を吹き飛ばした

だが、転移の残り香ともいうべき魔力が、わずかに残っていた

ドロルと話し合い、ここで学院の恥を消す事に決めた





馬車を襲撃してから1日たった

アモルはもう起きたけど、オースはまだ起きない

魔力と瘴気の流出は止まったけど、全然起きる気配がない

このまま、起きないんだろうか・・・

『【たまには上位悪魔みたいな事してみたっていいだろう?】』

『いやっほう!いやーガーゴイルってさーずっと黙っていなきゃいけないからイヤだったんだよねー』

『オースだ、まっよろしくなマスター』

『ガイストがこの空間を作ったって聞こえたんだが?』

『お前本当に12歳かよ!?』

『俺はそれよりそのスライムが気になるぞ!』

『ガイストか?ってなんでそんなにちっこくなってんだ?まあいいやそれよりなんか身体が動かねえんだ、どうなってるんだかわかんねえが、なんとかしてくれぇ(泣)』

『りょーかい』

『まあ俺がいるから大丈夫だけどな』

今まで交わしてきたオースとの会話が蘇る

そっか・・・僕ってオースの事、けっこう気に入ってたんだなぁ

「ガイスト・・・」

「ん?・・・大丈夫だよ」

「全然大丈夫って顔してないよ!

ガイスト・・・つらい時はつらいって言わないと

私もつらくなるよ・・・」

「・・・ごめん」

「・・・いいよ、ガイストが元気になるなら」

そういうアモルの顔を見る事もできない

――――第三階層の形成終了

頭に、ダンジョンの情報が入ってきた

いつもだったら喜ぶんだけど・・・今は全然喜ぶ気になれない


――――オオォン

なんか音が聞こえた気がする

このダンジョンは拠点に、害のない音だったら、ダンジョンの入口で聞こえる範囲の音を届けてくれる

耳をすます

なにか、砲撃をぶっ放すような音と、聞き覚えのある声が聞こえる

あいつらだ

オースを痛めつけた

恐い

怖い

コワイ

僕じゃ二人を守れない

ダンジョンが突破されたら終わりだ

このダンジョンには強い魔物がいないのに!

身体が、身体の震えが、止まらない

世界から、色も、音もなくなっていく

アモルが抱き着いて、落ち着かせようとしてるけど、それでも、止まらない

アモルも声も、わからない





やっと、見つけた

おそらくここに、あの無能はいる

俺もドロルも探知系の魔術を使えないから、探すのに手間取ったが、

明らかにいままでとは違う場所を見つけた

いままでのやたら長い通路のようなコボルトの巣は、おそらく魔物の養殖場だったんだろう

赤い洞窟

中からはわずかに、瘴気が漂ってきている

あの無能が、身の程知らずにもダンジョンを作ったらしいな

大量のコボルトを駆逐したせいで魔力が多少減ったが

別に問題ないだろう

どうせあの無能の事だ

ダンジョンの中もコボルトだけだろう

たいした罠もあるまい

ドロルも同意見のようで、たいした休憩もせず、ダンジョンに突入した

やはり中はコボルト・・・なぜか交尾してるのが大半だが・・・と床を鬱陶しいスライムだけだった

面倒なのであの魔物の腕を消し飛ばした魔術で消し飛ばす

俺の専門は攻城型殲滅魔術だ

群を消し飛ばすことなど、造作もない

ダンジョンの壁も、ついでに吹き飛ばしたようだ

思ったよりも、薄かったらしい

次々と湧いてくるコボルトどもにうんざりしながら、ドロルがコボルトを、俺が壁を吹き飛ばし続けた





ああ・・・僕が作ったダンジョンがどんどん破壊されてく・・・

コボルトたちはほとんどなにもできずに炎に焼かれ

壁はまるでなかったのかのように吹き飛ばされる

それを僕はなにもできずに見つめてる

アモルもなにか言ってるけど・・・

僕の意識は全部画面に向いてて

やっぱり震えが止まらない・・・どころか強くなってきている

マギア(天才)は簡単に壁を破壊していって

第二階層に入った





階段をのぼる

どうやらここからが第二階層のようだ

だが俺は失笑を禁じえなかった

地下に作ったダンジョンの第二階層が上に向かう?

そんなことしたら瘴気もたまりにくいし、すぐに地上に出てしまう

あの無能だからしょうがないとも思うが・・・子供でも考えればわかる事だぞ?

魔力もかなり減ってきているが、この程度の相手ならば問題ない

それよりもあの無能を処刑する方が重要だ

それに第二階層もコボルトだけと見ると・・・本当にコボルトしかいないようだ

ここらにはコボルトしか生息していないとはいえ・・・もう少しなにかできなかったのか?

そんな事を思いつつも、手は休めない

「マギア、魔力は大丈夫か?」

「問題ない」

「さすがは学院1の天才だな!」

そんな会話をしながら、コボルトを吹き飛ばす

ここからは魔力を節約していこうと思ったため、壁までは吹き飛ばさない

あんな無能ごときに、無駄に魔力は使えない

それにしても向ってくるコボルトの数・・・異常だ

通常でも養殖でも、限られた空間で生息できる数というのは限られている

にも関わらず延々とわき続けるコボルト

何かしらの魔術でも使ってるのだろうが・・・鬱陶しいし、魔力の節約ができない

まあ、地上からの距離を考えても、ここが最後の階層だろうから大丈夫だろうが

きっとあの無能はいまごろダンジョンの奥で震えているに違いない

そんな事を考えながらダンジョンの攻略を進める

特に障害となるものもいない

魔力がもうすぐ切れるが、コボルトが何匹あつまろうと問題はないだろう

曲がり角をまがった瞬間

俺たちに向かって黒い焔が飛んできた

「くっ」

防御の魔術を行使し、ドロルが反撃の火球をたたきこむ

その炎は黒炎に吸収され、黒炎はさらに燃え上がる

「これは・・・まさか!」

ドロルが驚愕するのもわかる

俺もさっきの防御で魔力がさらに減り、危険だ

全快のときなら倒せるだろうが、今はまずい

ドロルの魔術は相性が悪く

俺は魔力が足りない

今までの魔物と、桁違いの相手

あの魔物以外に強力な奴なんていないと高を括ったのが間違いだった

「まずい!引き返すぞドロル!」

「ああ!、ってやっぱりさせてくれないか・・・」

さっきの黒焔でやったのだろうか

俺たちの後ろには黒い炎の壁ができていた

「万事休す、か・・・」

俺は黒炎・・・狂った火の精霊に向かいあう

精霊使いがいれば話は違っただろうが・・・

このまま死ぬだろう

あの無能は俺が思ってたより無能ではなかったようだ

―――ボォ

ドロルも覚悟を決めたようで、隣で杖に火を灯した

そして黒炎が飛びかかってきて、ドロルはその杖を全力で振るった

俺に向かって(●●●●●●)

「なっ!?」

俺はドロルの炎に包まれ、炎の壁を突破した

焼くモノを呪うはずの黒炎は俺になんの呪いももたらさず、ドロルの炎は俺にたいした傷を与えずに消えた

そして炎の壁の向こうには、ドロルが残っていた

「ドロル!なぜこんな!」

黒い炎に焼かれながら

「ああ、あんまし痛くねえんだな・・・だんだん眠くなるくらいで」

すぐに燃え尽きるはずなのに、わざわざ見せびらかすかのように燃やしている

「おい!ドロルしっかりしろ!今助けにいくから!」

「くんなっ!!!」

「なっ!?」

焼かれながらも、ドロルはこっちを見て、しっかりと言葉を紡ぐ

「お前は俺とは違う!本当の天才なんだ!家でだけ天才天才って呼ばれてた俺と違って!誰からも認められる天才なんだ!

この世界を!切り開いてく存在なんだ!」

「違う・・・俺は・・・」

「みんながやっかんで、陰口言ってるけど、お前はみんなの力になれる奴なんだ!こんな、こんなところで死んでいい奴じゃねえ!」

「あ・・あ・・・」

「だいたい俺は、炎の魔術師だからな・・・こうゆう最後も悪くはねえさ」

まあ・・・あの無能にやられるってのが癪だがな

そんな事をいって苦笑するドロル

『お前が一番の天才か?』

『勝負しようぜ』

『あー!負けたーーー!』

『うっせー!俺は炎の魔術師なんだよ!』

『火は最高だぁぁぁぁ!!!』

『マギアの事なにも知んねえくせに!陰口たたいてんじゃねえ!』

『学院でマギアファンクラブ立ち上げたぜ☆』

『さすがマギアだな』

そんな言葉が脳裏を駆け巡る

「マギア・・・お前は生きなきゃだめだ

こいつが俺を燃やしてるあいだに、とっとと逃げろ」

「だ、だが・・・」

「うるせえ!俺があこがれたマギアは、こんなところで終わる奴じゃねぇ!

お前が俺の親友(●●)だっていうんなら!とっととにげろぉ!!!」

「・・・すまん」

俺にはなにもできない

俺はドロルになに一つかえしてやれない

俺はドロルの親友であれた自信がない

それでも・・・

だからこそ、この言葉に全てを込めよう

「ありがとう」

そう言って走りさる

最後にみたドロルの顔は

今まで見たことのない、笑顔だった


「ったくよー、あいつからお礼だなんて、初めて聞いたぜ」

ドロルは誰もいなくなった通路を見つめながら、つぶやく

全身は炎に包まれ、激痛に苛まれている

それでも必死に、マギアがいるから平気な振りをしていた

炎熱系統の魔術師だったせいか・・・火の精霊も燃やすのに時間がかかっていたから

マギアに本心を伝えられた

今まで親友どころか友とも呼んだ事がなかったから・・・なぁ

魔力ももう残ってねえし、なにもできねえ・・・

まぁ、未練はないかな・・・

親父たちになにも言えなかったのは残念だけど・・・マギアに言えたからいいか



ダンジョンの通路で

狂った火の精霊により

だれにも看取られずに

ドロルはその鼓動を終えた






ドロルが死んで、マギアがダンジョンを出てやっと

色と音が戻ってきた

「ガイスト!しっかりしろガイスト!」

ああ、アモル

ずっとそうやって呼びかけててくれたのか

声がかれてるよ

「大丈夫だよ、アモル」

僕の声も、そうとう掠れてた

「ガイスト!ガイスト!」

アモルが泣いている

・・・簡単にダンジョンを突破された

オースは目を覚まさない

・・・僕は何もできなかった

まだ身体が震えている

いつも二人には支えられてばかりだった

いつもアモルに守られていた

オースは僕をほめてくれた

ダンジョンを作って、結局なんにもできなかった

―――――――僕、は







ドロルが殺された

俺のせいだ

俺にもっと魔力があったら

俺がもっと強かったら

俺が、俺がドロルの足を引っ張ったんだ

あいつが魔力大丈夫か確認してたところで、引き返してたらドロルは死ななかった!

――――――――俺、は





              『『弱い』』

奇しくも、それを思ったのは同時刻だった。周りに常に認められてきた『天才』と

常にバカにされ続けた『無能』

立場も力も全然違うのに、同じ事を、全く同じ瞬間に思った

唯一違う事があるとすれば・・・





『『だから、強く、誰よりも強くならないと・・・』』


『二人を守るために』   『あいつを殺すために』













本日のダンジョン

ダンジョンスライムLV1  ダンジョン

魔力吸収   10/日(単位は万)

瘴気     20

第四階層形成中


侵入者を殺したため、ダンジョンとしての機能が上昇したスライム

ガイストとガイストが許可したモノにパスを繋げる事が可能になった



作「なんか最初は嫌なとりまきAって感じだったのにかっこいいキャラになってしまったドロルくん!

殺したいほど妬ましい!!

だからころされるんだよ」


ドロル(以下ド・・・まあ次回は出てこないんじゃね?)「おいい!そんな理由で俺死んだのか!?」


ア「なんだこいつ?暑苦しいなぁ」


ド「フェアリー!?」


ガ「アモルに近づくなドM」


ド「だれがドMじゃあぁぁぁ!!」


作・ガ「「え?お前に決まってんじゃん」」


ド「んだと!?フェアリーちゃん・・・君だけが心のオアシスだよ」


ア「ガイスト・・・なんかこいつキモイ」


ド「NOOoooooo!!」


作「うわ、奇声上げてるよ、キモッ」


ド「うるせー!だいたいなんで俺がドMなんだよ」


ア「だって・・・なぁ?なんでなんだ?」


作「もやされて喜んで笑ってるし」


ガ「アモルに罵倒されて奇声あげて喜んでるし」


ア「・・・なんかごめん」


ド「・・・・・・・・・」


作「まあこんな変態はほおっておいて」


ガ「そうだな、変態は無視しておいて」


ア「じゃあな、変態」


ドM「うあああぁぁぁあぁあああぁぁあぁ」


ガ「泣き叫びながら走っていったか・・・さすが変態だな」


作「そんなことより時間時間」


ア「そうだな、次回予告と行くか」


ガ「なんか久しぶりの気もするな」


作・ア・ガ「「「次回、これからの方針」」」







作「ふう、ガイストとアモルはもう帰ったか・・・」


作「今回ので気づいた人も多いだろうが」


作「マギアはガイストと並び立つ、もうひとりの主人公だ」


作「まあ、あんまり出てこないかもしれんが」


作「マギアにはマギアの物語があったりする」


作「まあ出てこないが」


作「ところで、物語で出てくる魔術とかの解説も作ったほうがいいのだろうか?」


作「人物紹介みたいに」


作「一応設定はある・・・のか?」


作「人物出すたびに設定は考えてるが・・・」


作「意見をくれると嬉しい」


作「では・・・さらばじゃ!」




作「試験・・・オワタ」

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