襲撃、衝撃、決意 (前編)
「多分だけど、今日か明日、遅くても今週中に、学院の方に食糧の分配を求めに使者がいくだろう」
村を襲った時に食糧の保存庫も焼いた
これでソフォス魔術学院に頼らなかったら冬を越せないだろう
「そこを潰すんだな」
「いや、オース、そこはまだ手を出さないよ?」
「じゃあ使者が帰る時にか?」
「アモルも違う、今回は使者には手を出さない
というかあの村はもうなにもしなくていい
予想だけど魔術学院があの村に食糧を届けに行く時に護衛をつけていくだろう」
「ああ、魔物の大量発生だしな」
「その護衛たちが帰ってる間を襲う」
「ガイスト、あの村には本当にもうなにもしないのか?」
「ああ、あれは僕達に注意を向けるための布石だしね、
護衛が学院から出てくれば、もう用はないよ
まあ、出てこなかったら何回でもするけど」
「つーかこれまでできるだけばれないようにやってたと思うけど、なんで今になってばらすんだ?」
「今までだってばれにくいけど、目立つことはしてるけどね」
精霊を狂わしたり、魔物を大量発生させたり、迷宮を掘らせたり・・・ね
「一つ目はダンジョンが階層増やしていく時間がもったいない・・・けど、これ以上できることも少ないし・・・それにダンジョンってのは攻略できそうで、できないくらいが成長が速くなる
瘴気もたまり易くなるし
それに、“無能”のガイストが作ったダンジョンだ・・・舐めてかかるのが目に見えてるさ
僕たちは一回挑発・・・というより、護衛を攻撃したあとは
蜘蛛のように奴らが罠にかかっていくのを見てるだけでいい」
「まだダンジョンには罠ないけどな」
「・・・(オースは!まったく・・・)」
「そんな感じで行くんだな・・・とりあえず森には、見張り立てといた方がいいか・・・」
「よろしくアモル
護衛が村に行ったら報告してもらうようにして
学院に帰る時を狙うから」
「俺は俺は?」
「とりあえずまたインプ呼び出すから…」
「まて、もうあんなの嫌だ」
「大丈夫だよオース、今のオースは前と随分違うから」
「そんなこと言ってもよー」
「じゃあインプじゃなくてガーゴイルで同じのする?」
「インプでお願いします!!!」
「そう・・・残念(ガーゴイルなんて何体も呼び出せないけど)」
「お前怖えよ!」
「あ、アモルはコボルトに村で手に入れた家畜の世話もするように言っておいて」
「おう!」
それにしても僕はインプ呼びだしたら何もする事ないなぁ・・・
禁書の写し(スライム)で勉強でもしてようかな?
「今村に馬車が行ったらしいぞ」
ふわふわ浮きながらアモルが報告してくる
これから僕のダンジョンに侵入者が入ってくる可能性は増える
まだ今なら、ただの魔物の大量発生ですむかもしれない・・・
ああ、でも無理だ
どうしても証明したい
僕をバカにしてきた奴らに
戦争したがる国に
恥だと罵る家族に
そして僕の使う魔術自身に
僕の魔術は皆が思っているより強いし、凄いってことを!
「オース、インプ呼んできて」
「ああ」
僕はダンジョンの外のコボルト達を呼び集めよう
そして、配置につかせて・・・・・・襲撃だ
森で待機して2時間ほど
アモルは僕の肩の上で瞑想してるし
オースはそわそわしてる
今回の襲撃は別に成功しなくてもいい
ただ僕がこの事態を引き起こしているという事わばらすのだけが目的だ
森の中を走っている道を見る
まだ、来る気配はない
まだかかるのだろうか・・・
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
道の向こうから馬車の影が見えてきた
あれが襲撃対象だろう・・・
僕達の勢力の中心に来たときが襲撃の時だ!
オースは戦闘
僕は指揮
アモルは撤退の時の転移の役だ
数は暴力だ
この前の村だって、数の暴力で戦いきった
今回は前回よりもさらに多い
これならどんな相手だって楽勝だろう
馬車を見つめる
少しづつ大きくなっていく馬車
御者台にはマギアとドロル
あいつらが護衛だったのか
ちょうどいい
学院自慢の天才とやらを打ちのめしてやる
「オースはコボルトとかが飛びかかって行ってる時に、インプとかを投げこんでから突っ込んで」
こっそりと契約を通じて指示をしておく
――――「おっ!それ面白そうだな!」
・・・五、四、三、二、一
「今だ!」
コボルトが突っ込み始める
「うお!?なんだこいつら!?」
「おおかた村長が言っていた大量発生した魔物どもだろう、落ち着いてやればこんなのたいした事ないさ」
ドロルの持っている杖から直径10センチほどの火球が連続で放たれる
ファイアボールの連続行使。
マギアの取り巻きなだけあって、腕は確かなようだ
マギアもなにか呪文を唱えてるみたいだし、近づく前に終わらせるつもりか?
マギアの杖のまわりに膨大な魔力が渦巻き始める
そして、馬車にインプが突っ込んだ
「「うわっ!?」」
驚く間もなく第二射が飛んでくる
「まさか敵襲!?」
「ギギッ!」
「チッ!?」
とっさに集めていた魔力を解放して飛んでくるインプと、真横から近づいてくるコボルトを薙ぎ払う
「これは・・・人為的な災害か、俺のいるところで舐めたまねを」
舐めてるのはどっちだ!
――――「ガイスト、こりゃあインプじゃ無理だな、俺も出るぞ」
オースからの呼び声に、少しだけ考えて
「わかった。思う存分暴れて!」
――――「おおせのままに」
GRRRRRR!!!
響きわたる咆哮
そして、オースが突っ込んでいく
「なっ!?」
マギアは慌てて詠唱を始める
だけどオースの方がはやい!
ドロルがコボルトより、オースが危険だと判断したみたいで、火球をオースにぶつける
でもオースにはたいしてダメージを与えられずにオースが近づいていく
慌てて離れる二人
いい気分だ
僕をバカにしてた奴らが僕の召喚した悪魔にいいように翻弄されている
だけど、気に入らない
マギアの、まだ諦めてない眼が気に入らない
まあ・・・大丈夫だろう
それより、コボルトたちに指示して馬車を破壊させよう
そう思って気が緩んだ時だった
――――ゴパッ
大量の木と、オースの右腕と翼が根本から無くなっていた
「アモル!転移!」
「ああ!」
オースの下に転移用の魔法陣が光る
くそっ!
僕が甘かったから・・・もっと準備を整えてからだったらオースは・・・
GGGGGYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAA―――――
なめていた
戦術的に価値を認められた天才に、正面から挑むんじゃなかった
「させるかよ!」
ドロルの杖に火の球ができ、どんどん大きくなっていく
「くそっ!」
ここでオースをやられるのはまずい
僕は足元の石を拾って思いっきり投げつける
「死ね」
火球がオースへと飛ぼうとして、杖に僕が投げた石が当たって、逸らせる事ができた
―――フォン
オースが僕達の所へ転移してくる
「アモルッ!すぐに転移!」
「回復の方が先だろ!?」
「いいからっ!!」
マギアがこっちを向いている
こっちに向かって何か唱えている
ああ、オースを傷つけたあの魔術か・・・
マギアが先か、アモルが先か
マギアが詠唱を終える
――――ゴパッ
白い闇が、迫ってきて
目の前には、洞窟の壁があった
「アモル!すぐに回復を!
コボルトはオースを運べ!」
そういいながら僕も魔力と瘴気が垂れ流されている腕の付け根に手を置き、僕の魔力を流しこんで
魔力の流出を減らそうとする
同時にダンジョンに向かう
ダンジョンで、アモルが回復魔術をかけ続け、魔力切れでぶっ倒れた後、
僕は自分の考えが甘かった事をひたすらに悔いていた
なにが数の暴力だ・・・
結局惨敗じゃんか・・・
アモル達が言ったとおりに、もっと強い魔物を集めてからにすればよかったんだ!
これじゃ無能って言われるのもしょうがないじゃんか!
・・・ごめん、オース
新しい敵
マギア 人間
戦闘力 12
最大魔力量 150
高等儀式魔術、攻城型殲滅魔術の達人
12歳にしては難易度の高い魔術を習得しているため、それなりに強い・・・が、局地戦や、手加減は苦手
ドロル 人間
戦闘力 9
最大魔力量 80
火の属性の魔術師
魔術の連続行使には自信がある
マギアの腰巾着その1
作「少しくらい力持つからって油断するとこれだ」
作「今回はこのあとがきコーナーに出れるやつがいないから俺だけで勘弁してくれよ」
作「今回主人公が少し考えなしだったのは、別に主人公のせいじゃない」
作「ガイストには内緒な?」
作「主人公は必死で努力していた・・・
どんなにバカにされても・・・
どんなに成果がでなくても・・・」
作「でも、周りは結果しか見なかった」
作「それが主人公の歪みにつながってる」
作「だいたい魔術が優れている事を証明したいんだったら、わざわざダンジョンなんて作る必要なんてない」
作「物に命を込める事ができるのだから、使う度に強くなる武器とかでもよかったはずだ」
作「でもガイストはそれをしなかった」
作「いや」
作「気づく事すらできなかった」
作「それで、人にとって迷惑極まりないダンジョンなんてモノをつくった」
作「どんなにいい奴でも、必死で努力した結果が酷い扱いだったら憎むさ」
作「努力しないから酷い扱いを受けるならまだ、心の整理もできただろうに」
作「ガイストが努力家だったから、こんな準備不足になってしまった」
作「それに、心の安らぎであっただろう妹も首都に行っちまってるしな」
作「だからこれは・・・避けられなかったんだろう」
作「傷ついたオース・・・」
作「圧倒的な魔術を使う学院の天才」
作「それらを見て、ガイストは何を思ったのだろうか?」
作「次回『襲撃、衝撃、決意』」
作「あまり思いつめるなよ・・・ガイスト」