最後、春がきて
文化祭はあっという間に過ぎて、どんどん時間は過ぎていった。
裕子と僕はあの日から、友達に戻っていた。それでいいのかと言われると、よくない気もするけど、これはこれでいいんだ。ナミが告白したコトも聞く。今度は僕が裕の相談相手になっていたけど、その後どうなったか聞いてない。
カズトのコトも薫も、ケンちゃんもいろいろあったみたいで、何度か僕らは集まって馬鹿みたいにさわいでた。でも、そんな時間も僕達にはあと少ししかなかった。
季節は巡って、僕らはもうすぐ一学年上に上がるコトになった。僕を含めて、留年してしまうかと思ったコトが何度もあったけど、みんな一緒に乗り切れた。その頃になると、僕らは出会った頃以上の絆を持っていた。それが、これから先にある現実を忘れさせてくれるコトもあったけど、僕を苦しめるコトもあった。
それに、僕は裕子のコトをあきらめきれるはずもなく、ずっと思い続けていた。ときには大胆な行動をとることもあったし、裕子に僕の気持ちを気づかせるコトも何度かあったと思う。でも、僕らは距離をとっていた。彼女が僕に近付いたコトもあったけど、僕が逃げた。その頃には、僕らはもう頭の上に大きなヨーヨーのような物を吊るしていた。どっちが先にそれを割ってしまうのか、僕は毎日スリルがあった。
「はぁ、クラス替えか。水戸っちは文系だっけ?」
「うん。裕は理系だっけ? カズトとケンちゃんは一般かぁ」
「そうそう、薫も一般のはず。就職希望組だからなあいつら」
裕と僕は誰もいない教室の窓から、あの桜の木を見ていた。僕らは、二年になるとバラバラのクラスになる。それはこれからの未来を考えるとしょうがないコトだけど、寂しい。だからなのか、僕と裕は終業式の日に残っていた。
「カズトもケンも幸せだよなぁ」
そう、あの二人には彼女がいる。ケンちゃんは高校はいってからずっとつづいてるけど、カズトはどうにか思いが通じたらしい。薫も今はいい感じの人がいるって言ってたし、これからどうなるのか僕らは薫の報告を楽しみにしてる。
「裕は? どうなの?」
裕の目は変わった。僕を見る目に以前のような妙な輝きが見当たらない。たぶん、僕のコトはただの友人、それ以上であっても恋という感情はないだろう。
「どうって? どうもしないけど」
裕の顔が赤く見えたので、あえて追究しないでやった。
「水戸っちこそ、裕子のコトはもういいのかよ?」
いいわけないけど、僕はまだその時じゃないと思ってる。
「裕子は、待ってると思うけど」
それもしってる。もう、僕らは分かってしまってるから。
「いい加減素直になれよな」
その言葉も、僕の胸には十分承知してる。
「そう上手く、いかないよ」
僕が言うと、裕は笑った。そうだな。とだけ言った。
いつの間にか、あの桜の木に花が咲いていた。僕と裕子はもう一度その場所に立って、しばらくじっと桜を透して空を見上げていた。僕らはどちらからというわけでなく、いつの間にか手をつないでいた。
目を合わすと、二人一緒に笑いだした。
はちきれそうな風船は、僕のも裕子のものも見事にはちきれた。でも、僕らは新しい風船を作るコトにした、そうすることで僕らは新しい気持ちを見つけられる。
僕らは彼氏、彼女になった。
この空の下で。
おわりです。
まだまだ、疑問が残る点もあるかとおもいますが、これで終わらせていただきます。
ヤンキー四人組の恋については、書くつもりはないですので、想像というか、考えてもらえると嬉しいです。
それでは、読んでいただいてありがとうございました。




