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か:飼い犬 ~ミッシュハルトとシュシュの日常~シュシュサイド

~サイド:シュシュ~


「ミッシュさまぁ! 待ってください、シュシュも行きます!」


 出かけようと扉に手をかけていたミッシュさまにあわてて声をかけると、ミッシュさまは玄関前のいすに腰掛けて、ブーツに履き替えるみたい。よかった、間に合った!

「シュシュ、座って食べなさい」

 両手に持っていたパンと牛乳を一気に飲み込もうとすると、ミッシュさまがあきれたような声で注意してくださった。

「は、はいっ! あの、待っててください、すぐ食べますから、おいてかないでくださいね!」


 きゃあっ、朝からミッシュさまに名前を呼んでもらえちゃった!

 ミッシュさまに言われたとおり、いすに座りなおして、急いでパンを食べて、牛乳で流し込んで、かばんとマントをもっていくと、ブーツに履き替え終わったミッシュさまが待っていてくださった。


「ミッシュさま、おまたせしました!」

「マントを。今日は風が強い」

 シュシュ用の小さなブーツを履いている間にミッシュさまがマントをかぶせてくださって、あっという間にお出かけスタイルの出来上がり。


 ミッシュさまと同じ色のマント。

 もちろん、ブーツもお揃いにするため(だけ)に履いてます!


「でも、どうして今日はブーツなのですか? こんなにお天気ですのに」

 いつもは雨のときとか、道の悪いところを歩くときにしかはかないブーツ。ミッシュさまを見上げて尋ねると、はぁ、と小さくため息をついてシュシュを見下ろして。

 あ、目があった!

 ミッシュさまは背が高いから、お外を歩いているときは、なかなか視線が合わないのに!

 今日は良い日だなぁ。

「シュシュ」

「はい!」

「マテ」

「え、ええええええっ!?」

 元気よく返事をしたところで、ぼそっ、と命じられた言葉に驚きの声を上げつつ、足は素直に動きを止めました。


 そ、そんなっ。せっかく待っててくださったのに、おそろいのブーツで、マントもかぶせていただいたのに、まて!? ここで、マテ!?

 まだお外にも出ていないのに、ミッシュさまとお外をまだ一歩も歩いていないのにっ!?


「……冗談だ。行くぞ、こい」

 必死にミッシュさまを見上げていたら、ミッシュさまは先に外に出たあと、頭に軽く手を当てたあと、手招き。

よかった、シュシュの切実な思いが伝わったのですね!

 嬉しくなって勢いよくミッシュさまに体当たりをすると、こらっ、と小さくおこられてしまいました。

 もちろん、ミッシュさまはシュシュごときが体当たりしたくらいじゃ痛くもかゆくもないので、ミッシュが体当たりしたことより、くっついたままでいることが怒られポイントなのです。

 しぶしぶミッシュさまの足から離れて、ミッシュさまのマントのすそをこっそり掴んで、いつものようにミッシュさまを見上げると、またミッシュさまと目が合いました!

「今日は、女将の手伝いに行くんだったな?」

「はい! 女将さまに家事を教わってきます!」

 女将さまは、町の町長さまの奥さまです。ミッシュさまのことを実の息子のように思っていて、シュシュにもとってもやさしくしてくれます。

 今日はミッシュさまがお仕事に行っている間、女将さまにお料理やお掃除などを教わる約束をしてました。

 シュシュはまだ小さいので、あまりミッシュさまのお役に立てないのですが、女将さまは、小さくたって出来ることはたくさんある、といってくれます。なので、シュシュはミッシュさまのためにもがんばるのです!


「あ、あと、町長さまに探しもののお手伝いを頼まれました」

「……それで?」

「『ミッシュさまにお尋ねください』と答えました!」

 そういえば、町長さまにも頼まれごとをしていたのを思い出して付け加えると、ミッシュさまはちょっと怖い声を出されたので、大急ぎで町長さまに答えた言葉をそのままミッシュさまに伝えました。

「よし」

 ミッシュさまの大きな手がシュシュの頭を撫でてくださいます。

 うわぁぁぁっ、今日はなんて良い日なんでしょう!


 以前、ミッシュさまのいないところで町長さまのお手伝いをして、ちょっと怪我をしてしまって以来、シュシュはミッシュさまと一緒のとき以外は、お手伝いをしてはいけないことになっています。


 あのときのミッシュさまの怒りようは、今思い出しても泣きたくなります。


 でも、おかげで誰かに何かを頼まれたときは、それだけミッシュさまと一緒にいられる時間が長くなったのです!

 雨降って地固まるですよ!

 ひょうたんからこまですよ!

 って、そんなことを思っているなんてミッシュさまが知ったらまた怒られてしまいそうなので、これはシュシュだけの秘密です。


 町長さまのおうちが見えてきました。

 ちょうど女将さまが洗濯物を抱えて出てきたところで、シュシュたちの姿をみて、あら、と手を振ってくれます。

「ミッシュハルト、シュシュ、おはよう。朝ごはんは食べたかい?」

「おはようございます! 朝ごはん、ちゃんと座って食べました!」

 大きく手を振り返して、ミッシュさまを引っ張ります。

「おはよう。女将、町長は?」

「今日は森の視察にでちまったよ」

「そうか…。シュシュをよろしく頼む」

 ミッシュさまは、マントを掴んでいたシュシュの手をとると、女将さまのほうへと渡します。

 シュシュは女将さまのスカートの裾を握ると、ミッシュさまを見上げました。

「いってらっしゃいませ、ミッシュさま」

「……いってくる」

 くしゃ、と頭を撫でてもらって、ミッシュさまの後ろ姿が見えなくなるまでお見送りしました。


「……ほんとに、困った子だね」

 ちょっと笑い混じりに言った女将さまの言葉にびっくりして、見上げました。

「シュ、シュシュ、まだ何もしてません!」

「うん? ああ、シュシュじゃないよ」

 そうでした。

 慌てて弁解しようとしましたが、女将さまはとっても優しい目で、シュシュと同じように、ミッシュさまのことを見送っていました。

 ということは、ミッシュさまが困った子?

「ミッシュさまは、とっても良い子です」

 困った子なんかじゃないですよ、とここにいないミッシュさまに代わって弁解すると、女将さまは目をまん丸くして、それから心底可笑しそうに笑い出しました。

「はははっ、シュシュは本当にミッシュハルトが大好きなんだね」

「はい! もちろんです!」

 元気よく返事をすると、女将さまは洗濯物を片手に抱えなおして、シュシュの手を握ってくれます。

「それじゃ、大好きなミッシュハルトの服を洗えるようになろう」

「はい! よろしくおねがいしますっ!」

 

 ミッシュさまがお迎えに来てくださるまで、女将さまに教わりながら、洗濯や縫い物を教わったのでした。



◎シュシュが今日覚えたこと◎

 ①洗濯物は、こすりすぎると穴が開きます。

 ②縫い物は、とっても痛いです。





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