第三の人生へ
また、この日がやってきた。妻の綾子の祥月命日だ。春の桜の時期に、妻は、旅立った。私は、三郎、50歳だ。妻の綾子は、45歳で、乳がんで、亡くなった。私達には、子どもは、いなかった。とても、寂しくなった。
今日は、お墓参りに行こうと、思っていた。
お墓に着くと、誰か、女の人が、拝んでいた。
三郎は、「失礼ですが、どちら様ですか?」と聞いた。その女性は、「邦子といいます。綾子さんの同級生です。」と、言って、立ち去ろうとした。三郎は、「ちょっと待っててくれませんか?お茶でも、一緒に、いかがですか?」と、聞いた。邦子は、困ったけれども、その後、予定もなかったので、「いいですよ。」と、言った。
三郎は、お墓参りを済ませると、近くの喫茶店に、邦子と一緒に、入った。三郎は、綾子のダンナであると、話し、綾子が亡くなってから、寂しくなったと、話していた。邦子は、バツイチの独身で、子どもは、巣立ったことを、話した。話ていくなかで、なぜかはわからないが、2人は、意気投合した。また会う約束をして、その日は、別れた。
三郎は、なぜか、妻の綾子が、引き合わせてくれたのではないかと、一人で、思いにふけっていた。
妻の綾子とは、綾子が20歳、三郎が、25歳の時に、同じ会社の、旅行で、話す様になって、仲良くなり、付き合って、2年で、結婚したのだ。子どもがいない分、ふたりで、いろんな楽しみを見つけて、楽しんだ生活だった。本当に、悔いのない夫婦生活だった。しいていうなら、子どもがいれば、どんなだったろう、と、思うが。
比べるわけではないが、綾子と邦子は、全く違うタイプの女性だと思った。綾子は、どちらかと言えば、おとなしい感じの女性だった。それに対して、邦子は、ハキハキした、元気の良い女性だと思った。
どうして、こうも、違ったタイプの女性に惹かれるのか、自分でも、分からなかったが、とにかく、邦子は、三郎にとって、魅力的にうつっていた。
再び、2人で会うことになり、今度は、日帰り温泉に行って、お昼を、そこで、食べた。とても、ゆっくりした時間を過ごせて、2人は、リラックスしていた。
三郎は、このままいけば、邦子と結婚しても、いいかな、と、思い始めていた。少し早い気もしたが…
邦子も、少なからず、三郎に、好意を抱いていた。いずれ、息子の新一にも、話さなければならない、と、思っていた。
邦子は、家に帰って、息子の新一に、はなしがあるから、家に来て、といって、電話した。
新一は、何事かと思いつつ、母の邦子のところにきた。邦子が、「今、お付き合いしている人がいるの。お互いに、好意を持ってると、思う。いずれ、どうなるかわからないけど、話しておきたくて。」と、新一に、言った。新一は、「母さん、何、考えてるんだ。あれだけ、父さんのことで、苦しんできたのに、また、結婚するつもりなの?」と、言った。新一は、結婚には、反対だった。イヤというほど、夫婦の修羅場を見てきたから。新一は、「付き合うのは、勝手だけど、結婚するのは、反対だから。」と言って、怒って、帰っていった。
邦子は、たぶんそう言われるとは、思っていたが、ショックだった。新一の賛成がなければ、結婚は、できないと思っていた。
3回目に、三郎と、会った時に、邦子は、思い切って、三郎の自分に対する気持ちを、聞いてみた。三郎は、「邦子さんのことは、とても好きです。ゆくゆくは、結婚したいとおもってます。」と、ハッキリと答えた。邦子は、息子の新一に、結婚は、反対されていることを、告げた。そして、このまま、付き合ってても、いいのかどうか、確認した。
三郎は、しばらく考えていた。「結婚が、できないとなると、どうしましょうか?」と、邦子に問いかけた。邦子も、しばらく考えて、「三郎さんが、結婚するひとを、お考えなら、私は、身をひきます。まだ、そんなに、長い付き合いでもないですし…。」と、言った。
三郎は、寂しかった。せっかく、仲良くなれたのに、結婚ができないだけで、別れるのは、辛かった。本意には、反するけれども、このまま、邦子と、付き合う方を選びたいと思っていた。
邦子に、そう、告げた。邦子は、困った顔をしていたが、そのあとは、うれしそうな表情に変わっていた。
それから、仲良く、付き合いが続いた。10年後の綾子の祥月命日に、2人で、お墓参りをした。綾子に、2人から、報告があったのだ。2人は、10年を区切りに、別れを決意していた。いろいろあった10年だったが、やはり、2人での、この先は、ないような気がしていたからだ。邦子の息子の新一からの反対は、未だに続いていた。それをふりきってまで、というのは、邦子には、できなかった。三郎も、この辺が、ギリギリの、ラインだと思っていた。
お互い、良い思い出を胸に、第三の人生を歩むことにしたのだ。




