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第4章

最初のボス戦と限界の先

白蛇の臨時弟子となってから五日が経った。


最初の三日間で、コタローはビャッコと共にさらに二十匹のオークを討伐した。超身体能力と新たに得たスキル「捕食&吸収」により、オークから吸収した魔力と師匠の魔力の湖の効果が重なり、体力と魔力が驚異的に向上した。今では一トンの岩を片手で軽々と持ち上げ、狩りの豹よりも素早く柔軟に動き、スキルの使用効率も格段に上がっている。魔力の湖で一時間以上潜り続け、息継ぎせずに泳ぎ回れる――まるで夢のような話だが、これは五日間の過酷な鍛錬の賜物だ。汗と血を流し、限界を超えてきた結果である。


さらに、オークから奪った金属製の大太刀を手に入れた。重いが手に馴染み、古い骨の棒とは比べ物にならない切れ味と安定感がある。


そして今日は六日目。白蛇から初めての本当の任務が与えられた――ボス級魔物の討伐。


正午近くの朝、濃い霧に包まれた沼地。コタロー、ビャッコ、白蛇は岸辺の木陰に身を潜めていた。肩に担いだ大太刀の刃が、雲間から差し込む陽光を反射して鋭く光る。白蛇は二人を見据え、低く落ち着いた声で言った。


「今日、お前たちは自分で戦術を立て、一人でボスを倒せ。私からは一切手を出さない。これまでの鍛錬が無駄ではなかったことを証明しろ」


少し間を置いて、まるで演説のように付け加えた。


「その魔物を……一度、そして永遠に打ち倒せ!」


コタローは口をぽかんと開け、呆れた顔で尋ねた。


「師匠が言うボスって……神獣ですか?」


白蛇は自信たっぷりに答えた。


「いや。ただ少し強いだけの魔物だ。お前たちなら対処できると信じている」


コタローは疑わしげな目で師匠を見上げ、小声で呟いた。


「……なんか、全然安心できないんですけど」


それでも彼は落ち着いて頷いた。


「はい、師匠。任せてください!」


ビャッコの頭を軽く撫で、コタローは言った。


「ビャッコ、行こうぜ!」


大太刀を肩に担ぎ、二人は沼地へ踏み込んだ。足首まで沈む泥がべちゃべちゃと音を立てる。周囲を警戒しながら進むが、気配は何もない。コタローは深く息を吸い込み、突然大声で叫んだ。


「この辺のボスはどこだ! さっさと出てこい、ぶっ倒してやるぞ!」


ビャッコも小さな体で一声吠え、気勢を合わせた。


数秒の静寂。すると地面が激しく揺れ始めた。まるで地震のように。コタローはバランスを崩しかけ、即座に戦闘態勢を取った。


「出てきた!」


沼の向こう側、黒い水面が割れ、巨大な亀が姿を現した。体はアフリカゾウ二頭分はある。甲羅は古い苔と亀裂に覆われ、赤く燃えるような目が二人を射抜く。ゆっくり岸に上がると、耳をつんざくような咆哮を上げた。


「人間め! なぜここに現れた!」


「我が領域を侵すとは……許さんぞ!」


ためらいなく、コタローはビャッコと共に突進した。泥の上を滑るように駆け、亀は即座にスキルを発動――「波留」。


高さ六メートル、幅数十メートルの巨大な水の壁が二人に向かって襲いかかる。コタローは体を低くし、全力で跳躍して波の頂点を越えた。ビャッコは電光を纏い、右側へ瞬時に回避。二人はそのまま距離を詰め、亀に肉薄した。


コタローが横薙ぎに大太刀を振るう。だが突然、青みがかった透明な障壁が現れ、刃を弾いた。ビャッコの雷撃も跳ね返される。二人は不利を悟り、一旦後退した。


「こいつ……かなり厄介だな。でも、倒せない相手じゃない!」


亀が嘲るように言った。


「我が障壁を破れると思うな。さっさと降伏しろ」


コタローは冷たい目で睨み返し、自信たっぷりに答えた。


「そうか? じゃあ、見てろよ」


亀は土属性のスキルを展開。頭上に数十本の鋭い石の投槍が浮かび上がり、雨のように射出された。コタローは大太刀を振り回し、次々と槍を叩き落とす。刃が光の軌跡を描く。ビャッコは小さな体を活かし、素早く回避しながら雷を放つ。


亀の攻撃は止まらない。防戦を続けるうち、二人は徐々に息が上がってきた。


「このままじゃジリ貧だ……!」コタローが呻く。


最後の投槍が命中。鋭い石がコタローの太ももに深く突き刺さった。激痛が走り、血が泥に滴る。


「ぐっ……!」


ビャッコが慌てて駆け寄り、唸り声を上げて亀を威嚇し、主を守ろうとする。


亀は嘲笑った。


「我に逆らう代償を味わえ!」


遠くから見ていた白蛇は異変に気づき、心配の色を浮かべ、神通でコタローに語りかけた。


「助けが必要か!?」


白蛇は尾をきつく締め、初めて人間を心配する自分に驚いていた。


コタローは痛みに耐えながら、しかし毅然と答えた。


「大丈夫です……弟子は、自分で何とかします!」


彼は槍を握り、大きく息を吸い込んで一気に引き抜いた。血が噴き出すが、超回復ですぐに傷が塞がり始める。コタローは槍を投げ返し、鋭い先端が亀の甲羅に突き刺さった。


亀は驚愕した。


「な……何だ、貴様は……!」


コタローは立ち上がり、冷たい視線を向ける。言葉はない。


彼は即座に「狂怒」を発動。赤黒いオーラが爆発し、体が限界を超える力に満ちる。コタローは嵐のように突進。亀は石の壁を召喚して阻もうとしたが、コタローは全てを斬り裂き、障壁に猛攻を加える。ビャッコは右側から雷撃を連発。


数秒後、障壁に亀裂が入り始めた。亀は慌てて半月状の水の波を放ち、二匹を吹き飛ばした。


コタローは狂怒を解除し、息を荒げながらも自信たっぷりに叫んだ。


「障壁か……もう割れ始めてるぞ!」


亀は激昂し、咆哮した。


「貴様ら……!」


魔力の衝撃波を放ち、強風が泥を巻き上げる。コタローは大太刀を地面に突き立て、再び狂怒を発動。ビャッコに向かって叫んだ。


「ビャッコ! あの技だ!」


ビャッコは即座に理解した。二匹の体が激しく電光を放ち始め、光が辺りを覆う。コタローが手を伸ばすと、強烈な電流が二人を繋いだ。


白蛇は遠くからその光景を見て、思わず呟いた。


「……あの連携技……強いな。今回はあの亀、死んだな」


時間がゆっくりと流れ、世界が静止したように感じられた。動けるのはコタローだけ。彼は大太刀を握り、足を踏み出すたびに雷鳴が地を裂き、刃が白熱する。


一瞬で亀の前に到達。大太刀が横に薙がれ、障壁がガラスのように粉砕された。亀は慌てて頭と四肢を甲羅に引っ込めた。コタローは連続で斬りつけ、雷光が四方八方に迸り、甲羅の表面が次々と剥がれ落ちる。


亀は震えながら叫んだ。


「ありえん……! 私が死ぬなど……!」


コタローは跳躍し、上空から大太刀を振り下ろした。全力を込めた一撃が甲羅の中心を貫通。刃が深く沈み、雷が全身に広がる。


「死ね!……」


亀は激しい電撃に耐えきれず、体が膨張し――爆発した。衝撃波がコタローを吹き飛ばし、彼は遠くの沼に叩きつけられ、深い穴を作って倒れた。全身に傷を負い、血と泥にまみれ、意識を失った。


ビャッコと白蛇が急いで駆け寄る。コタローの目は薄く開き、空を見上げたまま、ゆっくりと闇に沈んだ。


(第四話 終わり)

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