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生まれ変わったらケルベロスとか聞いてないんだけど!? 〜陸上部ギャル三人、首が三つで異世界デビュー〜

作者: antomopapa
掲載日:2026/01/11

本作品は『カクヨム』にも投稿しています。


放課後。


 夕焼けとコンビニの看板がやたらエモい時間帯。


「今日のスタート練、マジで無理だったんだけど」

 短距離担当・リナが、紙パックのカフェオレを振り回しながら言った。


「それな。短距離って一瞬で終わるから楽とか言う人いるけど、あの一瞬に命かけてるからね?」

 長距離担当・カホは、公園の地面に大の字になっている。もう立つ気はない。


「二人ともまだ走ってるだけいいじゃん」

 高跳び担当・ユキはベンチに腰掛け、ストレッチしながら言った。

「私なんて今日、バー三回連続で落として、顧問に『集中力』って言葉百回くらい浴びせられた」


「集中力って魔法じゃないからね?」

「それな」


 三人は顔を見合わせて笑った。

 いつも通りの、どうでもいい放課後。

 ここが、人生の分岐点になるとは、誰も思っていなかった。


 ――ゴゴゴゴゴ……。


「え、なに?」

 低い音が、地面の奥から響いた。


 次の瞬間、世界が揺れた。


「ちょ、地震じゃん!」

「でかくない!?」

「え、待って待って、地面割れて――」


 公園の中央に、一直線の亀裂が走った。

 アスファルトが裂け、土が崩れ、重力が仕事を始める。


「ちょっと無理!!」

「無理無理無理!!」

「聞いてない!!」


 三人は、叫びながら暗闇へ落ちていった。



「……ねえ」


 誰かの声で、意識が戻る。


「……生きてる?」

「……たぶん」


「返事あるってことは、生存判定でいいよね?」


 薄暗い。

 湿った空気。

 岩の匂い。


「ここ、どこ……?」

 リナが体を動かそうとして、固まった。


「……体、動かなくない?」

「それな」

「ていうか、なんか距離感おかしくない?」


 三人は必死に体を動かそうとする。

 前に進もうとすると、もぞもぞと変な感触があった。


「……進んでる?」

「進んでるけど、歩いてる感ゼロ」

「ねえ、私たち今どうなってる?」


 前方に、淡く光る場所が見えた。

 地底湖だ。


「水ある!」

「助かった……」


 湖面を覗き込んだ瞬間、三人は同時に固まった。


「……え」

「……犬?」

「……しかも、首、三つない?」


 映っていたのは、黒くてデカい犬。

 しかも三つ首。


「……これ」

 カホが、震える声で言う。

「私たち……一匹じゃない?」


「一匹だね」

「完全に一匹」


 首が三つ。胴体は一つ。

 どこからどう見ても、伝説の魔獣。


「……ケルベロスじゃん」

 リナが言った。


「地獄の番犬の?」

「門守るやつ?」

「死後の世界の?」


 三人は黙った。


「……夢でしょ?」

「こんなリアルな夢ある?」

「水冷たいんだけど」


 話し合いの結果、結論は一つだった。


「ここが地球か異世界かは、外出ないと分からなくない?」

「それな」

「じゃ、行くしかなくない?」



 洞窟を進みながら、三人は少しずつ異変に気づいた。


「ちょ、勝手に突っ込まないで!」

「してないし!」

「今のリナだよ!」


 どうやら、戦闘時はリナが前に出るらしい。

 敵っぽい影を見ると、自然と体が前に出る。


「移動は私っぽい」

 カホが言う。

「なんか、一定ペースで進むの楽」


「壁登るの私だわ」

 ユキが言い、垂直の岩壁をスイスイ登る。

「高跳び、伊達じゃないんで」


「……役割分担すれば、喧嘩減らせるくない?」

 その一言で、だいぶ楽になった。


 最初の敵はスライムだった。


「……噛む?」

「噛むしかなくない?」

「いくよ?」


 ――パク。


「……え」

「……美味しくない?」

「極旨グミなんだけど!?」


 戦闘はどんどん雑になっていった。


「噛みつき三連!」

「火魔法いくよー!」

「雷落とす!」

「氷で固める!」


「私たち、強くない?」

「ていうかケルベロス強すぎ」

「元女子高生なのに」



 洞窟の最奥。

 巨大な扉の前に、黒い竜が立っていた。


「はい来た」

「ラスボス感やば」

「絶対ダークドラゴン」


 激戦。

 一進一退。


「今だよ!」

「合わせて!」

「せーの!」


 三人の魔力が一つになる。


 ――合体魔法【光】。


 閃光の中、ダークドラゴンは崩れ落ちた。


「……ドッカンベロン……」


「なにそれ」

「死に際の言葉それでいいの?」

「意味不明すぎ」



 扉の向こうに広がっていたのは、見たことのない世界だった。

 空はやたら青くて、地平線は無駄に広い。


「……ここどこ?」

「異世界確定でしょ」

「ていうか、帰り方説明とか一切ないんだけど?」


 三つの首が同時にため息をついた、その瞬間。


 ――視界が、ぐにゃりと歪んだ。



「……あれ?」


 次に目を開けたとき、三人はコンビニ横の公園に立っていた。

 夕焼けも、人通りも、さっきまでと全く同じ。


「時間……止まってない?」

「一秒も経ってないんだけど」

「夢オチにしてはリアルすぎ」


 三人は顔を見合わせる。


「……昨日のって、何だったんだろ」

「集団幻覚説」

「それにしてはグミ美味しすぎた」


 次の日も、三人は自然と公園に集まっていた。


「なんかさ」

 ユキが言う。

「行けそうな気しない?」


「分かる」

「変な確信ある」


 リナが、ニヤッと笑って言った。


「……ドッカンベロン」


 世界が、再び歪んだ。


「ちょ、待っ――!」

「また!?」

「だから聞いてないって!!」



 気づけば三人は、ケルベロスの姿で、洞窟の出口に立っていた。


「……ほんとに合言葉じゃん」

「行き来自由とかチートでは?」

「私たち放課後何してんの?」


 三つの首が顔を見合わせる。


「とりあえずさ」

 リナが言う。


「部活終わりに異世界行くの、ルーティン化しない?」

「アリ」

「ていうか目的一つあるし」


 三人は声をそろえた。


「「「またスライムグミ食べに行こ」」」


 こうして――

 陸上部ギャル三人は、

 時々ケルベロスになって異世界でおやつを調達する生活を始めた。


 たぶん明日も。

 部活帰りに。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


気づいたら女子高生三人が首三つの魔獣になっていましたが、

作者もだいたいそんな気持ちで書いていました。

「え、ケルベロスになるの? 三人一体? まあいっか!」みたいなノリです。


このお話は、

・放課後のだべり感

・部活仲間の距離感

・異世界なのに緊張感ゼロ

を大事にして、とにかく深く考えず笑ってもらう方向で作りました。


スライムがグミなのは完全に作者の好みです。

異世界行ったら絶対お菓子要素ほしい派なので、ああなりました。

反省はしていません。


もし続くとしたら、

・別フレーバーのスライム

・地獄門番なのにサボるケルベロス

・現実世界と異世界を部活感覚で行き来する話

とかになると思います。たぶん。


ここまで付き合ってくれてありがとうございました!

よかったら評価や感想で

「どの首が一番好きか」

教えてもらえると作者が喜びます。


それでは

またスライムグミ食べに行きましょう。

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