第三章:葛藤と、覚悟
ASTRALIGHTとしてのデビューは、まるで夢のような日々だった。
新曲がヒットし、メディアにも引っ張りだこ。
ファンの声援が届くたびに胸が熱くなり、彼は「この道で生きていく」と強く誓った。
しかし、その華やかなステージの裏には、誰にも言えない苦悩があった。
「みんなは俺の歌を、本当に聴いてくれているのか?」
「ただの“朝比奈家の子”としてしか見られていないのでは?」
ステージ袖で待機する間、彼は何度も自問した。
家族の名前がつくから注目されるのは事実だ。
だけど、その注目の光は時に彼を縛り、重くのしかかった。
ライブ後の楽屋では、メンバーたちの笑顔が眩しかった。
だが、自分だけがどこか浮いているような孤独感を拭いきれなかった。
ある晩、未来翔が控室にやってきた。
兄は静かに席に座り、大翔の肩に手を置く。
「大翔、無理するなよ。自分の色を見つけるまでは焦らなくていい」
未来翔の声は、優しくも力強かった。
「俺たちは“朝比奈”だけど、君は“大翔”だ。自分の名前を胸に刻んで、堂々と歌えばいい」
その言葉に、大翔は胸の奥にあった重い鎧が少しずつ溶けていくのを感じた。
「ありがとう、兄さん。僕、もっと自分を信じてみるよ」
翌日のリハーサルで、大翔は違った。
これまでの不安を吹き飛ばすように、自分の声に魂を込めた。
振り返ると、メンバーの瞳が驚きと尊敬に満ちていた。
大翔の歌声は、どんどん研ぎ澄まされていった。
“朝比奈家の子”から、“大翔”という表現者へ。
その姿は、これから多くの人の心を揺さぶることになるだろう。




