第三章:見つけた“自分の歌”
†Re:VIAのステージは、華やかでありながら、どこか静謐な痛みを抱えている。
彼女たちが歌うのは「心の裏側」――孤独、裏切り、赦し、そして再生。
莉子は、その世界観に最初、圧倒されていた。
「私なんかが歌っていいの……?」
そう思う夜もあった。だが、ある日、楽曲担当の音楽プロデューサー・葛城から声がかかった。
「莉子。お前に任せたい曲がある。“祈音きおん”っていうバラードだ」
譜面に書かれていた歌詞は、まるで自分自身の言葉のようだった。
ねえ、聞こえる? ここにいるよ
誰にも気づかれなくても、
それでも、私は……生きてるって言いたいの
「……この曲、歌いたいです。絶対に、歌えるようになります」
莉子はそう宣言した。
レッスンの日々が始まった。発声、感情の表現、呼吸のコントロール。
何度も喉を潰しかけて、涙を流した。
それでも彼女は諦めなかった。
やがて、†Re:VIAのライブツアーの中盤。ついに莉子のソロとして『祈音』が披露される日がやってきた。
ステージ中央、静寂の中で始まったアカペラ。
莉子の声は震えていた。けれど、その震えが“生きている”という証だった。
ここにいるのは、ただの“朝比奈の妹”じゃない。
歌うことで、自分を証明したい、ひとりの人間なんだ。
曲が終わった瞬間、観客席から静かに湧き起こる拍手。
そして、ひとつ、またひとつ、サイリウムが莉子のテーマカラーである“桜白”に染まっていく。
ステージ裏に戻った莉子は、涙ぐみながらリオンに言った。
「やっと、自分の歌を歌えた気がする……」
リオンは笑って、小さく拍手を贈った。
「ようこそ、†Re:VIAへ。今の君の声は、ちゃんと“ここ”に届いたよ」
――その日、莉子はようやく、“朝比奈の名前”ではなく、“莉子の声”で仲間に認められたのだった。




