第一章:もう一度、音楽に出会えた日
――まさか、あの†Re:VIAに入ることになるなんて。
莉子は鏡の前でマイクを持ちながら、そっと息を吐いた。
彼女は朝比奈家の次女。姉・美咲がSIRIUSのセンターとして輝く一方、莉子は別の道を歩いていた。
モデルとして芸能界に入り、バラエティ番組やCMに引っ張りだこ。
だが、どこかで「ここじゃない」という違和感があった。
ステージを観るたび、どこか胸がざわつく。
歌う姉や兄たちの姿を見て、誇らしく思う反面、ぽっかりと心に穴が開く感覚があった。
そんなある日、彼女に届いた一本の連絡。
『†Re:VIA メンバーオーディションのご案内』
目を疑った。†Re:VIAといえば、アーティスティックでダークな世界観を持ち、熱狂的ファンを抱えるユニット。
アイドルとは一線を画す存在。彼女とは最も遠い場所のように思えた。
だが、莉子はその日、直感で答えを出した。
「……やってみたい。今の私を、試してみたい」
翌週、オーディション会場に姿を見せた莉子は、誰よりも異質だった。
煌びやかな笑顔でも、圧倒的なダンススキルでもない。
でも――
その歌声には、確かな“願い”が宿っていた。
「……本気で来たんだね」
審査員の一人が、ふと呟いた。
合否通知が届いたのは、その日の夜だった。
『合格』
『あなたにしかない“何か”が、確かにあった』
そう記された文面に、莉子は声を出さずに涙をこぼした。
歌から離れたはずの自分が、もう一度、音楽に出会った瞬間だった。




