第五章:光の継承
音楽番組、ライブツアー、CM、雑誌の表紙――
朝比奈美咲は、いまや“次世代のカリスマ”として世間に名を刻んでいた。
そして、SIRIUSの若きセンターとして迎えた年末。
彼女はついに、音楽界最高峰の賞のひとつ「新人アーティスト大賞」を受賞する。
授賞式のステージ、トロフィーを受け取った彼女は、深く息を吸い、マイクを握った。
「ありがとうございます。……私は“朝比奈紗奈の娘”として生まれました。でも、今日ここにいるのは、“朝比奈美咲”としての私です」
一瞬、会場がしんと静まり返る。
そして、美咲ははっきりと言った。
「SIRIUSは“星”って意味。でも、私はその星に名前をつけたかった。私は――“私の光”になりたかったんです」
その瞬間、万雷の拍手が沸き起こった。
楽屋裏で、父・翔太は感慨深げに頷き、母・紗奈は目元を押さえながら微笑んでいた。
「やっぱり、あの子は……自分の道を選んだのね」
SIRIUSのステージでは、後輩たちが彼女を目標にし、スタッフたちは「これが新しい時代の始まりだ」と語った。
もう誰も、美咲を“二世”とは呼ばなかった。
彼女自身が、「朝比奈美咲」という光を放っていたから。
――それは、紗奈が夢見た未来の、その先にある景色だった。
そしてその光は、これからもきっと、誰かの“始まり”になるのだろう。




