ヘルガ1〜戦の匂い〜
DaysAIで作成したイラストに妄想ストーリーをつけ、物語になりました。
小説を書くのは初めてですので、見苦しい表現もあるかと思いますがご容赦ください。
残酷な描写は、なるべく避けますが、戦闘や戦争を扱っていますので、苦手な方はご遠慮ください。
文中の挿絵の著作はjettsにありますので無断転載はご遠慮ください。
鉄塊の国
一本の鉄塊が国を興した。
歴史は綴られる。
今回は本当に不味いことになっておる。
これでは戦争ではないか。
相手は物量で、初撃を決めようとしておる。さらに、王都に大量の情報収集用の魔蟲を放ってくるなど絡め手も十分。
そんな事を考えながら夜の森を疾走する。相手が分からない今は、魔獣の大繁殖という事にするしか無い。
あの五大巨神を動員すればこの程度の数はどうとでもなるが、そんな事をすれば王国民は動揺し、正体不明の敵の思う壺になるじゃろう。
小娘ながらあれの決断は正しい。だがのうこれはあんまりではないか?
あたりに目をやると妾の糸に絡め取られた無数のウォルグの死体。何体か息のあるものを見つけては首すじを噛みちぎり、糸を振り木にぶつけ首を折る。単純作業を繰り返す。
大体、妾にはこういうのは向いておらん。大軍を止めるのは得意じゃが、とどめを刺すのは面倒なんじゃ。ただ、今この数を止めれ、かつ隠密に優れた者は妾くらいなのは事実。姐御はタイマンでは無敵じゃが、数には対応できんから、小娘のそばで指示待ちが正しいじゃろ。
リヴァール砦を襲うウォルグの総数約7千、エルフォングの総数約50体。
北からウォルグ3千、エルフォング5体
西からウォルグ500、エルフォング15体
東からウォルグ3千5百、エルフォング30体
現場の判断で、この内、東のウォルグ3千とエルフォング30体を夜の内に片付けている。妾とて万能では無い。秘密裏に始末する限界量だ。
周辺2キロに糸を張り、絡め取り首を絞める。仕留め損ないを片付けるついでに我が子たちを放ち死体を食らってもらう。
夜の闇に紛れ、ウォルグ掃除を行いながらエルフォングの群れの場所に向かう。
張り巡らせた糸は、エルフォングの巨体を完全に止めることはできず、ブチブチと引きちぎりながらエルフォング達は南を目指す。
進軍の遅くなったエルフォングの群れを捕捉する。30頭のエルフォングとは過剰戦力にも程がある。街1個が半日持たんじゃろ。
動きの鈍くなったエルフォングに肉薄する。当たれば大木もひとたまりもない、必滅の爪を糸で逸らし,喉元に向け全身を鞭のようにしなやかに反らしてから全力で振り抜く。
「ドサリッ」
巨大なエルフォングの頭が地に落ちる。
妾の身体は、振り抜いた勢いのまま、足元の糸を使い弾みをつけて次のエルフォングの首を狙う。
血飛沫が心地よい。久々に浴びると、獣臭くとも気にならぬのう。
鼻歌交じりに、戦場を飛び回る。
右に左に、高さを変え、糸をつかみ角度を変え縦横無尽に飛び回る。
地平線の向こうに光が登り始める頃、最後の観客であり、獲物であった残りの1頭の首が落ちる。
「ふむ、潮時じゃの。」
辺り一面に、我が子を撒く。食欲旺盛で結構。明るくなるまでにはすべてくらい尽くすであろう。まぁ血は仕方なし。
出来れば、西も間引いておきたいところじゃが、時間切れじゃ。斧娘よ、せめて各個撃破するんじゃよ。間違えても囲まれたりするでないぞ。
仕方無しに帰り支度をする。
すぐに場所を移動し、ひらけた広場に来る。あらかじめ糸で魔法陣は完成している。半径200mのびっしり文字の書かれた魔法陣は私の魔力を受けて起動する。
一歩踏み出すとそこは、何時もの妾の………
あちしの部屋ッス
まずは、お風呂に入って綺麗にするのが先決っスね。
昼間のあちしは、魔法騎士団副長ッス
昨日の昼間の仕事を思い出しながら、血まみれのスーツを脱ぎ、勢いよくシャワー室に入り身を清める。
リヴァール砦にウォルグが向かっている事が報告された。
案の定、猪上司は砦に行くー!と駄々をこねたが、運が良いのか悪いのか城内に不審な虫が発見され、その対処に魔法騎士団が駆り出されれたんっスよね。
あちしのリボンじゃ索敵はできるけど、相手が小さすぎて仕留めれ無いから、脳筋娘にちっまこい水晶を大量に作らせて仕留めていったんっスよ。うんうん。
適材適所過ぎるから流石の反射だけの女も観念して嫌々仕留めてたっスけど、なんか途中から
「私の内にいるモコモコしていてフワごろっとした何かが、全力でこれを仕留めれば明日中に終わると叫んでいるのよ」
とのたまわってやる気出してたっすね。
さぁ今日も、芋虫さんを探して駆除駆除っス。
危なく蛹を見過ごしそうになった、ぼんくら隊長の尻拭いを終え、夕闇が辺りを包む。あちし………
妾の元に報告書が届く。本来であれば、もう一度精査してから明日の朝一に小娘に届くのだが精査のついでに妾の所に届けられた。
夜の妾はヴァルグラン王国黒師『操糸のヘルガ』である。
報告書に目を通し、目眩を覚えた。
「あっちも猪であったか………」
仕方なしではあったのであろう。妾の責任もある。もう少しでも妾に力があれば防げたかもしれないと思うと悔しさが込み上げてくる。
うむ、感傷に浸っている場合ではない。出来ることをしようぞ。
うちの猪の行動は予想出来る。北へ向かう一択であろう。休暇届けに魔導鎧使用許可、通行証、かなりの確率で後詰めの部隊との戦闘になるだろうから、司令権の譲渡申請も必要だな。
思いを巡らしながら、指の先から糸を出し、いくつかのペンで申請書を書き上げていく。出来た書類は部下を呼び提出させる。
黒師の持つ権限は元帥と同じレベルで、この程度の申請は今日中に通す事は造作もない。
後は、旅に必要なものを手早くまとめる。保存食は、なるべくそのまま食べられる物ばかり入れる。生活力は我が隊でも最弱だからこれでも食べるか不安だ。
するりと闇に紛れ工房の奥のクリスメッサーのハンガーに向かう。
ヴァン殿を見つけ、作業が一段落するのを待ち声を掛ける。
「おっヘルガじゃねーか。夜に珍しいな、どうした?」
ヴァン殿は黒師としての妾とも面識があるというか古くからの付き合いである。
「息災かのう。実はこれを積んでたもう」
旅支度と妾の子を預ける。少しでも助けになるじゃろう。
「姫さん、なんかあったのか?」
心配をかけるのう。
「明日、報告が来るが斧娘が行方不明になった」
ヴァン殿なら漏らすこともあるまい。
「そうか。姫さんなら動いちまうな」
頷き,妾の推測を漏らす。
「どうやって抜け出したのか解らぬが、姐御が動いているようじゃから、無事である可能性がある。」
ヴァン殿が珍しく驚く。
「昨日も会ったばかりだぞ。替え玉か? 全くあいつは感情で動くからな。まぁ今回はそれに助けられたか。」
私は頷き、工房を後にする。
明日は、行くのを止めるフリだけして小娘からのお小言に備えるかのう。
ヘルガ編をお送りしたっス。
皆の脳みそは無事かのう?作者はかなりだめのようじゃ。
とにかく勝手に動き回って気付いたら4千文字に届きそうになり、グライシアと、だぶる所は泣く泣くカットです。
しばらくは、何をしてもヘルガがちらつきそうっス。
魔法騎士団副団長『ヘルガ』
実務能力が高く、無口でクールな美少女だが……
口を開くと毒舌、辛辣不真面目キャラに変貌する。
グライシアとは公私ともに仲が良い。
1mより長い紐状の無生物を自在に操るという稀有な能力が有り、グライシアの水晶を操る能力と似ている点が多い為、2人でお互いの能力について創意工夫しあって様々な連携を生み出している。
ヴァルグラン王国黒師『操糸のヘルガ』
王国には一般に知られていない階級が存在する。
その一つが黒師。
主に暗殺、特殊工作を請け負う。
彼女に絡め取られたものは数え切れず。
魔蟲『ファルス シュピーネ』
クモの巣は蜘蛛が作る。
しかし、クモの巣自体が魔物である場合どうなのか?
それ自体が魔物。そこはヤツの腹の中なのだ。
その昔、消滅したと言われる怪異が生み出した悪夢の怪物。
奇工『ヴァン』
王国建国当初から様々な武具を作製する生ける伝説。
奇想天外な武装を次々と生み出し奇工と言われるが、彼がある魔女の戯言を具現化しているだけということを知るものは少ない。
古き怪異については、大図書館に資料が残るのみである。
大図書館は月曜日、木曜日、土曜日に更新される。