グライシア1
DaysAIで作成したイラストに妄想ストーリーをつけ、物語になりました。
小説を書くのは初めてですので、見苦しい表現もあるかと思いますがご容赦ください。
残酷な描写は、なるべく避けますが、戦闘や戦争を扱っていますので、苦手な方はご遠慮ください。
文中の挿絵の著作はjettsにありますので無断転載はご遠慮ください。
鉄塊の国
一本の鉄塊が国を興した。
歴史は綴られる。
リヴァール砦防衛戦の報告書を読む。
血の気が引く。と同時にルヴェリーに通信回路をつなぐが、応答なし。
一般兵は、ヘルメットに通信回路が組み込まれている為、戦闘時以外は応答無しの場合が多い。
しかし、魔導鎧装着者は基本的に下着代わりに耐熱スーツをインナーとして着用しており、脱いでいなければ通信はほぼ繋がる。
通信回路が繋がらないのは、インナーを脱いでいる。通信回路もしくはスーツ自体が破損している。応答できる状態ではない。の3つの理由が考えうる。
最悪の可能性が頭によぎる。
居ても立ってもいられない。今すぐ行動!
「動くこと雷霆の如!」
ヴァルグラン戦訓6か条の1つを口にする。
私の隣にいた副長のヘルガが、そっと私の魔導鎧の制御宝珠を隠そうとしている。
「ヘルガさーん。なにしてるの?」
ビクリと手を止め、こちらをゆーっくりと向きながら
「そこの猪突猛進丸が、今にも魔導鎧を装着して飛び出しそうなので、阻止しようかと……」
可愛い顔してさらりと毒を吐いてくる。猪突猛進丸ってなんだよ。
「しょうがないでしょうが、私の中のモコモコしていてフワごろっとした何かが、魔導鎧を着て今すぐ飛び立つんだ〜と叫んでいるのよ!」
私の心の内から湧き上がる気持ちを吐き出す。
「へいへい、モコッチが言ってるんですから多分正しいと思いますよ〜。ただ一応無駄な抵抗しとかんと陛下にしばか………ゲフンゲフン」
止めようとはしていないってことか。んじゃ行っていいのね。
ヘルガから制御宝珠を受け取る。それと幾つかの書類も受け取る。
「休暇届けですよ~。どうせ脳筋隊長は用意してねーでしょ」
見ると全て記入済みの1ヶ月間休暇申請書と魔導鎧使用許可申請書。諸々の通行許可申請及び有事の際の現地指揮権の掌握権限申請書だった。どれだけ準備いいんだよ。この自動罵詈雑言製造娘は。
「ありがと、助かるよ」
私には過ぎた右腕にお礼を言うと、そそくさと執務室をでて事務局に向かう。
「ミス大雑把がいぬ間に、細々とした事処理しときますね〜」
背後から失礼な声が聞こえた気がした。
あれからスムーズに申請処理が済む。事前申請もされていたようで、ほぼノータイムで書類がそろっていく。ヘルガ恐ろしい子。
ヴァンじいさんの工房に頼んでいた私の魔導鎧「クリスメッサー」を受け取りに行く。
いつも通りの暑苦しくも活気あふれる工房を、爺さんを探して歩く。
「姫さん、頭領なら奥の魔導鎧ハンガーにいたぜ」
キョロキョロしていると職人のゴンさんが、がなり声で教えてくれる。
「ありがとう、行ってみる」
ひらひらと手を振り、言われた方に向かうとゴンさんはハンマーを振って見送ってくれる。あの爺さんも凄腕で、国中から弟子志願者が集まってくるほどだ。
お目当てのハンガーにつくと、ヴァン爺さんが渋い顔で私のクリスメッサーを見つめていた。
「なんか問題でもあった?」
爺さんに声を掛ける。
「ん?あぁ姫さんか。いや、こいつにゃ何も問題ねーよ」
ニカッと笑ってこちらに向かって歩いてくる。
「ただよー、ルヴェリーの嬢ちゃんのことが心配でな。」
笑顔から一転して困り顔で話しかけてくる。
「そうね。でも何故か平気な気がするの。」
心配もしているが、私の心の中のモコモコしていてフワごろっとした何かが大丈夫だから魔導鎧を装着して北へ飛び出せと叫んでいるので従おうと思っている。
今までも、いつもこの叫びに助けられているから、今回もきっと大丈夫………と信じたい。
「そっか、姫さんがいうならその通りかもしんねーな。まぁいいわ、言われた通り隅々までメンテしてあるぜ」
そう言って、クリスメッサーの方に連れて行ってくれる。
クリスメッサーの巨大な勇姿を見あげる。
私の倍以上の巨体、両肩にほぼむき出しに近い形で取り付けられた2基の魔力炉、そこから放射状に伸びる冷却装置。武骨な肩に反して洗練された身体は丸みを持ち、他の魔導鎧と比べるとどことなく女性のような印象を受ける。
現在、胸部装甲が跳ね上がり、腰部が開いた状態である。中は空洞がありそこに私が入って装着する形になる。他の量産型は各パーツを体に装着していく方法になるが、クリスメッサーは大型な為、五大魔導鎧と同じく搭乗するような装着形態となっている。
「ヴァン爺、このまま乗っててもいいかしら?」
そういいながら、シルフィーフランベルを腰の鞘から抜き、クリスメッサーの背部の鞘に納める。
「そうだと思ってたぜ。後部キャリアにヘルガの姉ちゃんから預かった旅支度と食料積んであるから、そのまま行けるぞ」
えっ、そこまで据え膳!私が何にも用意していないことを見越しての用意……私が持っていくべきは、ヘルガ?
「生活能力がキリギリスのお世話は御免こうむるッス」
明確な幻聴が聞こえた気がする。周りを見渡すが気配無し。
まぁ気を取り直して、腰部から伸びるハシゴを登り腰部の2つの穴に足を入れる。下半身の魔力回路に魔力を通す。
「シュー」
音を立て腰部がスライド、はしごが格納され私の下半身に耐熱、耐爆の皮膜が張り付き固定される。
次に上半身に魔力を通す。
「ガゴッ バシューン」
音を立て胸部装甲が閉まり私は、クリスメッサーの中に完全に収納される。上半身にも皮膜が張り付き締め付けられ、固定される。
クリスメッサーと私を繋ぐ神経接続の魔力回路に魔力を流す。いつもの何とも表現できない感覚に身を任せる。視界がぼやけ、再び明瞭になる。
クリスメッサーの目からの視覚情報を受け継ぐ。体が一回り以上大きくなる何とも不思議な感覚。
「ヴァン爺行ってきます!」
私はそう声を掛け、ハンガーを出て北を目指す。
背後では、工房の皆が手を振ってくれていた。
「簡単に食べれるものだけ入れてあるッスからちゃんと食べんのよ。たーいちょっ!」
幻聴が聞こえた気がする。
第1章スタートっス。
この国の副隊長は軽薄じゃないとなれないのかもしれない。
グライシアが唱和した、ヴァルグラン戦訓6か条を見てjettsパクりおったと思った方、パクっていません。堂々と使ってます。あらすじと同じくです。
友人はあの文章を私の作ったものと思ったそうです。お気づきの方はニヨニヨしながら種明かしをお待ち下さい。
気になる方は調べるとすぐ出てきます。
戦訓6か条は、有名な方を聞けばすぐバレます。ワザとあまり知られていない方を使いました。
さて本格的な戦闘が始まったりする筈です。次回更新をお待ち下さい。
水曜日午前7時、金曜日、日曜日午後10時更新です。
挿絵をまとめた王立ヴァルグラン大図書館は、月曜日、木曜日、土曜日の午後10時更新です。
水晶姫専用魔導鎧『クリスメッサー』
ヴァルグラン王国魔法騎士団長
水晶姫『グライシア』の専用魔導鎧。
特徴は魔力炉を2つ直列接続し通常の量産型魔力炉でありながら、短時間なら五大魔導鎧にも匹敵する出力を出すことができ、グライシアの魔力戦闘を魔導鎧の出力で存分に振るうことができる。
通常の魔導鎧は背中に魔力炉があるが、この機体は両肩についている為、他の魔導鎧と比べ弱点をさらけ出している為、接近戦は危険が伴う。
現在、高出力の2連直列式魔力炉を可動する為には冷却の問題から、肩への装着が望ましく被弾の心配から、他の量産型魔導鎧には使用できない。
その他、魔力炉直列の為の設備を装備しなくてはいけない為、量産型としては大型化してしまっている。
背中の鞘にシルフィフランベルを刺すことでシルフィフランベルの能力を魔導鎧に宿すことができる。
手に持っている剣は、水晶を操るグライシアの能力を増幅する力がある。
一応量産型魔導鎧のカテゴリーに入るが一点物であり、今の所グライシア以外に使いこなせる者はない。
全長3.5m
水晶姫『グライシア』
ヴァルグラン王国魔法騎士団長
剣技と水晶を操る術式を駆使しての対軍隊戦を得意とする。
ルヴェリーとは魔法学院の同級生であり親友。
今回のルヴェリーの行方不明を聞いて、部下が止めるのを振り切り休暇を取り北へ向かった。
己の内のモコモコしていてフワごろっとした何かの叫びに従って!
魔法騎士団副団長『ヘルガ』
実務能力が高く、無口でクールな美少女だが……
口を開くと毒舌、辛辣不真面目キャラに変貌する。
グライシアとは公私ともに仲が良い。
1mより長い紐状の無生物を自在に操るという稀有な能力が有り、グライシアの水晶を操る能力と似ている点が多い為、2人でお互いの能力について創意工夫しあって様々な連携を生み出している。