ルヴェリー1
DaysAIで作成したイラストに妄想ストーリーをつけ、物語になりました。
小説を書くのは初めてですので、見苦しい表現もあるかと思いますがご容赦ください。
残酷な描写は、なるべく避けますが、戦闘や戦争を扱っていますので、苦手な方はご遠慮ください。
文中の挿絵の著作はjettsにありますので無断転載はご遠慮ください。
鉄塊の国
一本の鉄塊が国を興した。
歴史は綴られる。
目を覚ますと蒼白く光る天井が目に入る。ゴツゴツとした岩肌が蒼白く優しい光を放っている。
蒼藍苔は周囲の魔力を吸収し淡い光を放つ、その光はこの暗闇の空間をうっすらと照らしている。
「ここはどこ?」
身体を起こして周りを確認しようとする。
「痛っ!」
右に身体をひねり手をつこうとすると肘と肩に激痛が走り、反射的に腰と足が動く。
「がぁっ!うっ」
動かした部位の痛みにうめき声が出た。痛みに耐えられず身体を丸めるが、全身が痛み、身悶えながら声にならないうめきを周囲に響かせてしまう。
「ハァハァハァ…」
丸めた身体を抱き痛みに耐える。どのくらいの時間が経ったのか分からないが、ようやく痛みに慣れ、思考を巡らせる余裕が生まれた。
「私はどうなったんだ?」
記憶を辿る。
最後の記憶は、閃光に包まれ吹き飛ぶ巨大な四足歩行の獣。残虐な狩人の二つ名を持つ灰色のオオカミ「エルフォング」。
私は、単騎で13頭のエルフォングに囲まれていた。量産強襲型魔導鎧『マストゥリル アクストゥ』を装備している私は、成人男性が手を伸ばしても届かないほどの巨人ともいえるべき姿である。
しかし、エルフォングはその私を見下ろすほどの大きさの狼の姿をしている。
先ほどから周りを囲まれ、こちらの間合いの外より風の魔素を使っての攻撃を受けている。
魔導錬金の粋である、魔導鎧はこの程度の攻撃は弾き続けているが、数の暴力によりわずかにではあるが傷がつきつつある。
長くは持たない。
否!今時間を与えるわけには行かない。仲間を殺し得る相手と脅威を感じてくれたからこそほぼ全ての戦力を私に当てているのだ。
この戦力が砦に向けられたら我が第三魔導鎧隊はともかく一般兵、砦内の避難民達に大きな被害が出る。
飛び出した時に覚悟は決めた。我が軍の勝利はもう決まっているのだ。意を決し、切っていた通信回路に魔力を通す。
「第三隊は、エルフォングを牽制し、ウォルグの数を削る事を第一とする。一般兵の諸君は砦まで後退の後、遠距離装備にてエルフォングを集中して攻撃を開始せよ。」
「ヤー!」
「諸君らの働きは王国民を護る大きな力となる。奮闘を期待する。」
「ヤー!」
「副長!」
「ヤー」
私は、声が震えるのを必死に抑え込み言葉を紡ぐ。
「支給品のプリン、ちゃんと取っておいてね!」
「ヤー! 最近太ってきたので私の分も差しあげますよ。」
副長の声は軽口と裏腹に涙声だ。皆の志気下がるじゃんと思ったが、私も大概なので強制的に回路切断。
「私が太るじゃん」
一人愚痴ると、今までセーブしていた魔力回路の出力を臨界まで上げていく。
「国王陛下より賜りしギガンティックツァッシュβの真の力を見せてやろう。」
外部拡声器に魔力を通したことにより、周囲に私の声が響き渡る。意味が通じてるのか知らないのだが、私の渾身を伝えたかったのだ。
ギガンティックツァッシュβの魔力回路に特別な魔力を注ぎ込む。過去2回しか行ったことのない動作をただ淡々とこなす。
初めての時は出力が足りず回路に魔力が流れず逆流。私に流れ込んだ膨大な魔力の奔流になすすべ無く意識を失った。結果的には安全装置のおかげで、私は一命を取り留めた。
2回目は出力を期待値まで上昇することに成功。ギガンティックツァッシュラーゲン状態、すなわちこの武装の最大の形態まで変形を達成した。しかし、ブースターの加速と形態維持の為の魔力が暴走を起こし魔力炉が臨界に達してしまい安全装置が作動した為、強制停止が行われた。
今回は試作先行型に比べれば倍の出力はある。だが、オリジナルとの出力差は子どもと大人以上の違いがある。何処まで耐えるか分からない。今、手元にあるカードは少ない。ただ、ギガンティックツァッシュラーゲンはこの状況を勝利に繋げることが出来る。
緊急停止は起こらない。背中の魔力炉から今まで聴いたことの無い甲高い爆音がする。体を覆う耐熱服から焦げるような匂いがたってくる。汗が蒸発し視界を遮るほど蒸気が立つ。
手順に従い武装を組み上げる。双頭を持ち、私の背の倍以上長い斧槍。柄と穂先に内蔵された12発のブースターが一斉にそれぞれの方向に推進力を発揮する。
目まぐるしく視界が移りゆく。ギガンティックツァッシュラーゲンはエルフォングの鋼鉄の様な体毛を、引き千切り、肉塊を次々に生み出していく。もし、周りで見ているものがいれば、残虐な竜巻の様な何かが可哀想な子犬たちをズタズタに切り裂いていたと語るだろう。
殺戮の時間は突如終わりを告げる。背中に強い衝撃と激痛を感じる。体が宙を舞う。眼前には11頭分の肉塊と2体のエルフォング。2体の間には地面に刺さったギガンティックツァッシュラーゲンが見える。
柄に内蔵された超小型魔力炉が臨界を超える。
閃光が視界を覆い尽くしていく。閃光に飲まれ、吹き飛ぶエルフォングの姿が視界に入る。私の身体も再び上空へと舞い上がる。
「殲滅確認」喉をやられ、耳をやられ、声が出たのかは定かではないが、いつもの儀式をを行なう。惜しむらくは、仲間の掛け声ではなく先ほどから鳴り止まない耳鳴りしか聞こえないことだ。
やれることはやった。悔いはない。
いや、あるな。プリン食べたかったな~。
失われる意識の中、やけにのんびりとした声が聞こえたような気がする。
「よ〜く、がんばりました〜〜。」