プロテア
自分が自分であること。
年を取れば取るほど、様々なものにがんじがらめになって。答えを得るのが困難になる。
あのとき行動していれば、とか。
あの発言はしなければ良かった、とか。
後悔という言葉は嫌いだが、ふとした瞬間に1人反省会をしてしまうことがある。
後に悔いたところで意味なんてない。わかっているはずなのに。
ぐるぐると考えるのは性分というもの。
今日も今日とて、自室のベッドの上で、布団を目深に被って考える。
自分とは、未来とは、と。
そんな気持ちを払拭したくて、布団をはね除けた。
こんな日は、外に出るに限る。
外には新月を少し過ぎた、薄らとした三日月。
空を見上げながら、星の数を数えていたら、
いつのまにやら、見慣れない場所にたどり着いていたようだ。
花屋、だろうか。
店の外には大きなバルーン。
開店祝いで見るようなフラワースタンドが、所狭しと並んでいる。
店外こそ派手さそのものだが、よく見たら店内はごくごく普通の店のようだ。
そのうちの一輪に、どうしようもなく目が吸い寄せられて。
威風堂々と佇む、その一輪。
「どうぞ。中に入ってゆっくりご覧ください。」
気付けば、店員らしき青年に声をかけられていた。
「いえ、、見ていただけなので…。」
何とはなしに言葉を返す。
とはいったものの、ゆっくり近くで見たいのも事実。
「今朝入ったばかりなんですよね。良いタイミングでいらっしゃいましたね。
時期としてはそろそろ終わりの頃なので、運良く入った一輪なんです。」
にこにこ、なのか、接客業らしい気安さで言葉を続けられ、思わずつられて店内に入ってしまう。
近くで見れば見るほど、心が吸い寄せられる。
まるで、自分がこうなりたい、と思うような。
「プロテア、ていうんですが、花言葉は王者の風格と言いまして。
見てのとおり、堂々とした佇まいからそう呼ばれるみたいです。」
「王者の、風格…。」
独り言なのか、話しかけているのかわからないくらいの声量で、言葉を繰り返す。
なんだか、自分に足りないものを代わりに体現しているようで。
自信のない自分を奮い立たせてくれるような。
「こちら、頂いても良いでしょうか。」
今度は、しっかりとした声量で青年に声をかけた。
そして、相手の目をしっかりと見つめた。
「はい、もちろんですよ。
お兄さんに幸せが訪れますように。」
嫌みのない笑みで、綺麗に包まれたプロテアを渡される。
店の外に出て、めっきり冷え込んだ外気を吸う。
足らないのは、自信と覚悟。
明日からは変われるような、そんな気がした。
~プロテア~
王者の風格




