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オハイアリイ

暦の上では秋のはずなのに、

暑くて暑くて仕方がない…。

夜になっても吹き出す汗が止まらなく、毎夜毎夜寝苦しさを感じる、そんな()



今年はセミも泣かず、夏らしさを感じる前に殺人的な猛暑。

たしか去年も、そのまた前の年も、今年は例年より暑い、なんて言っていた気がする。

きっと今年の冬も昨年より寒くて、次の夏は今年より暑いのだろう。



「・・・はぁ」

なんとはなしに、溜息をつく。

暑さに体力を奪われ、年々体を動かすのが億劫になってきた。

熱中症、なんて気軽にいうが。

そして、熱中症対策にエアコンを積極的につけるようにと、市内放送が流れるが。


子供時分はエアコンなんて当たり前ではなかったし、

エアコンが普及してきた30代も、エアコンに頼ると身体が暑さに慣れない、なんて言われてたっけ。

いまや生活の一部になったが、今度は物価の高騰だかなんだか。

「昔は良かった。」なんて、言いたくはないが、それでも少しだけ懐古してしまう。



重い腰を上げて、エアコンを切って。

たまには孫のところに顔を出そうと、身嗜みを整える。

毎日毎日、スーパーと家の往復をしていると、おしゃれをする気が失せてしまうから。

口実を作って、少しだけ遠出する。


孫は最近、韓国アイドルにはまっているとか。

話題作りに韓国グルメでも食べてから行こうかしら。

なんでも、チーズの入ったホットドッグがあるのだとか。



娘と孫の住む街の少し手前で電車を降りて、灼熱のコンクリートの上をただ歩く。

今日ここに来たのは失敗だったと、すでに後悔しつつ、

少しでも涼しいところを探して歩く。


ふと、路地の間と間に。心が引かれ、眼が吸い寄せられる。

「おはなやさん、、、?」


ガラス窓から見える、オレンジの小さな花々に視線が釘付けになった。

そして、それをスポンジでアレンジメントしている青年にも。


右手に支えた傘で自らに日陰を作りながら、少し長々と見すぎていたのだろうか。

その青年がぱっと顔を上げて、こちらに視線を寄越し、、にこっと笑顔を見せてきた。


慌てて目を逸らしたものの、

少し失礼だったかしらと思い直して、改めてそちらを見やる。

そして、意を決して店内に入ってみることにした。


カランコロン

「・・・こんにちは」

外の熱気とは対照的に、ひんやりと心地よく冷えた空気が頬を通り抜ける。



「いらっしゃいませ!!!」

さきほどまでガラス越しにいた青年が、

今度はガラスを隔てずに、キラキラ、とでも効果音の付きそうな、純粋な瞳を向けてくる。

「なにかお探しですか?」



「ええ、孫娘への手土産を探しに来たのだけれども。

 そのお花、自分用に買って帰ろうかしら。」

手土産なのか、土産話なのか。特段なにかを望んでくるような年齢でもなく。

私が楽しそうにしていることを一番の喜びとしてくれる、良くできた子。

そんな孫を思い浮かべながら、先ほど外から見つけたお花は、私自身がお迎えしたいと思ってしまった。


「こちら、ですか?オハイアリイ、と言います。

 お姉さん、お目が高いですね!」

屈託のない笑顔で告げられた、お姉さん、なんて言葉に面食らう。


「このお花、しっかり堂々と咲く姿から、「自分らしく」って花言葉を持ってるんです。

ちょうど、外にいるお姉さんをお見かけしたときに、オハイアリイ(この子)みたいって思ったんです。」

「そんな…」

自分よりも2回り以上は年下であろう子に、お世辞を言われてたじたじになる日が来るなんて。


「そんな風にお世辞を言われたら、買うしかないわね。頂けるかしら。」

深くは考えすぎず、受け入れることにした。


「お世辞じゃないんですけどねー。はい、ちょうど頂きました!ありがとうございます!」


手際よくまとめられたその花を受け取り、なんとも気分良く子供たちのもとへ向かう。





「すてき!おばあちゃんみたいなお花!!」

孫にそんな嬉しい言葉をかけられるとは知らず…



~オハイアリイ~

自分らしく、輝く個性


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