どうも、当て馬令嬢です。お恥ずかしながら、人に言えない特技があります
短編連作三話目です。前話はシリーズ一覧から。
単発でもお読みいただけますが、一話目のネタバレがあります。
夏の盛りもようやく過ぎて、朝夕は過ごしやすい気温になってきた今日この頃。
王都の貴族街の一角、フルーセル侯爵家では今日も、おなじみのやりとりがされていた。
「お嬢様、リード家からのお手紙が旦那様宛に届きました」
廊下で通りすがりに声を掛けてきたのは、黒髪緑瞳の若き従僕、オリヴァーである。
お嬢様と呼ばれた跡取り娘、コンスタンスははっきりと眉をひそめた。
……リード家とは、例によって彼女が先日お見合いをした少年の家だった。
「わざわざ教えてくれてありがとう。……で、あなたがいつも通りにしてるってことは、つまり……」
「またもや連敗記録更新の見込みです」
「だからーーー! 連敗って言うなってばーーーーーー!」
才色、家柄、審美眼、すべて兼ね備えたコンスタンス・ガードナー十四歳。
そろそろ婚活の連敗記録は二桁に届いたところだ。
令嬢らしからぬ絶叫をしてしまったコンスタンスは、我に返って息を整える。
「……はあ、はあ……。こほん。……今度はいったい、どうやって手を回したの?」
「はて、何のお話でしょう?」
こんな時ばかりさわやかな笑みを浮かべてみせる従者だったが、コンスタンスは確信している。
王国の『影』を務めるフルーセル侯爵ガードナー家。その次代の幹部となるだろうと見なされている目の前の男、こいつによって、自分の縁談は毎回潰されていると。
しかも毎回ご丁寧に、コンスタンスを差し置いて、相手方が真に想う相手と結ばれているという、当て馬とも縁結びとも言われる武勇伝を残して。
「また白々しい……」
「はあ。心当たりはさっぱりございませんが、一般論として、お嬢様の夫君となられる方は我々にとっても未来の主。自然と採点も厳しくなろう、というものでは?」
「採点とかそういうレベルの話じゃないでしょ……。こんなに連戦連敗とか、どんな好条件が来ても、通す気ないんじゃない?」
実際、そうだった。
オリヴァーはそもそも、十四歳の主が伴侶を見つけるのはまだ時期尚早だと考えている。
そのためお嬢様の手元に運ばれてくる釣書は、実はその時点で身分違いの恋人がいたり、事情で引き裂かれた元婚約者がいたり、お互いにそうとは知らずに思い合う相手がいたり、そんな男ばかりを選別済みだったのだが、さすがにそこまでは看破できていないコンスタンスである。
返事をする必要はない、とばかりににっこりとしている従者の顔を見上げて、コンスタンスはため息をついた。
「まったく……。こんなことよりももっと、やることがあるんじゃない」
従者はきょとんとした。
「やることとは」
む。
日々、表の仕事はおろか、鍛錬も欠かしていないオリヴァーである。時折許可を得て鍛錬に参加させてもらうこともあるコンスタンスはもちろんそれも承知だった。
なので、やることとか言い出しておいて、少し考えてしまった。えーと……。
「……えっと。あなた自身のお嫁さん探し、とか?」
うん、ちょうどいいのがあった。にんまりするコンスタンスの前で、
「嫁、ですか」
オリヴァーは虚を突かれたようにつぶやいた。
その通りだ。そちらのほうが四つも年上なのである。確かにコンスタンスは婚活するには少し年若いかもしれないが、オリヴァーは適齢期まっただ中ではないか。
そんなことを言おうとしたコンスタンスだったが。
「……何、変な顔して」
従者は眉間に皺を寄せていた。まるで臭うものでも突きつけられたかのような顔である。
「……いえ」
オリヴァーは片手で口元を隠し、目の前のお嬢様から目をそらした。この男にしては珍しい仕草だった。
嫁取りうんぬんの話題がそんなに嫌なの?
ほう。……ほうほう。
「ふうん。あなたがそんななら、やっぱり私の方が先に結婚することになるかもね」
なんとしても早く大人として認められたいコンスタンスである。
それがもし実現したら、大変愉快な未来に思えた。
*
それはそれとして、リード家との縁談が駄目だったならば、次を探さねばならない。
コンスタンスは父の書斎に押しかける。無人だったが机にあった、新たな釣書を確保した。
フィンドレイ伯爵家の三男。十九歳、とある。
「こんな年上だなんて、珍しい……というか、この方って、婚約者いらしたよね?」
「いらしていた、が正確ですね。ファロン家の跡取り娘、フローレンス様に婿入りされるお約束をされておりましたが、最近破談となったそうです」
さりげなくついてきていたオリヴァーに補足される。さすがの情報力である。
「こちらも破談? 流行してるんじゃないでしょうね……」
最近友人の破談の話を聞いたばかりだったので、そんな感想になった。
「理由は?」
「表向きには、ご令嬢のほうが『病弱』であると」
「裏向きには」
「悪い噂もございまして。わがままで奔放であるとか、継母のことを軽んじているとか」
「家の中でのことなわけね……誰かに目撃されたわけでは? ……ああ、ないのね」
従者は無言で首を横に振った。
いずれにしても家中のことが伝わってくるのでは、ろくな家ではないだろう。しかも、継母とは、この流れではいかにも不穏なキーワードだ。
「……その方の、元ご婚約者様が、当て馬令嬢にお申し込みを?」
「然様です」
「なるほど。お会いします」
「えっ」
即決すると、横から驚きの声が上がった。
「だって明らかにきな臭いでしょ」
「そうですが」
従者の言わんとすることは分かる。十中八九、この青年はコンスタンスの婿にはならないだろう。
でも仕方ない。
見つけてしまったんだから。
*
それから数日後。そろそろ日付も変わろうという深夜である。
コンスタンスは、貴族街のとある屋敷の塀のそばにいた。
いつものドレス姿とは裏腹に、黒ずくめの、ぴったりとした衣装をまとっており、母親譲りの美しい銀髪もきっちりまとめて被り物に押し込んだ。
「じゃ、手はず通りに」
乗ってきた馬ともう一頭の手綱を持つ、『庭師』のトム爺に声を掛ける。
人通りがないことを確認して、塀を乗り越えた。
この屋敷は、くだんの悪い噂のあったご令嬢のいる、ファロン伯爵家のものだ。
まずは庭から建物を観察する。表門の裏側には門番の詰め所のような一角があったが、無人だった。不用心だなあ、と自分を棚に上げて考える。
入り口から見て左手に大きな木があり、バルコニーに枝がかかっている。
「(あった。あの部屋だ)」
*
「以前の婚約者とは、どのような?」
およそお見合いで発することのないような質問である。……いや、よほどの訳ありならあり得るかもしれないが……。
そんな不躾な問いかけをしたコンスタンスに、フィンドレイ伯爵家の三男坊は悲しそうに微笑んで、フローレンス嬢との様々な思い出を教えてくれた。
幼い頃はとても仲良くしていたこと、母君が病に倒れてから笑顔が少なくなり、ついに天に召された後は二人で会うことも叶わなくなったこと。
「二人で会えない、とは?」
「父君がすぐに後妻の方をお迎えになってね」
出た、継母。
「その連れ子という……フローレンスには義妹に当たるのかな、が、常に同席するようになったんだよ」
非常識な話である。だがそれも昨年までのこと。
今年に入ってからはいつ行っても本人には会えなくなり、義妹だけが出てくる有様になってしまったので、訪れをやめた。
「体調がすぐれないなら見舞いをさせてくれと言っても、結婚前に男を令嬢の私室に入れることは出来ない、の一点張りでね。おかしいよな、母君が亡くなられるまではどの部屋にも自由に出入りさせてもらっていたのに」
未来の婿として親しく扱われていたのが、うって変わってこうである。
「何度、窓を破って侵入しようと思ったことか」
「令嬢のお部屋が一階に? 珍しいですわね」
「いや、二階だけどね。庭に大きな木があって、彼女の部屋のバルコニーまで枝が伸びているんだ。二人で駆け回っていた頃に途中までのぼってね……メイドに見つかって、母君に雷を落とされたっけ」
「仲睦まじくしてらしたのね」
言外に、ではなぜ、婚約破棄を? との問いを含ませてみる。
「……まあ、そんなことが続いているうちに、うちの爺様の耳に入ってね」
「法務大臣を務めておられる?」
「うん。曲がったことが大嫌いな人でね。先方を問い質したんだ」
そうしたら、『長女は病弱で心根も悪く、代わりに次女をどうか』などとふざけた返事がきたという。
「爺様はかんかん」
即座に破談と相成ったらしい。
*
コンスタンスはバルコニーの手すりにロープを引っかけ、するするとのぼった。
バルコニーの出入り口は、両開きの大きなガラス窓になっている。施錠はしてあったが、この程度たいした障害ではない。
数秒で突破し、そっと部屋に滑り込む。
……人の気配はない。そして、一歩踏み入った途端に違和感を覚えた。
年頃の令嬢の部屋にしては、物も少なく、がらんとしすぎだ。カーテンも古くさい。
家具も最低限に満たず、かろうじて寝台はあるが……。
「(固い掛け物が乗せられているだけ──)」
とても人が生活しているような様子がない。
「(部屋を間違えた? それとも、既に彼女は)」
その時、家の中のどこかからギッと蝶番のきしむ音がした。
コンスタンスはすっと扉に身を寄せて、気配を探る。
足音は屋根裏のほうから、使用人の階段を使って階下に向かった。そっと時間を開けて追うと、一階の厨房から明かりが漏れている。
扉は半開きのままだ。閉めるときに音を立てるのを避けたのだろう。ありがたく覗かせてもらう。
厨房の中では、粗末なワンピースを着た小柄な娘が、戸棚や鍋の前で何かごそごそとしている。やがて作業台に出したものを置くと、立ったまま「いただきます」とつぶやいてカトラリーを手にとった。
「(食べ物だったのね)」
コンスタンスの方からは横顔が見えている。
仕事が長引いて、夕食を食いっぱぐれた使用人だろうか?
それにしては姿勢もよく、カトラリーを扱う手つきもしっかりしている。
「(……もしかして!)」
頭の後ろで一つ結びにしている髪は、腰ぐらいまでありそうだ。あそこまで伸ばすには時間も手間もかかったことだろう。
他に気配がないか探る。大丈夫そうだ。半開きの扉を引き開け、すばやく部屋に滑り込んだ。
「ごきげんよう」
少女はパンを手にしたまま、目をまん丸にして固まっている。さもありなん。
「お食事のさなかに失礼。そのままお続けになって」
促してみたが、首を横に振られた。
「……い、いえ……」
「そりゃそうか。えっと、お初にお目にかかりますわ、フルーセル侯爵家の者ですの。ご存知でいらっしゃる?」
「……ええ、ご家名を聞いたことなら……」
今度は首を縦に振ってくれる。
「まあ、話が早くて助かりますわ。それで、あなたは……フローレンス様、ね?」
パンが卓の上に、ぽとり、と落ちた。
推定フローレンス嬢は、フィンドレイ伯爵家の三男に話を聞いた、と告げるとすぐに落ち着きを取り戻した。
このようなこそこそとした食事をとっているならば大声を上げて騒ぎにしたりはしたくないだろう、と目論んではいたが、さすがである。
「伊達にファロン女伯ではおられませんわね」
「そんなことまで……」
「あら、貴族年鑑に目を通していれば、誰にでも分かることですわよ」
怪しい格好の小娘にこんなことを言われて、説得力があるのかどうかは未知数だったが、フローレンスは納得してくれたようだった。
そう、法務大臣の怒りを買ったのは、何も猫の子をやるように上がダメだから下はどうか、と言ったからだけではない。
そもそもファロン伯爵家の当主は亡母だった。当然、継承権はその娘にのみある。
伯爵家からすれば他人である父親や後妻、さらにはその連れ子がどうこうできる話ではないのだ。
さらには婿入りするはずだった三男坊の相手をすげ替えるなど、王国法や貴族の相続についてきちんとした知識があれば、とうてい受け入れられるはずもないのである。
「まあ、そんなお話になっていたのですか……」
コンスタンスから詳細を聞いたフローレンスは呆れかえっていた。なんでも、義妹から婚約者さまに捨てられたなどと吹き込まれていたが、だいぶ事実をゆがめて教えられていたそうである。
「ええ。フローレンス様は……使用人部屋から下りてこられたようにお見受けしましたけど、御身に危害などは加えられていませんか?」
母親が亡くなって自動的に女伯の立場となっているはずの少女は苦笑した。
「まあ多少は。ただ、使用人が陰から助けてくれますし、立ち回りを工夫したりして何とかやりすごしております」
そう言うと、服の下から首に下げていたものを取り出した。当主の正式な書簡に封蝋するための印だ。
「これだけは守れと、母の教えですの。取り上げられそうにもなりましたが、領地運営に関わる雑用をすべてやるからと言いくるめて手元に残すことができました」
領地を預かる家令は母の代からの忠義者だという。屋敷の上級使用人は父親や継母が都合よく扱える者に置き換わっているが、領地を田舎と蔑む彼らの魔の手はそちらには及ばなかったようだ。
運営に関わること以外は彼らの言うように諾々と押印しているおかげもあって、まだ取り上げられてはいない。使用人の半分もこちらの味方だった。
「それでも、表立って助けてもらえば使用人に折檻がされますし、外部の方に助けを求めようにも、どちらに訴え出ればいいのか心当たりもなくて……」
そう感じても仕方ないだろう。実際、法務大臣を務める婚約者の家でさえ、婚約破棄という道をとったのだ。
「でも、このようなこと、いつまでも続けられるはずがありません。私のデビュタントは母の喪中ということにして繰り延べたようですが、何度もその手を使うわけにはまいりませんもの。いずれ王家の方にでも怪しまれれば、それでおしまいです」
そう言うとフローレンスはにっこり笑った。話題に似つかわしくない完璧な笑顔の前で、コンスタンスは悟っていた。
──ああ、だからあの釣書が我が家に来たのか。
大きく息を吸って、吐く。
「……わかりました。今のお話を、書面にしていただくことは可能ですか? ああ、多少の証拠書類もあると、なおよろしいわ」
「え?」
怪訝そうにするフローレンスに、こちらも笑い返した。
「わたくし、王族の方々とはちょっとした顔見知りで。特別に『おじさま』と呼ぶことを許されておりますの」
影としての役得である。
いや、フランクすぎる呼び方については、母親が皇女であることの特典のようなものだったが。
*
その後少々、書斎の扉でも鍵開けなどを披露した後、屋敷を辞して打ち合わせた通り少し離れた場所に行くと。
馬を従えて待っていたのは、トム爺ではなかった。
「……変わり身の術?」
「さすがにそれはまだ習得しておりませんね」
思わず東方の同業者の伝説的な技をつぶやくコンスタンスに、まるで将来習得する予定があるかのような答えをよこすオリヴァーである。
「ご老体に、あまり夜更かしをさせるものではありませんよ。もちろん、育ち盛りの方もです」
ひとたび仕事に入れば、休憩返上徹夜上等の影のくせに何を言っているのか。
まあ、次期首領のコンスタンスはまだ実戦経験はないのだけど。
──目の前の男と違って。
むう、と心持ち膨れたコンスタンスを宥めるように、馬の手綱を手渡しながらオリヴァーは聞く。
「旦那様はちょうど明日──いや、もう今日ですね、謁見のご予定ですが、よい手土産はご用意できましたか?」
「……うん、それはね、当主印の捺された陳情書と……」
馬にまたがってコンスタンスは言葉を止める。
ややあって。
「……ねえ」
「なんでしょう」
「これまでのお話だって、誰かがこうやって動いてたんでしょ?」
誰かが。と言いながら、そのほぼすべてはこいつなんだろうな、と確信しているコンスタンスである。
闇の中で、ふふ、と笑んだ気配がした。
「だとしたら、何と?」
……何だろう。このもやもやは。
馬に揺られながらコンスタンスは考える。
貴族の子女の縁談をスムーズにまとめることは、王家の、ひいては国の安定のためには大貢献である。
自分の婚活がどうやらそのダシにされていると気付いても、不快感はなかった。むしろこういう形で仕事をさせてもらっているならば光栄ともいえる。
だけど、何だろう。
オリヴァーがこちらの縁談を潰して回るのが、コンスタンスの縁談だからというのに関係なく、ただ国のための仕事なのだとしたら──。
──さみしい。
このさみしさには覚えがある。
うっすらと家業について察したとき。もう四歳上のオリヴァーが『仕事』をしていると気付いたあのとき。
「(私は、オリヴァーが私の邪魔をしているんじゃなかったら、さみしいんだ)」
……何で?
とりあえずこれではいけない。仕事をしている彼を否定するなど、次期首領として失格である。
思いきり両手で自分の頬を叩いた。ぱあんという景気のいい音が夜空に響く。
「!? どうされましたか」
隣の馬上でオリヴァーが面食らっている気配がする。
熱くなった頬のまま返事をする。
「ううん、何も。うまくやらなきゃな、って気合いを入れ直しただけ」
「先ほどのお仕事ですか?」
「そう……かも。あといろいろ」
そうですか、と従者はつぶやく。そして続けた。
「まあ、さすがに王家のご内意が絡んだお話なんて、最初で最後にしてほしいですけどね」
「へ。そうなの?」
「ええ。いつもの、ただ厳しく審査すればいいお話とは勝手が違いますからね」
「いつもの、厳しく審査……」
なんだ、そうなのか。コンスタンスは力が抜けた。
厳しい審査じゃなくて明らかに邪魔をしてるでしょ、という突っ込みも出なかったほどだ。
「……うへへ」
ゆるい笑いが出る。
「先日も申しましたでしょう。我々にとっても未来の主君に当たる方。生半可な男で許容できると思います?」
「……はあーい」
オリヴァーが言う基準がどんな方なら越えられるのか、コンスタンスにはちょっと想像つかないけど、それは今はどうでもいいことのような気がした。
それに。
「それは私も同じだよ。私だって、オリヴァーのお嫁さんが、ちゃんとあなたのこと理解して、幸せにしてくれる人じゃないと許さないんだから」
「……ほう」
隣の馬からは他人事のような相づちが返ってくるが、コンスタンスは言い足りない。
「だってあなた、わかりにくいじゃない。一見愛想よくにこにこしてるみたいだけど、それって仕事柄でしょ。中身は意地悪だし嫌いなものも多いし、その分好きなものには一途だけど、自分からはなかなか手を出さないし。私たち家族ならわかってあげられるけど──何笑ってんの?」
「いえいえ、ははは」
従者は朗らかに笑い声を立てる。夜の帳の中、馬を並べていたので、その表情まではわからなかったが、彼が楽しそうにしているのでなんとなくまあいっか、という気分になってしまい、いけないなあ、と自らも笑うコンスタンスであった。
それでも最後にこれだけは、と憎まれ口をたたく。
「もういいもん。こうなったら絶対、あなたより先にお相手を見つけて一人前って認めさせてやるんだから!」
「どうぞ、頑張ってください。応援しておりますよ?」
*
数週間後。王族主催のある夜会で、新たな女伯のお披露目がされた。
エスコート役はかねてからの婚約者が務め、その裏ではこっそりと、罪人たちに然るべき沙汰が下されたという。
元皇女様「どうせそこでまとまるのだから、どっちが先とかないわよね」
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