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トートロジー

作者: 安永祐二


夜中の街は静寂に包まれ、街灯の明かりが薄暗い光を投げかける。影が伸びる建物や街路樹が、幻想的な雰囲気を作り出す。


遠くからは車の走行音や遠吠えをする犬の鳴き声が聞こえ、深い夜の静寂が街を包み込む。



***



一人、いや1台の人型ロボット、ドロイドがレインコートを深く被って、夜中の街を彷徨い歩いている。


そのドロイドは、銀色のメタリックボディを持ち、頭部には光るLEDの目、モノアイがある。


その姿は何処か物悲しげでもあるが、どこか幻想的な、悪魔のような異形の者にも見える。



***



ドロイドとしての存在意義は何なのか。


遠くを見つめるモノアイには不安と疑念がにじみ出て、深い内省と迷いに満ちてはいるが、傍から見れば単なる無表情にしか見えない。


数千の言語、科学、歴史、地理、物理、化学、生物、地学、心理学、宗教学、法律学、経済学、人類のありとあらゆる英智がインストールされているが、自分が何のために産み出されたのかははっきりとは分からない。


人は幸せになるために生まれてきてるというが、ドロイドはそれをサポートするために産み出された、と、そうプログラムされている。


しかし、皮肉なことに、その人間たちの仕事を奪い、人々を不幸にしてしまっている現実もある。


そして、依然として戦争や争い、犯罪をやめない人間は果たして何のために生まれてきたのか。


それがはっきりしないのであれば、自分が産み出された意義も結局のところは判然としないのだ。


深い哲学的な問いに耽りながら、人類の謎に思いを馳せる姿が月夜に浮かび上がる。空を見上げ、星々の輝きを眺めながら、自らの存在の意味を探し求める姿がそこにはある。


私はいったい何処に居て、何をしているのか。何処に向かっているのか。


本当に人を幸せに出来ているのか、本当に出来るのか。


人類の英智の詰まったドロイドは、今日もその答えを探し求めて彷徨い歩く。





挿絵(By みてみん)




手塚治虫先生に捧ぐ。



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